読売新聞の東電原発事故関連死についての英語の記事と日本語の記事の違い。 英語記事の方が詳しく、日本語記事にない内容も含んでいる。また、英語記事の見出しには"nuclear crisis" (核危機、原子力危機)という表現が使われているが、日本語記事の見出しは「災害関連死」となっている。原発事故関連死も災害関連死のひとつには違いないが、この見出しからは、東電原発事故関連だということがはっきりしない。
(読売新聞)災害関連死、573人認定…福島の13市町村(2012年2月4日) http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20120203-OYT1T01229.htm (2012年4月16日閲覧)(全文転載)
東京電力福島第一原発事故で、政府から避難などを指示された福島県の13市町村で昨年、計573人の災害関連死が認定されたことが、各自治体への取材でわかった。
避難が複数箇所に及んだり、長期化したりした結果、審査が難航するケースも目立つという。審査入りした634人のうち、29人は再調査が必要として認定が保留されている。
13市町村は、警戒区域や緊急時避難準備区域(昨年9月末に解除)、計画的避難区域に指定されるなどした南相馬、田村、いわきの3市と、双葉郡8 町村(浪江、双葉、大熊、富岡、楢葉、広野町、葛尾、川内村)、川俣町、飯舘村。計748人の認定申請があり、634人が審査を受けた。このうち573人 が認定された。不認定は28人。4人は書類不備で再申請を求められ、29人は保留とされた。
(2012年2月4日03時00分 読売新聞)
(転載終わり)
(The Daily Yomiuri) 573 deaths 'related to nuclear crisis' (Feb. 5, 2012) http://www.yomiuri.co.jp/dy/national/T120204003191.htm (2012年4月16日閲覧)(全文転載)(イタリックは日本語記事にない部分)
A total of 573 deaths have been certified as "disaster-related" by 13 municipalities affected by the crisis at the crippled Fukushima No. 1 nuclear power plant, according to a Yomiuri Shimbun survey.
This number could rise because certification for 29 people remains pending while further checks are conducted.
The 13 municipalities are three cities--Minami-Soma, Tamura and Iwaki--eight towns and villages in Futaba County--Namie, Futaba, Okuma, Tomioka, Naraha, Hirono, Katsurao and Kawauchi--and Kawamata and Iitate, all in Fukushima Prefecture.
These municipalities are in the no-entry, emergency evacuation preparation or expanded evacuation zones around the nuclear plant, which suffered meltdowns soon after the March 11 disaster.
A disaster-related death certificate is issued when a death is not directly caused by a tragedy, but by fatigue or the aggravation of a chronic disease due to the disaster. If a municipality certifies the cause of death is directly associated to a disaster, a condolence grant is paid to the victim's family. If the person was a breadwinner, 5 million yen is paid.
Applications for certification have been filed for 748 people, and 634 of them have been cleared to undergo screening.
Of the 634, 573 deaths were certified as disaster-related, 28 applications were rejected, four cases had to reapply because of flawed paperwork, and 29 remain pending.
In Minami-Soma, a screening panel of doctors, lawyers and other experts examined 251 applications and approved 234 of them. The panel judged two deaths were not eligible for certification and 15 were put on hold.
"During our examination of the applications, we gave emphasis to the conditions at evacuation sites and how they spent their days before they died," a city government official said. "However, the screening process was difficult in cases when people had stayed in evacuation facilities for an extended time and when there was little evidence of where they had been taking shelter."
(Feb. 5, 2012)
(転載終わり)
―英語記事で日本語記事にない部分の粗訳―
災害関連死の証明書は、直接その災害で死亡したのではなく、災害の結果引き起こされた疲労や慢性病の悪化によって死亡に至った場合に発行される。 自治体が、死因が災害と直接関連があるという証明書を発行した場合、遺族に災害弔慰金が支払われる。生計維持者が死亡した場合は、5百万円が支払われる。
南相馬市では、医師、弁護士を含む専門家の審査会が、251人からの認定申請のうち234人を認定した。2人が不認定で、15人が保留とされた。
市幹部によると、「審査過程では、避難所の状態や死亡前の生活状況に特に注意を払った」 「しかし、長期間避難所にいた場合や避難していたという証拠がない場合は、審査が困難だった。」
【関連情報】
(厚生労働省) 災害弔慰金・災害援護資金などの支援について http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/saigaishien.html(2012年4月16日閲覧)
災害弔慰金
東日本大震災で死亡された方の遺族には、災害弔慰金が支給されます。
支給額は、[1]生計維持者の方が死亡した場合 500万円 [2]その他の方が死亡した場合 250万円です。
また、震災により重度の障害を受けた方には、災害障害見舞金が支給されます。
災害弔慰金・災害障害見舞金は、市町村から支給されます。
支給額は、[1]生計維持者の方が死亡した場合 500万円 [2]その他の方が死亡した場合 250万円です。
また、震災により重度の障害を受けた方には、災害障害見舞金が支給されます。
災害弔慰金・災害障害見舞金は、市町村から支給されます。
(転載終わり)
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例5)共同通信が、太平洋に流出した放射性セシウムが20-30年で日本に戻ってくるという予測について、長文の英語記事と短い日本語記事を配信か?*
*
I. The Daily Mainichi Newsに掲載された、長文の英語記事(写真と地図つき)
毎日新聞社発行の英字新聞、The Daily Mainichi News、は2011年9月14日、”Cesium in Pacific likely to flow back to Japan in 20-30 years”と題したKyodo配信の記事をウェブサイトに掲載した。気象研究所と電力中央研究所との共同研究によれば、東電福島第一原発から海に流出した放射性セシウムが北太平洋を循環した後20~30年かけて日本沿岸に戻ると予測される、という内容の、12パラグラフから成る記事だ。3月14日撮影の、白煙をあげる福島第一原発の写真と、放射線マップも添えられている。
http://mdn.mainichi.jp/mdnnews/news/20110914p2g00m0dm104000c.html (2011年9月16日閲覧)
II. 毎日新聞が、ほぼ同じ内容の日本語記事を掲載(写真、地図なし)
毎日新聞は、「セシウム137:北太平洋を時計回り循環 気象研など試算」という記事を同じ9月14日に、mainichi.jpサイトに掲載した。(下に全文を転載) この日本語記事は、上記の英語記事の大部分を翻訳したもので、(例えば、英語では二つのパラグラフに書かれている内容を一つの文章にまとめている、というような違いはあるが) その内容は英語記事とほぼ同じである。
だが、英語記事と日本語記事には三つの違いがある。
(a)日本語記事には、英語記事のある次の一文が入っていない。
Cesium-137, which has a relatively long half life of about 30 years, can accumulate in the muscles once it is in the body and can cause cancer.
セシウム-137は半減期が約30年と比較的長く、体内に入ると筋肉にたまって、がんを起こす可能性がある。(b) タイトルのちがい
- 英語記事:Cesium in Pacific likely to flow back to Japan in 20-30 years (太平洋のセシウム、20-30年で日本にまた流れ着くだろう)
- 日本語記事:セシウム137:北太平洋を時計回り循環 気象研など試算 (「日本に戻ってくる」という悪いニュースを避けたかったのか?― 投稿者)
(c)英語記事にはあった、写真と汚染マップは掲載されていない。
[毎日新聞記事 全文を転載]
セシウム137:北太平洋を時計回り循環 気象研など試算(毎日新聞 2011年9月14日 20時50分(最終更新 9月14日 21時03分))
東京電力福島第1原発事故で海に流出した放射性セシウム137は、黒潮に乗って東へ拡散した後、北太平洋を時計回りに循環し、20~30年かけて日本沿岸に戻るとの予測を気象研究所の青山道夫主任研究官らと電力中央研究所の研究チームがまとめ、14日発表した。
海に直接出たセシウム137は、5月末までに3500テラベクレル(テラは1兆)と試算した。ほかに大気中へ放出された後に海に落ちた量が1万テ ラベクレル程度あるとみており、総量は1万3500テラベクレル。過去の核実験で北太平洋に残留している量の十数%に当たるという。
青山さんらは、核実験後に検出された放射性物質のデータなどを基に、今回の事故で出たセシウム137の海での拡散状況を分析した。福島県沖から北 太平洋へ水深0~200メートルの比較的浅い部分で東へ流れ、日付変更線の東側から南西方向に水深400メートルで運ばれる。フィリピン付近から一部は黒 潮に乗って北上し日本沿岸に戻る。
フィリピン付近からはインドネシアを通過してインド洋、さらに40年後には大西洋に到達する流れのほか、赤道に沿って東に進み太平洋の東端で赤道を越えた後、赤道南側で西向きに流れるルートもある。
海への流出量は、東電が作業用の穴の割れ目などから約1000テラベクレルが出たと発表していた。今回は海水で検出された濃度などから流出量を試算し、東電発表の3倍以上となった。
青山さんは「事故で放出されたセシウム137の全体像を把握するには、太平洋全域での高精度の測定が必要だ」と話している。
毎日新聞 2011年9月14日 20時50分(最終更新 9月14日 21時03分)
III. 日本の新聞数社が、簡単な共同通信配信記事を掲載
Kyodoの英語記事の翻訳記事を出したのは、投稿者がみるかぎり、毎日新聞だけのようである。このニュースを報道した他の新聞各社は、共同通信配信の、短い日本語記事を掲載した。
[共同の配信記事]
流出のセシウム、北太平洋を循環 20~30年で
東京電力福島第1原発事故で海に流出した放射性セシウム137は、黒潮に乗って東へ拡散した後、北太平洋を時計回りに循環し、20~30年かけて日本沿岸に戻るとの予測を気象研究所の青山道夫主任研究官らと電力中央研究所の研究チームがまとめた。札幌市で開催の日本地球化学会で14日発表した。
また海に直接出たセシウム137は、5月末までに3500テラベクレル(テラは1兆)と試算した。ほかに大気中へ放出された後に海に落ちた量が1万テラベクレル程度あるとみており、総量は1万3500テラベクレル。過去の核実験で北太平洋に残留している量の十数%に当たるという。
(共同)
この記事を掲載した報道機関には、投稿者が調べた限りでは、つぎのものがある。
- 中日新聞 http://www.chunichi.co.jp/s/article/2011091401000033.html
- 東京新聞 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011091401000033.html
- 47News http://www.47news.jp/news/2011/09/post_20110914060214.html
- 河北新報 http://www.kahoku.co.jp/news/2011/09/2011091401000033.htm
- 琉球新報 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-181627-storytopic-1.html
- 福井新聞 http://www.fukuishimbun.co.jp/nationalnews/CO/main/495001.html
[結論] 上の I~III からして、共同通信が長文の英語記事と短い日本語記事を配信したと言えるのではないか? そして、英語記事の翻訳記事を載せたのは、投稿者の見る限り、毎日新聞だけだった。
[参考-ロイター]
流出のセシウム、北太平洋を循環 2011年 09月 14日 06:00 JST
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例4)日本政府は9月12日、IAEAに追加報告書を提出したが、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)に関する部分で、国民向け(邦文)と国際社会向け(英文)を使い分けていた。
(1)(asahi.com) 原発事故、IAEAに追加報告書提出 除染状況など説明 (2011年9月12日20時44分)
http://www.asahi.com/national/update/0912/TKY201109120325.html(2011年9月15日閲覧)
(全文を転載)(太字は投稿者)
福島第一原発の事故について、政府の原子力災害対策本部は12日、国際原子力機関(IAEA)に追加報告書を提出した。19日から開かれる総会の関連会合で各国に説明する。
6月にIAEA閣僚級会合に出した報告書をもとに、8月末までに判明した新たな情報を追加した。来年4月の発足をめざす「原子力安全庁(仮称)」の設置準備や、原発の安全性を評価する「ストレステスト」(耐性評価)の導入を盛り込んだほか、福島第二、女川、東海第二の各原発についても対応を詳細に報告。 原発敷地外で土壌などから放射性物質を取り除く取り組み状況などを説明している。
細野豪志・原発担当相は11日、「(最初の報告書から)3カ月がたち、事故収束の工程表も進展している。原発の安全基準や規制のあり方の取り組みなどを報告したい」と述べた。
6月にIAEA閣僚級会合に出した報告書をもとに、8月末までに判明した新たな情報を追加した。来年4月の発足をめざす「原子力安全庁(仮称)」の設置準備や、原発の安全性を評価する「ストレステスト」(耐性評価)の導入を盛り込んだほか、福島第二、女川、東海第二の各原発についても対応を詳細に報告。 原発敷地外で土壌などから放射性物質を取り除く取り組み状況などを説明している。
細野豪志・原発担当相は11日、「(最初の報告書から)3カ月がたち、事故収束の工程表も進展している。原発の安全基準や規制のあり方の取り組みなどを報告したい」と述べた。
(2) 机の上の空 大沼安史の個人新聞から転載させていただきます。(太字は投稿者) http://onuma.cocolog-nifty.com/ (2011年9月15日閲覧)
2011-09-15
〔フクシマ・NEWS〕 日本政府 SPEEDIで2枚舌! IAEA追加報告書 国民向け(邦文) 「十分でないところがあった」 国際社会向け(英文)「適切に行われなかった」
日本政府が二枚の舌を使い分けていた!
IAEAに対する追加報告書での、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)に関する報告部分である。
英文の公式報告書には「適切に行われなかった(were not properly conducted)」と明記されている。
ところが、官邸HPに掲載された邦文の公式報告書では「十分でないところがあった」。
邦文を素直に解釈すると、「十分でないところがあったが、全体として適切に行われた」ともとれる。
この欺瞞は許すべきではない。
日本政府は英文公式報告書通り、適切に運用しなかった当局者の処罰、および、「苅野の悲劇」の被曝受難を強いられた浪江町の避難民らに対する謝罪、および補償を行わなければならない。
◇ 国民向け
今回の事故において、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)については、その活用や計算結果の公開のあり方等において十分でないところがあった。
32頁 → http://www.kantei.go.jp//jp/topics/2011/pdf/houkokusyo_full_dai2.pdf
◇ 国際社会向け
Accurate understanding and prediction of the effect of released radioactive materials In this accident, the use of the System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information (SPEEDI) and disclosure of its calculation results, etc. were not properly conducted.
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例3) 福島第1原発:海外向け広報は丁寧、迅速に 政府が説明会 (毎日新聞 2011年5月10日 22時18分)
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/archive/news/2011/05/10/20110511k0000m010112000c.html(2011年8月18日閲覧)
東京電力福島第1原発事故の海外向け広報に、政府が躍起になっている。4月上旬に汚染水を放出した際、中国や韓国など諸外国から「説明不足」と批判され、農産物などへの風評被害が拡大したためだ。8日の原子炉建屋とタービン建屋の間にある二重扉の開放にあたっては、6日前、2日前、当日と「3段構え」で、東京の在日大使館向けに説明し、丁寧さ、迅速さをアピールした。
政府の原発事故の海外向け広報は当初、後手後手に回った。事故直後の3月12日のベント(放射性水蒸気の大気中への放出)の際は、事後説明のみ。汚染水放出でも、在日大使館向け説明会は3時間前、すべての大使館と国際機関にファクスとメールを送り終わったのは放出の2分後で、中国の温家宝首相は菅直人首相に電話で、日本の対応への懸念を伝えていた。
二重扉開放にあたって「認識不足を反省した」(外務省幹部)政府は大型連休中の2日と6日に在日大使館関係者への説明会を開催。延べ47カ国・2国際機関が参加した。開放3時間前の8日午後5時ごろに、149カ国の大使館と欧州連合(EU)、35国際機関にファクスとメールを送信し、その後、各国から懸念は出ていないという。
松本剛明外相は10日の記者会見で「汚染水放出の説明で厳しい評価を受け、改善が必要だった」と述べた。【大貫智子】
毎日新聞 2011年5月10日 22時18分
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例2)国内では放射線汚染の規制値を緩めた上で、食品の安全を強調。 だが、海外向けには、外務大臣が「安全」の主張を自粛するよう外務省内に指示
『東京新聞』 「外務省、『安全性』強調自粛へ 汚染牛受け再発防止力点」 (2011年8月7日 19時21分)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011080701000608.html
松本剛明外相が、東京電力福島第1原発事故をめぐる日本食品の海外向け風評被害対策に関し、これまで「日本で流通している食品は安全」と強調してきた主張を自粛するよう外務省内に指示したことが7日、分かった。放射性セシウムで汚染された牛肉が全国に流通したた め。当面は再発防止策と「食の安全」に関する情報公開の徹底に力点を置く考えだ。
日本産食品については当面、牛肉であるか否かを問わず安易に「安全」という表現は使わないようにする。(共同) (太字は投稿者)
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例1)Wall Street Journal記事英語版と日本語版の違い
Moms Turn Activists in Japanese Crisis (6/17/2001)
「立ち上がる日本の母親たち-原発事故受け」 (2011年6月17日)
**英語版には、次の二つの文章がない。
「年100ミリシーベルト以下については、飲酒、タバコ、ストレスなどの影響と区別するのが難しい。年1ミリシーベルトは法律上の規制値で、超えたら健康に被害がでるというものでもない。」
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