Monday, November 7, 2011

I.4.大気中への放射性物質の放出量を欧州の研究チームが試算~政府発表の2.4-3倍

英科学誌「ネイチャー」の電子版(2011年10月25日)によると、欧州の研究者を中心としたチームが、東電福島第一原発から大気中に放出された放射性物質についての研究結果を「アトモスフェッリクス・ケミストリー・アンド・フィジックス」誌に投稿した。研究チームの試算によると、事故発生から4月20日までに大気中に放出されたセシウム137は約35.8ぺタベクレル(35.8X1015)で、保安院が6月6日と10月20日に発表した推計値(1.51016)の約2.4倍、原子力安全委員会が8月に発表した推計値(1.11016)の約3倍となる。 

(1)(msn産経ニュース)セシウム放出量、推計の3倍 欧州チーム指摘 チェルノブイリの4割超 (2011.10.28 14:29) http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111028/crm11102814300023-n1.htm (2011年11月7日閲覧)

(全文転載)

東京電力福島第1原発事故に伴う放射性セシウムの放出量は、日本の原子力安全委員会による推計の3倍近くに達し、チェルノブイリ原発事故の4割を 超すとの論文をノルウェーの研究者らが27日までにまとめた。大気物理学の専門誌に投稿され、結果が妥当かどうか専門家らが検証している。

研究チームは、日本国内のデータや、核実験を監視するために世界中に設置された観測網を利用し、事故発生から4月20日までに大気中に放出されたセシウム 137は約3万6千テラベクレル(テラは1兆)と推計。原子力安全委員会は8月、全ての放射性物質57万テラベクレルのうち約1万1千テラベクレルをセシウム137が占めると推計しており、これを大幅に上回った。チェルノブイリの放出量は8万5千テラベクレル。

放出量の19%が国内に、残りの大部分は海に落ちたとみている。(共同)

(転載終わり)

(2)(Naturenews)Fallout forensics hike radiation toll(25 October 2011 ) http://www.nature.com/news/2011/111025/full/478435a.html (2011年11月7日閲覧)  

同記事より転載。




(3)A. Stohl, et al., Xenon-133 and caesium-137 releases into the atmosphere from the Fukushima Dai-ichi nuclear power plant: determination of the source term, atmospheric dispersion, and deposition http://www.atmos-chem-phys-discuss.net/11/28319/2011/acpd-11-28319-2011.html
(2011年11月7日閲覧)

(4)(みんなの翻訳)福島第一原発からのキセノン133とセシウム137の放出【プラスNatureNewsによる紹介】 / A・ストール他 http://trans-aid.jp/index.php/article/detail/id/23196/at/recent (2011年11月7日閲覧) (これは、上記(3)の日本語訳です。)

(上記(3)の翻訳の全文を転載。原文には改行がありませんが、読みやすいよう、改行しました。)

福島第一原発からのキセノン133とセシウム137の放出:ソースターム、環境への広がり、沈着の確定  

著者:A. Stohl [1], P. Seibert [2], G. Wotawa [3], D. Arnold [2,4], F. Burkhart [1], S. Eckhardt [1], C. Tapia [5], A. Vargas [4], and T. J. Yasunari [6]
[1] NILU-ノルウェー大気研究所・ノルウェー・ケーラー
[2] 天然資源・生命科学大学気象学研究所・ウィーン・オーストリア           
[3] 気象学・地球力学中央研究所・ウィーン・オーストリア                 
[4] カタロニア技術大学エネルギー技術研究所(INTE)・バルセロナ・スペイン
[5] カタロニア技術大学・物理学・核工学部(FEN)・バルセロナ・スペイン        
[6] 大学宇宙研究協会・ゴダード地球科学技術研究・コロンビア・MD21044・アメリカ合衆国 

抄録:2011年3月11日、本州の太平洋岸約130キロ沖で地震が発生し、続いて大規模な津波が起きた。それによる 東京電力福島第一原子力発電所(FD-NPP)の電源喪失は原発の大事故を引き起こし、大量の放射性物質が大気中に放出された。

本研究では、希ガスである キセノン133(133Xe)およびエーロゾル結合セシウム137(137Cs)という2種類の同位元素の放出を測定する。この二つは、放出の様式も、大 気中での挙動も大きく異なる。

4月20日までの、高度と時間の関数として放射性核種の放出を算出するために、事故を起こした原発 の燃料一覧情報と事故の推移の記録に基づいて、放出量の初期推定を行った。この初期推定を、大気移動モデルとELEXPART、日本、北米その他の地域の 数十カ所の観測地点の測定値データを加えて逆モデリングにより改善した。大気活動度集中測定および、137Csについてはバルク沈着の測定を用いた。

133Xeについては、合計で 16.7(不確実性の範囲は13.4~20.0)EBq【エクサベクレル・エクサは10の18乗】となり、これは、核爆弾実験によるものではない放出とし ては、歴史上最大の放射性希ガス放出である。最初に133Xeの放出が始まったのは極めて初期の段階、おそらくは地震後、3月11日協定世界時06:00 に原発が緊急停止した直後であることを示す有力な証拠がある。2011年3月11日から15日の間に1号炉から3号炉で全種類の希ガスが放出された。

137Csについては、インバージョン結果が示す放出送料は35.8(23.3~50.1)PBq(ペタベクレル)、すなわちチェルノブイリ事故における 放出量の約42%である。分析結果は、137Csの放出ピークは3月14日~15日であるが、12日から19日まで放出量が大きく、それが、4号炉の使用 済核燃料プールへの放水が始まったのとちょうど時を同じくして急減していることを示している。このことは、損傷した原子炉そのものだけからではなく、4号炉の使用済核燃料プールからも放出があったことを示しており、放水は有効な対策であったことになる。

我々はまた、日本および北半球全体における放射性雲の拡散と沈着のパターンを調査した。一見したところ、放出が激しかった時期に西風が中心であったことは幸運だったように思えるが、詳しく分析すると、別の状 況が現れてきた。3月14日と15日、137Csの最も大きな放出があったとき及びその直後に、そして再び大量放出があった3月19日に、放射性プルーム が本州東部に進んで降下し、その結果、地表面に大量の137Csが沈着することになった。プルームはさらにすぐに北半球全体に広がり、まず3月15日には 北米に、そして3月22日には欧州に到達した。

一般に、日本および遠隔の地点における133Xeと137Csのシミュレーションと観察の値はよい一致を示 している。全体として、6.4TBqの137Cs、すなわち4月20日までの総降下量の19%が日本の陸地に沈着し、それ以外のほとんどは北太平洋に降下 したと推定される。日本以外の陸地に降下したのは全体の2%にあたる0.7TBqにとどまる。

(抄録転載終わり) 

【参考資料】

(1)(原子力安全・保安院) 「放射性物質放出量データの一部誤りについて」 (平成23年10月20日) http://www.meti.go.jp/press/2011/10/20111020001/20111020001.pdf (2011年11月7日閲覧)
  • 10月20日、保安院は、6月6日に発表したデータの一部を訂正したが、セシウム137については訂正はなく、1.5X1016 のまま。

(2)億以上の単位

10n=
日本
SI prefix
米国
欧州
108

one hundred million
one hundred million
109
10
giga-
billion
milliard
1012
tera-
trillion
billion
1015

peta-
quadrillion
billiard
1016



1018

exa-
quintillion
trillion
1020
がい



1021

zetta-
sextillion
trilliard
1024
じょ、し
yotta-
septillion
quadrillion

出所:以下のサイトを参考に作成しました。(2011年11月7日閲覧)

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