日本(語)では、核技術を使った兵器は核兵器、発電は原子力発電と呼ぶ。「核」と「原子力」という全く別の言葉を使うことによって、実はどちらも同じ技術を使っているという事実を見えにくくしている。そして、核兵器は戦争、大量殺戮のために使われるから「悪い」ものだが、原発は核の平和利用で人間社会の役に立つから「良い」ものだ、と両者を峻別し対比する。こうして、日本(語)では、「核」という言葉はもっぱら兵器とだけ結びつけられ、発電とは無関係というイメージが広く浸透している。逆に、「原発」も実は「核」なのだ、ということは忘れられる。(現に、ふつう「核」といえば「核兵器」を指し、「原発」は意味しない。) こうしたコトバの操作が原発安全神話の浸透に一役買ったのではないだろうか?
2011年9月22日に開かれた潘基文(パン・ギムン)国連事務総長主催の「ハイレベル会合」は、英語ではHigh-level Meeting on Nuclear Safety and Securityと表記されている。(例えば、Secretary-General’s Statement on High-level Meeting on Nuclear Safety and Security 22 September 2011 を参照)
この同じ会議は、日本語では「原子力安全及び核セキュリティに関する国連ハイレベル会合」と訳されている。(例えば、官邸HP掲載の『原子力安全及び核セキュリティに関する国連ハイレベル会合野田総理大臣スピーチ』を参照)
つまり、英語の"nuclear safety and security" を、日本語では原子力と核に訳し分けているのだ。もし英語を日本語に直訳したなら「核の安全とセキュリティ」となり、日本語では意味をなさなくなる。なぜなら、「核兵器の安全」とは自己矛盾した概念だから。 そして、「核の安全とセキュリティ」では、この会議で原発のことも議題になっている、ということがわからなくなる。
日本語以外にも、核兵器と原発に別々の言葉を割り当てる言語はあるのだろうか?
少なくとも英語ではそうした使い分けはないようだ。「原子力発電所」はふつう nuclear power plant/station と呼ばれるし、米国の「原子力規制委員会」は Nuclear Regulatory Commission だ。 (逆に言えば、Nuclear Regulatory Commission を「原子力規制委員会」と訳している事実がおもしろい。)(ただし、 IAEA (International Atomic Energy Agency) は"atomic" を使っている。)
お願い: 日本語、英語以外の言語で「原子力」「核兵器」「原発」などをどう呼んでいるか、ご存知の方はぜひご教示ください。 ご投稿は、この投稿の「コメント」欄に書き込むか、Eメールjoho.sousa@gmail.com 又は ツイッター @JohoSousa でお願いします。
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