Tuesday, August 16, 2011

IX. 「コンピューター監視法」が2ヵ月半でスピード成立

「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(「ウイルス作成罪」、「コンピューター監視法」)が2ヵ月半でスピード成立

  2011年4月1日    国会提出 

  2011年5月24日   衆議院法務委員会に付託

  同 5月31日 午前  衆議院法務委員会で可決

       同日 午後   衆議院本会議で可決

  同 6月17日      参議院本会議で可決(法案成立)


[法務省HPより]
 可決成立日  平成23年6月17日
 公布日     平成23年6月24日
 官報掲載日  平成23年6月24日
 施行日     罰則整備に係る部分については,      
一部を除き,平成23年7月14日
 

 

(1)この法律の成立を伝える新聞記事

クローズアップ2011:「ウイルス作成罪」新設/データ差し押さえ制度 (毎日新聞 2011年6月17日 東京朝刊) http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20110617ddm003010089000c.html (2011年8月16日閲覧)

 ◇改正刑法・刑訴法きょう成立 サイバー犯罪に歯止め、捜査権限拡大に懸念の声も

 コンピューターウイルスの作成罪を新設した刑法改正案と、捜査機関の電子データ差し押さえ手続きなどを定めた刑事訴訟法改正案が16日、参院法務委員会で可決された。共に17日の参院本会議で成立する見通しだ。捜査権限の拡大に懸念の声も残る一方、「サイバー犯罪」への歯止めになるとの期待も集まる。政府は、条件が整ったとして国際条約への加盟手続きを進め、世界的な捜査協力体制への参画を進める。【石川淳一、鮎川耕史】

 新設される「ウイルス作成罪」(不正指令電磁的記録作成罪)はコンピューターウイルスを「意図に沿った動作をさせず、不正な指令を与える電磁的記 録」などと定義。研究など正当な理由が無いのに作成したり、ばらまいた場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金、所持・保管した場合は2年以下の懲 役または30万円以下の罰金とする。
 ウイルスを使った犯罪は、短期間に増幅し拡散する。これまで捜査当局は「パソコンに意図的に侵入させた」「記録を破壊した」など各段階を立証し器物損壊罪を適用するなど苦心を重ねてきたが、作成をつかんだ段階で立件が可能になる。
 ネットワーク空間を舞台にしたサイバー犯罪は増加の一方だ。警察庁の摘発件数まとめでは、05年の3161件が10年には6933件と5年で倍以上に達した。日本は児童ポルノ発信国としての悪評も浴びてきた。今回の刑法改正では、わいせつな画像データを不特定多数に電子メールで送信する行為についても処罰対象に加えた。
 また、刑事訴訟法改正案は、捜査機関が電子データを証拠収集するための法的手続きを整備。(1)プロバイダー(接続業者)にデータ提出を命じて差 し押さえる制度(2)記録が保管されたサーバーからのデータ複写を認める制度(3)プロバイダーに通信履歴の保管を最長60日間求める制度--などを新設 する。
 これらの制度は、捜査当局が長年必要性を訴えてきた。組織犯罪の共謀段階での摘発を狙う「共謀罪」新設と共に03年以降3度、国会に提出されたが 廃案となり、慎重論の根強い共謀罪を切り離し今国会に提出された。だが、問題点を指摘する声も残る。日本弁護士連合会国際刑事立法対策委員長の山下幸夫弁 護士は「捜査側に認められる裁量がかなり広い。容疑の掛かる対象以外にも網を掛けて差し押さえの対象とする可能性があり、捜査を抑止するチェック体制も無い」と指摘。「運用上の基準を早期に示すべきだ」と話す。
 一方、慶応大法科大学院の安冨潔教授(刑事法)は「差し押さえは限定的に裁判所の許可を得て行われるもので、無限に捜査の幅が広がることは無い」 と説明。「目に見えない電子データを目に見える形にして差し押さえるための改正。サイバー犯罪捜査に極めて有効だ」と位置付ける。

 ◇「実害の発生に先手」警察関係者期待

 「被ばくに対する防護対策について」。東日本大震災発生後、こんな題のメールが多数に送り付けられた。添付されている「福島原発」などのファイルを開くとウイルスに感染し、個人情報が盗まれる危険がある。
 セキュリティー大手・シマンテック社が昨年新たに発見したウイルスは2億8600万種。ウイルスによるパソコンの感染は計31億件に上った。利用 者が拡大するスマートフォンを狙ったウイルスも目立ち始めている。トレンドマイクロ社は今年5月末までにスマートフォンを対象とした57種のウイルスを確認したという。
 警察当局は「ドライブバイダウンロード攻撃」と呼ばれる手口にも警戒を強めている。正常を装ったサイトを用意し、ウイルスをダウンロードさせる。画面上にファイルの実行を促す表示が無く、閲覧者は感染に気付かない。
 03年以降、ウイルスや「スパイウエア」と呼ばれるソフトなどが利用された事件は国内で計13件検挙されたが、作成自体は処罰の対象にならなかった。このため、他人のID・パスワードを無断利用する行為や、他人名義でネットショッピングをして商品をだまし取る行為など、現行法の適用が可能な被害を 把握した上で検挙する手法がとられてきた。だが、その捜査の間にもウイルスが広がるという状況が、捜査員を悩ませてきた。
 警視庁が昨年8月に摘発したタコイカウイルス事件でも、捜査当局は複数の適用法令を検討した。音楽ファイルを装い、パソコン内のファイルをイカや タコのキャラクター画像に改変するウイルス。パソコンの文書作成機能が失われる点などに着目し、器物損壊容疑で27歳の男を逮捕したが、公判で被告側は 「ハードディスクが物理的に損壊されたのではなく、ファイルが利用不能となったに過ぎない」と無罪主張している。
 「ウイルス作成罪は実害の発生に先手を打つ捜査に欠かせない武器になる」。ある捜査関係者は期待感をあらわにして語った。

 ◇条約加盟推進、国際協力参画へ

 ウイルスを侵入させたり、データを盗み出すなどネット上の攻撃は今、米政府高官が「サイバー戦争」と表現するなど世界各国にとっての脅威だ。国家 機関や巨大企業が狙われる事態も相次ぎ、ソニーも世界で約7700万人が利用するインターネット配信サービスが攻撃を受け個人情報が流出した。ネット上で 「国境」の意味は薄く、国をまたいだ捜査が必要なケースも少なくない。
 これらの事態に対応するための「サイバー犯罪条約」は04年発効。今年5月末現在、欧米を中心に31カ国が加盟する。日本も01年時点で条約に署 名。だが、加盟国には、違法アクセスやウイルス製造、児童ポルノ頒布を犯罪として定めることが求められており、正式加盟に至っていなかった。改正刑法などの成立後、国は手続きに入る方針。加盟後は、捜査援助のために24時間対応可能な連絡部署を設置することが求められる。
毎日新聞 2011年6月17日 東京朝刊


(2) 法務省ホームページから

情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案
http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00025.html

いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪について
http://www.moj.go.jp/content/000076666.pdf


(3)関連動画 

【動画】私たちのインターネット通信を監視する「コンピュータ監視法」とは何か(2011年1月24日)
http://portside-station.net/2011/01/23/6859/ (2011年8月16日閲覧)

【動画】衆議院本会議が「コンピュータ監視法」を可決(2011年5月31日)


 2011年8月19日追記

上のYouTube動画は削除されました

5月31日の衆議院本会議のビデオは、『衆議院TV 』の「ビデオライブラリ」で閲覧できます。「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」19:17頃から

1)審議を初めから見るには「 中継中 」をクリックする。(19:17頃から) 

又は、

2)「奥田建(法務委員長)」をクリック。

 

投稿者注:投稿時(8月19日)、上の二つのリンク(1と2)は生きています。リンクが生きていない場合、衆議院TVのサイトから検索してください。

http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php 

  • 次の項目を入れて検索する 

    • 開会日; 2011年5月31日   

      会議名: 本会議

      いずれかを含む(or)

  • 検索結果から、「5月31日」「本会議」を選ぶ。

   1)審議を初めから見るには「 中継中 」をクリックする。(19:17頃から) 

又は、

   2)「説明・質疑者等」から「奥田建(法務委員長)」を選ぶ。

 






 





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