東電福島第一原発事故発生直後、福島第一から放出される放射線の害を小さく見せるため、成田-ニューヨーク間の飛行中に浴びる放射線量や環境放射線と比べる記事が盛んに現れた。その後、内部被曝を無視する国際放射線防護委員会(ICRP)のリスクモデルを批判する欧州放射線被害リスク委員会(ECRR)のモデルも知られるようになり、最近では大手マスコミですら「内部被曝」をとりあげるようになってきた。だが、原発事故発生から4カ月半も経った7月半ばになって、またまた成田-ニューヨーク間の飛行中の放射線量や環境放射線との比較を持ち出した週刊誌がある。『週刊朝日』である。その呆れる内容を以下に紹介する。
「世界主要観光地放射線マップで見る イタリアとフクシマ、高いのは?」
『週刊朝日』2011年7月29日号 26-27頁
「せめて夏休みだけでも、放射能に汚染された日本から脱出したい」
そう思っている人も少なくないだろう。では、いったいどこの国へ行けば安全なのだろうか?
1991年から世界の高自然放射線地域の調査を行っている公益法人「体質研究会」の中村清一常務理事はこう語る。
「世界には日本より自然放射線量の高い地域がたくさんあります。イランのラムサールやブラジルのガラパリ、インドのケララ、中国の陽江などが有名です。これらの地域では、砂や岩石のなかにトリウムやラジウムといった放射性物質が混ざっており、そこから高い放射線が出ているのです。特にラムサールでは、最高で年間260ミリシーベルトという非常に高い線量を記録する場合もあります。」
これらの地域の住民に、特別な健康被害は出ていないそうだが、国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告する一般人の平常時の線量限度1ミリシーベルトと比べると、圧倒的に高い。
また、93年の国連化学委員会報告書によると、香港やフランス、イタリア、ドイツなども、大地から受ける放射線量はもともと日本より高い。
しかも、海外旅行では、移動の飛行機内でも放射線を浴びる。近畿大原子力研究所の若林源一郎講師(放射線安全学)が解説する。
「そもそも地球には、大地からの自然放射線だけでなく、宇宙からも放射線が降り注いでいます。そのため、飛行機に乗れば自然と地上にいたときより高い放射線を浴びるのです。. . . 東京―ニューヨーク管を往復するだけで190マイクロシーベルトの放射線を浴びるとされています」
. . .
たとえば、成田空港からイタリアのローマへ直行便で向かうと、往路だけで47マイクロシーベルトを浴びることになる。
一方、福島県の調査によると、猪苗代湖の放射線量は毎時0.16マイクロシーベルト。仮に1週間、屋外で過ごしたとしても、被曝量は26.88マイクロシーベルトだ。
つまり、ローマ旅行よりも猪苗代観光のほうが、はるかに放射能の影響は少ないのである。
(以下略) (太字は引用者)
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