Friday, August 26, 2011

II.A.7. ほんとうに「想定外」?

例2) 10メートル超津波 東電、直前に試算報告
(毎日新聞 2011年8月24日 20時54分[最終更新 8月25日 1時22分])
 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110825k0000m040070000c.html
(2011年8月26日閲覧)

東京電力は24日、「福島第1原発に10メートルを超える津波が押し寄せる可能性がある」との試算結果を08年 4~5月にまとめていたことを明らかにした。しかし「評価の必要がある」として具体的な対策を取らず、経済産業省原子力安全・保安院に報告したのも事故直前の今年3月7日だった。これらの事実を東電も保安院も公表せず、10メートルを超す3月11日の津波について「想定外だった」との説明を繰り返していた

 試算は06年の原発耐震設計審査指針改定に伴い、保安院が指示した再評価作業の一環。東電は、政府の地震調査研究推進本部の見解に基づき、三陸沖から房総沖で明治三陸地震(1896年)並みの地震(マグニチュード8.3)が起きたと想定した。その結果、福島第1原発 に到達する津波は▽5、6号機が10.2メートル▽1~4号機が8.4~9.3メートル▽防波堤南側で15.7メートルなどと推定された。

 しかし東電は結果を保安院へ報告せず、1~4号機で5.7メートルとしていた想定津波高の見直しもしなかった

 東電の松本純一原子力・立地本部長代理は24日の会見で「(10メートル超は)あくまで試算で、運用を変えるほど 信用に足る数値か慎重に判断する必要があった」と説明。事故後、津波を「想定外」としたことについても「うそをついたわけではない。運用変更は学説や試算でなく固まった評価基準で行われるべきだ」と釈明した。

 保安院によると、3月7日の報告では耐震安全審査室長が報告書面を受け取り「設備面で何らかの対応が必要」と指導したが、4日後に巨大地震が発生。想定を大幅に上回る津波が深刻な事故を招いた。

 東電は08年12月にも、869年の「貞観(じょうがん)地震」を想定した試算で「8.7~9.2メートル」との結果をまとめ、09年9月、保安院に報告した。しかし報告は口頭だったうえ、保安院の担当者から上司に伝わったかどうかも不明という

 保安院は、事故直前の東電からの報告も含め、こうした事実を公表しなかった。森山善範対策監は24日、政府の事故調査・検証委員会には説明したことを明らかにし、「規制機関として十分な対応を取れていなかった」と話した。【藤野基文、岡田英】 (太字は投稿者)


[9月2日追加]
(1)(読売新聞)東電、15m超の津波も予測…想定外主張崩れる(2011年8月25日10時31分)

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110824-OYT1T00991.htm (2011年9月2日閲覧) 

東京電力が東日本大震災の前に、福島第一原子力発電所に従来の想定を上回る10メートル以上の津波が到来する可能性があると2008年に試算していたことが政府の事故調査・検証委員会で明らかになった問題で、東電は同じ試算で高さ15メートルを超える津波の遡上(そじょう)を予測していたことが24日わかった。
 大震災で同原発は、14~15メートルの津波に襲われたが、「想定外の津波」としてきた東電の主張は、15メートル超の遡上高の試算が明らかになったことで崩れた。東電は試算結果を津波対策強化に生かさず、大震災4日前の今年3月7日に経済産業省原子力安全・保安院に対し報告していた。
 東電によると、国の地震調査研究推進本部が02年7月に新たな地震の発生確率などを公表したのを受け、東電は、08年にマグニチュード(M)8・3の明治三陸地震(1896年)規模の地震が、福島県沖で起きたと仮定して、福島第一と第二の両原発に到達する津波の高さを試算した。第一原発の取水口付近で高さ8・4~10・2メートルの津波が襲来。津波は陸上をかけ上がり、1~4号機で津波の遡上した高さは海面から15・7メートル、同5・6号機で高さ13・7メートルに達すると試算した。
(2011年8月25日10時31分  読売新聞)
(2)10m津波想定 東電副社長も把握
[書き起こし ― 上のリンクから転載させていただきました] (太字は投稿者)
8月25日 17時12分
東京電力が、福島第一原子力発電所で設計段階の想定を超える10メートル以上の津波が来る可能性があるという試算を3年前に行っていたにもかかわらず、国への報告が東日本­大震災発生の直前だった問題で、試算した当時、その結果が東京電力の副社長にも伝えられていたことが分かりました。

福島第一原発では、設計段階の想定の5.7メートルを大幅に超える10メートル以上の津波が来る可能性があるという試算が3年前の春行われましたが、東京電力が国に報告し­たのは東日本大震災発生の4日前に当たる、ことし3月7日だったことが、24日に明らかになりました。

この試算結果について東京電力は、原発の津波対策に取り組んでいる土­木学会に調査を委託しましたが、当時の武黒一郎副社長にも伝えられていたことを明らかにしました。東京電力の松本純一本部長代理は「試算は仮定を積み重ねた計算で、具体的­な根拠がないので外部には公表しなかった。今後も公表するつもりはない」と述べました。

一方、原子力安全・保安院の森山善範原子力災害対策監は、国への報告が震災の直前だ­ったことについて「試算であっても評価の材料になるから、東京電力は早く報告すべきだった。結果的に津波対策は不十分だったと考えている」と述べて批判しました。 

枝野官房­長官は記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所で、設計段階の想定を越える10メートル以上の津波のおそれがあるという試算が3年前に行われていたことについて、「事前­に大規模な津波が到来する可能性を、東京電力は2008年に認識していたと聞いている。十分に対応する時間的な余裕があり、認識しながら対応できていなかったことは、たい­へん遺憾だ」と述べ、東京電力の対応を批判しました。そのうえで枝野官房長官は「予測をしている情報が調査を踏まえないと出てこなかったこともたいへん遺憾だ。引き続き、­政府が設置した『事故調査・検証委員会』には、これまで明らかになっていない事実関係について、できるだけ広範かつ詳細に検証してもらうことを期待している」と述べました­。


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