Friday, August 12, 2011

VII. 2. 食品安全委員会の「生涯100ミリシーベルト」

例)食品安全委員会が、健康に影響が出る放射線量について、外部被ばくを含め生涯の累積被ばく線量を100ミリシーベルトとする評価結果を公表(7/26)


(1) 食安委 生涯被ばく線量100ミリシーベルト(東京新聞 2011年7月26日) 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2011072602100013.html(2011年8月12日閲覧) 

食品から摂取する放射性物質による内部被ばくの健康影響を議論している内閣府・食品安全委員会の作業部会(山添康座長)は二十六日、健康に影響が出る放射線量について、外部被ばくを含め生涯の累積被ばく線量を一〇〇ミリシーベルトとする評価結果をまとめた。山添座長は「平時、緊急時を問わない評価」とした。日本で年平均一・五ミリシーベルトとされる自然被ばくや、医療被ばくは別としている。

 一〇〇ミリシーベルト未満については「現在の知見では言及できない」とした。子どもは「成人より影響を受けやすい可能性がある」とし、規制の値に留意する必要性を指摘した。厚生労働省は近く同委から答申を受け、あらためて検討することになる。

 同部会は放射性ヨウ素やセシウムなど物質ごとの内部被ばくの健康影響について、規制値の基となった国際放射線防護委員会(ICRP)の論文など、国際的な文献をもとに議論してきた。

 しかし、「低線量被ばくの影響に関する知見は極めて少なく評価できない」とし、外部被ばくを含む疫学データを用いて健康影響を検討し、今回の評価結果をとりまとめた。

 同部会は「一〇〇ミリシーベルト」の根拠として、甲状腺にたまりやすいヨウ素は一〇〇ミリシーベルトを超えると健康に影響が出るとする報告があることや、広島、長崎県の被爆者の疫学データを挙げた。小児については、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故で、甲状腺がんや白血病のリスクが増加したとの文献 があることに触れた。

 暫定規制値は、ヨウ素が年間二ミリシーベルト、セシウムが年間五ミリシーベルトなど物質ごとに上限を設定。食品全体では年間計一七ミリシーベルトで設定されている。

http://hiroakikoide.wordpress.com/2011/07/27/tanemaki-jul-2/(2011年8月12日閲覧) 

(3)食品安全委員会の「放射性物質の食品健康影響評価の状況について」ページ から http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/radio_hyoka.html (2011年8月12日閲覧)

 **国民の皆様からの御意見・情報を募集中(7月29日~8月27日) http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_risk_radio_230729.html

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[8月28日追加]


8月25日、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」など6つの団体は、食品の安全基準などに関し、政府と交渉を行った。

(1)食品安全委〜100ミリ以下を「安全」として基準設定か
 (OurPlanet-TV。動画とまとめ、08/27/2011 - 05:21 ) 
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1212(2011年8月28日閲覧) 

[以下は「まとめ」の全文] (太字は投稿者)

子どもたちを放射能から守る福島ネットワークなど6つの団体は8月25日、食品の安全基準などに関し、政府と交渉を行った。

食品安全委員会(小泉直子委員長)は7月26日、「放射線で健康への影響が出るのは、内部被ばくと外部被ばくを合わせ生涯で100ミリシーベルト以上」(自然放射線や医療被ばくを除く)との答申案をまとめた。これに対し、市民らは「生涯とは何年か」と質問。これに対して、事務局の新本英二氏は「100ミリシーベルト以下の影響について、科学的に示した文献はなかった」ため、1年単位の基準は監督庁にあたる厚生労働省が定めるものとの見解を示した。

これに関連して、福島老朽原発を考える会の阪上武氏は「100ミリ以下は科学的知見が得られなかったというが、ICPRや日本の法令も、閾値なしの直線モデルを採用している食品安全委員会はこの立場に立つのか、立たないのか」と問いただすと、新本氏は「採用していない」と回答。食品安全委員会が、国内の放射線防護に関する法令や規制などを無視し、100ミリシーベルト以下の影響を考慮していないことがわかった。

現在、日本政府が設定している食品暫定基準値は、年間最大17ミリシーベルトの被ばくを許容する高い規制値となっている。食品安全委員会が策定した評価案によって、現行の暫定値よりは低い基準値が設定される可能性はあるものの、生涯100ミリという数値は、事故後の高い被ばくを容認するものであり、外部被曝と内部被爆をあわせて、年間1ミリシーベルトという公衆の被ばく許容量を上回る基準値が設定される可能性が高い

評価案は、市民の意見(パブリックコメント)を受けたうえで、最終案がまとめられ、厚生労働省で具体的な基準値が設定される。パブリックコメントの締め切りは8月27日(土)17時まで。

放射性物質の食品健康影響評価に関するパブリックコメント
http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_risk_radio_230729.html
 

プレスリリース「NGO6団体、厚労省、食品安全委員会、文科省らと交渉」
http://www.foejapan.org/energy/news/p110825.html
 

当日配布資料
http://www.foejapan.org/energy/news/evt_110825.html 



(2)現在の日本の暫定基準値とウクライナ(1997年)の許容濃度(セシウム137とストロンチウム90)比較が、FoEJapanの当日配布資料1に。  
http://www.foejapan.org/energy/news/pdf/110826_2.pdf  
(2011年8月28日閲覧)
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[9月16日追加]
(毎日新聞) 記者の目:内部被ばくだけの数値明示を=小島正美(2011年8月17日 0時07分)
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20110817k0000m070127000c.html (2011年9月16日閲覧) (太字は投稿者)

◇食品安全委「放射線生涯100ミリシーベルト」

 食品を通じた放射性物質の健康影響を評価していた食品安全委員会(小泉直子委員長)が7月26日、「生涯の累積でおおよそ100ミリシーベルト (自然放射線や医療被ばくは除く)以上で健康影響がある」との評価案をまとめた。「生涯100ミリシーベルト」は食品を通じた内部被ばくだけでなく、外部被ばくも合算した数値で、内部被ばくの割合は示されていない。たとえ推計でも内部被ばくの限度を数値で示し、実際の食生活に即した健康影響評価をしなければ、食品の安全性への信頼が損なわれてしまうだろう

食品は、放射性物質が体内に入って放射線を出し、健康を害する「内部被ばく」が問題になる

食品安全委は厚生労働相の諮問を受け、4月下旬から9回の議論を重ね、国内外の約3300点の文献を検討した。しかし「内部被ばくのデータが極めて少なかった」ため、主に広島・長崎の原爆被爆者の発がんデータを基に、生涯の累積値で目安を示した

◇数百ミリでも影響ないとの指摘も

まず疑問なのは、なぜ生涯の累積値なのか、だ。同じ100ミリシーベルトの被ばくでも、一度に受けた場合と、1年に1ミリシーベルトずつ100年 かかって受けた場合とでは、人体への影響は全く異なる。アルコールを一気に飲む場合と、少しずつ飲む場合を比べても分かるように、一度の被ばくの方がリス クが大きい。低線量を長く受ける場合は、途中で傷ついた細胞が修復されるためだ。

放射線の影響に詳しい中村仁信・大阪大名誉教授は「細胞の修復能力を考えると、生涯累計なら数百ミリシーベルト程度でも影響がないと見てよいはず だ」と述べる。この点は、食品安全委の作業部会でも指摘されていた。「広島・長崎の影響は、瞬間的な外部被ばくの影響が9割以上を占める。生涯の累積量に当てはめるのは科学的におかしい」「累積量ならインドの高線量地域に住む人で約500ミリシーベルトでがんの増加はなかったとのデータの方が信頼できる」 との意見だ。

しかし、作業部会座長の山添康・東北大教授は「被爆者は瞬間的に被ばくした後も、そこに住み、空気を吸ったり食べ物を取り続け、内部被ばくも受けた。より安全側に立って判断したい」と述べた。より安全に、と考えるのはいいが、生涯100ミリシーベルトを人生80年として計算すると、1年間の上限は 1・25ミリシーベルトになる福島県の一部では、外部被ばくだけで年間10ミリシーベルトを超えることが予想され、何も食べられなくなりかねない

どの地域でも現実に外部被ばくの方が大きく、内部被ばくは数%とされる。仮に内部被ばくの割合を2割と多めに見ても、内部・外部被ばく計年1.25ミリシーベルトのうち、食品に割り当てられる許容線量は年0.25ミリシーベルトしかない放射性セシウムだけで考えても、現行の暫定規制値は年5ミリシーベルトが上限なので、20分の1まで下げねばならなくなる。牛肉なら、現在の1キロ当たり500ベクレルが25ベクレルになる計算だ。

評価案は「小児は放射線の影響をより受けやすい」ともしており、子供を考慮すると規制値はさらに厳しくなる

◇平時と緊急時分けた議論なく

食品安全委のあるメンバーは「例えば当面3年間で計30ミリシーベルト浴びたとしても、あとの人生で70ミリシーベルトの余裕がある」と話した。 緊急時には規制値を緩くし、平時は厳しくする2本立ての規制値をつくる考え方はある。しかし、安全委の評価案は「緊急時はより柔軟な対応が求められることも考えられる」と一般論を述べるだけで、累積線量を年ごとにどう振り分けるかは厚労省の判断だとし、具体的な提案はしていないこれでは「生涯100ミリ シーベルト」の数値が独り歩きしかねない。平時と緊急時を分けるなど「経済社会的な状況に応じて規制していく、という従来の国際的な放射線管理の考え方に 対する挑戦だ」と指摘する専門家もいる。

主食の米と、たまに食べる牛肉が同じ値になっている現行規制値も議論してほしいテーマだ。食品の種類によって規制値を変えた場合に、人の健康影響がどうなるかのリスク評価も必要だが、そうした論議もされなかった。

8月2日に開かれた安全委と市民の意見交換会では「規制値の強化につながる」と歓迎する声が多かった。だが、実際問題として、年齢も食生活も異な る個々の累積被ばく量を、生涯にわたりチェックしていくのは不可能だ累積線量を知りたいという国民の要求に国は応えられるのか

「生涯100ミリシーベルト」は一般に考えられている以上に大きな課題をはらむ。文献を読んで安全性の目安を示すのは、リスク評価の一部に過ぎな い。規制値の設定いかんでは、野菜の摂取不足が起きて、逆に健康に悪影響が出るかもしれない。現実の国民の食品摂取の仕方まで踏み込んでリスクを評価する のが、委員会の役目ではないか。(生活報道部)

毎日新聞 2011年8月17日 0時07分

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