Wednesday, October 26, 2011

IX.5.原発輸出への動きが活発化

自民党政権下の1970年代から、日本企業は原発用の機器などの輸出を行ってきた。また、自民党政権末期の2009年6月、経済産業省が、「新規に原子力発電導入・拡大を検討する国からの、国を挙げての協力要請に応えるため、原子力分野で専門的知見を有する我が国関係機関の総力を結集し、効果的かつ効率的な国際協力の実施を目指」して、「国際原子力協力協議会」を設立した。

2009年9月に成立した民主党政権は、その流れを更に推し進め、原子炉建設だけでなく、運転や保守、燃料確保、低利融資までセットにして輸出する「丸ごと輸出」を経済成長戦略のひとつとして位置づけ、積極的に推進していた。が、2011年3月11日の東電福島第一原発事故でその勢いが一時的に鈍る。だが、財界や経産省の輸出推進派は、収束の「しゅ」の字も見えないまま無残な姿をさらしつづける東電福島第一原発の現状もものかは、「世界の趨勢は原発推進」という自信は揺らいでいないようだ。(下の、【推進派の現状認識】を参照) 現に、7月半ばには、リトアニアの原発入札で、日立が優先交渉権を獲得。他国に遅れをとるのでは、というあせりを背景に、8月に入って菅前首相の辞任が明らかになると、原発メーカーも外務省、経産省などの関係省庁も原発輸出に向けた動きを活発化させた。

その動きに棹をさすかのように、9月22日に野田新首相が国連で原発輸出継続を表明。9月末には、リトアニアのエネルギー相が来日して枝野経産相と会談。枝野氏はさらに、10月19日、パリでトルコのエネルギー天然資源相と会談し、昨年12月に日本が受注の優先交渉権を獲得したトルコの原発建設計画について、交渉の継続を要請した。さらには、9月末、日本原子力発電と国際原子力開発(JINED)が相次いでベトナム電力公社との調査契約(原電)と建設覚書(JINED)を結んだ上、10月25日にはベトナムの副首相が、原子力発電所2基の建設について日本との政府間合意を締結する方針を表明するなど、ここに来て原発輸出推進の動きが活発になっている。

1)(asahi.com) 原子力協定、交渉ペースダウン 福島第一の事故影響(2011年4月26日20時28分) http://www.asahi.com/politics/update/0426/TKY201104260395.html?ref=reca (2011年10月26日閲覧)

(全文転載)

外務省は26日、原発の輸出に必要な「原子力協定」について、日本が交渉中のインド、トルコ、ブラジル、南アフリカの計4カ国との交渉ペースが、福島第 一原発事故の影響で落ちていることを明らかにした。内閣府原子力委員会の定例会後、報道陣に説明した。ただし「交渉の凍結や中断はない」としている。

原子力協定は、原子力関連機材や技術を輸出入する際、国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れなどを相手国に確認するルールの一つ。核物質の軍事転用を防ぐ意味があり、協定を結ばない国には輸出できない。

すでに署名が済み、国会に承認を求めている韓国、ベトナム、ヨルダン、ロシアについては相手国からの見直し要求はないという。

菅政権はこれまで積極的に原発輸出を進めてきた。昨年10月には官民一体の売り込みでベトナムから原発2基の受注にめどをつけると同時に、原子力協定の交渉も進めていた。

(転載終わり)

(2)(asahi.com) 原発輸出で政権内温度差 首相は見直し姿勢だけど… (2011年7月22日0時0分) http://www.asahi.com/politics/update/0721/TKY201107210698.html?ref=reca(2011年10月26日閲覧)(全文を転載)(太字は投稿者)

図:原発輸出をめぐる発言拡大 原発輸出をめぐる発言

 菅直人首相は21日の参院予算委員会で、原発輸出推進の政府方針を将来的に見直す考えを示した。ただ枝野幸男官房長官はこれに慎重姿勢を示し、海江田万里経済産業相も輸出に積極姿勢を示すなど、政権内で認識の違いが出ている。

野 党は、首相の「脱原発」発言と、政権の原発輸出推進政策との整合性を追及。首相は答弁で「今回の(原発)事故を受けてより安全性を高めて進めていく考 えをベースにしているが、もう一度きちんとした議論がなされなければならない段階にきている」と述べた。ただ、首相自身がトップセールスで受注したベトナ ムへの原発輸出については、「外交交渉の現状に留意しつつ、相互の信頼を損なわないように対応していきたい」と述べ、中止に慎重な姿勢を示した。

野党側は、首相が「脱原発」会見翌日の14日にトルコのエルドアン首相に出した総選挙勝利の祝電で、原発輸出に言及していることも指摘。これに対し、首相は「親書でいろいろな分野で協力の進展を期待すると伝えた。案件には原子力も入っている」と認めた。

枝野氏は21日の予算委でベトナムへの原発輸出について、「国際間の信頼関係を損なわない、従来のお約束はしっかり守っていくことが前提だ」と、外交手続きが進む輸出は継続させる方針を表明。さらに会見では首相答弁について「(原発輸出の)見直しを示唆したとは受け止めていない」とした。外務省では「枝野発言が政府の方向性だ。政策の見直しは当面必要ない」(幹部)との受け止めが広がっている

(転載終わり)



(3)(asahi.com) 原発輸出、当面は継続方針 内閣が閣議決定 (2011年8月5日11時15分) http://www.asahi.com/politics/update/0805/TKY201108050150.html?ref=reca (2011年10月31日閲覧)(全文転載)  

菅内閣は5日、「諸外国が我が国の原子力技術を活用したいと希望する場合には、世界最高水準の安全性を有するものを提供していくべきだ」として、当面は 原発輸出を継続するとの方針を記した答弁書を閣議決定した。自民党の小野寺五典衆院議員が質問主意書で見解をただしていた。

答弁書は「我が国の原子力技術に対する期待は、引き続き、いくつかの国から表明されている」と記した。菅内閣はヨルダンやロシア、韓国、ベトナム各国との間で原発輸出に際し締結する原子力協定の承認を今国会で求めており、答弁書でも「外交交渉の積み重ねや国家間の信頼を損なうことのないよう、引き続き承 認をお願いしたい」と明記した。

菅直人首相は東京電力福島第一原発の事故を受け将来的な原発輸出見直しに言及しているが、答弁書では長期的な方針について「事故原因の調査や国際原子力機関(IAEA)の検討を踏まえつつ、できるだけ早い時期に我が国としての考え方をとりまとめる」と記すにとどめた。
(転載終わり)

(4)(asahi.com) 原発輸出の親書、大臣名に格下げ 菅首相が作成応ぜず(2011年9月11日3時3分) http://www.asahi.com/politics/update/0911/TKY201109100593.html?ref=reca (2011年10月26日閲覧)(全文転載)

日本政府がベトナムに原発輸出を続ける考えを8月に伝えた際、当時の菅直人首相が同国首相あての親書作成に応じ ず、担当の経済産業相、外相の連名による 親書に「格下げ」されていたことがわかった。ベトナムへの原発輸出は菅氏が主導していたが、東京電力福島第一原発の事故を受けて「脱原発」に転じただけ に、難色を示したようだ。

政府関係者らによると、事故後にベトナムからの原発受注工作を強めた韓国を牽制(けんせ い)するため、海江田万里経産相(当時)らが日本の輸出継続の方針をベトナム側に伝える必要があると判断。菅氏にズン首相あての親書を作ることを提案した。しかし、菅氏は消極的な姿勢だったという。

(転載終わり) 

(4)『朝日新聞』2011年822日 朝刊 4面 「原発輸出へ官も民も メーカー、海外一層重視」



(以下、記事全文を Nuclear F.C : 原発のウソ様のブログより転載させていただきました。文字の色は全て黒に戻し、下線強調も変更させていただきました。) http://blog.livedoor.jp/ryoma307/archives/4572283.html (2011年10月26日閲覧)

8/22 原発輸出、再始動 メーカー、海外一層重視

東京電力福島第一原発事故の影響で滞っていた原発輸出が動き始めた。原発メーカーや経済産業省は国内で原発への抵抗感が強まる中、海外輸出に活路を求める「脱原発」の急先鋒(きゅうせんぽう)だった菅直人首相の辞任も決まり、勢いづいている

2011071799085427 7月中旬。東欧リトアニアの原発入札で、日立製作所が米ゼネラル・エレクトリックとともに東芝傘下の米ウェスチングハウスを抑え優先交渉権を得た。中西宏明社長が現地に乗り込み、アピールした成果だ。

事故後、国内では原発の新規建設が難しくなった。東芝、日立、三菱重工業の原発メーカーは、輸出をますます重く見始めている
 各社は海外の原発需要を「中長期的には堅調」(日立の中西社長)とみる。電力需要が急増する新興国で原発への期待は強い。事故後、計画を明確に凍結したのはインドネシアやタイぐらい。経産省も「2020年の世界の原発市場は年16兆円」とした昨年の予測を変えていない
「電源喪失しても原子炉を24~72時間冷却できる」(東芝)と説明。福島の事故を受けて各国が強化する安全基準を満たす設計にして売り込む。

TKY201108020707  それだけに原発輸出への政権の煮え切らぬ姿勢に大手幹部は不満げだ。「リトアニアと違い、大国相手では国と国の交渉。官民ががっちり組まないと」。交渉の司令塔役となる政府の役割は不可欠とみる。
ただ、民間側の「オールジャパン」態勢もきしむ。

「海外輸出は一切考えていない」。東電の西沢俊夫社長は9日の決算発表で断言した。事故の収束と賠償に集中するためだ。

原発の受注獲得に電力会社は欠かせない。新興国は原子炉建設だけでなく、運転や保守、燃料確保までセットで求める運転を担う電力会社は原発メーカーと並ぶ輸出戦略の両輪だ

だが、東芝が目指すトルコへの原子炉輸出は、 東電が運転支援を担う予定だったため黄信号がともる。「日本と交渉を続けたいが、原発の運転支援はどこがしてくれるのか」。トルコ政府高官は7月末、日本 から派遣された経産省幹部にこんな不安を語った。トルコは別の運転事業者を選ぶよう求めており、その作業が遅れればフランスや韓国などとの交渉に乗り換える可能性も出ている。(小暮哲夫、大宮司聡)

■国内は原発減らし海外には売る  二重基準、次期政権に宿題*
 菅首相が衆院財務金融委員会で「新しい代表が選ばれた時は総理を 辞する」と明言した10日。その1階下にある部屋で開かれていた外務委員会で、日本・ヨルダン間の原子力協定の審議が始まった協定は3月にまず参院で可決され、4月に衆院で可決・成立する予定だったが、原発事故で遅れていた。「なにとぞ承認を」。松本剛明外相は深々と頭を下げた。

日本政府はこれまで米国など7カ国1地域と協定を締結しており、今国会は4カ国との承認を目指す。31日の会期末までにすべてを可決するのは厳しい情勢だが、松本外相は「日本の技術は多くの国から注目されている」と意欲的だ。

民主党政権は震災まで原発輸出に積極的だった。新成長戦略の柱に原発を位置づけ、官民一体のインフラ輸出戦略を描いた。政権交代から1年半の間に韓国な ど4カ国との協定に次々署名。さらに5カ国と交渉に入った。首相も自らベトナムとの協定を主導し、1月の施政方針演説で「私自ら働きかけ、原子力発電施設 の海外進出が初めて実現した」と胸を張っていた。

 ところが、3月の震災で状況が一変。首相は「原発依存からの脱却」へと舵(かじ)を切り、政府交渉や国会審議が全面ストップ。政権内では「輸出は一度立ち止まらないといけない」(玄葉光一郎国家戦略相)との声が相次ぎ暗礁に乗り上げた。
 
 動かぬ状況に危機感を覚えたのが、松本外相と枝野幸男官房長官だ。菅政権は8月上旬、「外交交渉の積み重ねや信頼を損なうことのないよう留意し進めていく」との答弁書をまとめた。首相は輸出維持の方針を書くことに「かなりごねた」(周辺)というが、2人が説得した。

 国内で原発を減らす一方で海外には売る「ダブルスタンダード」には批判も多い。「次の総理に宿題は残った。原発政策への立ち位置が問われる」。閣僚の一人は語る。(冨名腰隆)


 〈原子力協定〉 平 和利用を前提に核物質や原子力機器などを移すため、国や国際組織間で結ぶ法的枠組み。国 際原子力機関(IAEA)の査察受け入れや第三国への移転規制を定めた協定に政府が署名し、国会が承認する。日本企業は自民党政権下の1970年代から圧力容器などの機器を輸出。民主党政権は原発全体の建設を担う「丸ごと輸出」を推進。今国会提出のベトナムが初のケースだ。
朝日新聞:2011年8月22日 

(転載終わり)

*投稿者注:この小見出しは、新聞記事のとおりに書き直しました。

(5)(asahi.com)前原・民主政調会長、原発輸出に推進姿勢(2011年9月21日23時24分) http://www.asahi.com/politics/update/0921/TKY201109210660.html?ref=reca (2011年10月31日閲覧) 

(asahi.com掲載の全文を転載。太字は投稿者)

写真:インタビューに答える民主党の前原誠司政策調査会長=21日午後、東京・永田町の衆院議員会館、堀英治撮影拡大インタビューに答える民主党の前原誠司政策調査会長=21日午後、東京・永田町の衆院議員会館、堀英治撮影
 民主党の前原誠司政策調査会長は21日、朝日新聞などのインタビューに応じ、「日本の原発の安全性に対する信頼は揺らいでいない。輸出はしっかりやるべきだ」と述べ、野田政権でも原発輸出を引き続き推進する考えを示した。 

前原氏は菅内閣の外相当時、ベトナムなどへの原発輸出を進めた。東京電力福島第一原発の事故を踏まえ、「より安全性を高める機運は高まっている。事故の原因究明、再発防止策でしっかりと技術を高め、世界に広げる責務がある」と指摘した。 

また、国民新党が東日本大震災の復興財源に盛り込むよう求める日本郵政株の売却について「将来の売却益を償還財源に充てる」と語り、民主党案では将来的な税外収入として位置づけるものの、具体的な金額は示さない考えを示した。

→続きは朝日新聞デジタルでご覧いただけます。

(転載終わり)
(6)原子力安全及び核セキュリティに関する国連ハイレベル会合 野田総理大臣スピーチ  平成23年9月22日 ニューヨーク
首相官邸HPより http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/201109/22speech.html
(2011年年10月13日閲覧)

(以下、スピーチのなかの、10.のみを抜粋。太字は投稿者) 

10.日本は、原子力利用を模索する国々の関心に応えます。数年来、エネルギー安全保障や地球温暖化防止のため、新興諸国を始め、世界の多くの国々が原子力の利用を真剣に模索し、我が国は原子力安全の向上を含めた支援をしてきました今後とも、これらの国々の我 が国の取組への高い関心に、しっかりと応えていきます

(7)(読売新聞)首相、菅流「脱原発」を次々修正…輸出政策継続 (2011年9月24日10時32分) http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110924-OYT1T00271.htm (2011年10月26日閲覧) (全文転載)

野田首相が前首相の「脱原発」路線の修正に踏み出した。

持論の財政健全化実現への「車の両輪」にすえる日本の経済成長には、原子力発電の活用による電力の安定供給が不可欠だとの思いがあるようだ。

22日、ニューヨーク・国連本部での「原子力安全に関する首脳級会合」で演説した首相は、「多くの国々が原子力利用を真剣に模索し、わが国は支援をしてきた。今後とも高い関心にしっかり応える」と述べ、海外への原発輸出政策を継続する意向を表明した。

訪米直前の20日に受けた米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューでは、再稼働の目標時期を明言した。立地県の理解と安全確認の徹底 を条件にしながらも、「来年春以降、夏に向け、再稼働できるものは再稼働していく」と強調し、完成が近い建設中の原発についても稼働の可能性に言及した。

(2011年9月24日10時32分  読売新聞)

(転載終わり)

*記事中の「野田首相と菅前首相の原発政策 」の画像はこちらから→http://www.yomiuri.co.jp/zoom/20110923-OYT9I00736.htm

【参考資料】

(1)外務省HP 「原子力関連条約」のページから「二国間協定」を抜粋 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/atom/topics/jyoyaku.html(2011年10月26日閲覧)

(転載はじめ)

原子力関連条約  平成23年6月

2.二国間協定

二国間原子力協定は,特に原子力の平和的利用の推進と核不拡散の観点から,核物質,原子炉等の主要な原子力関連資機材及び技術を移転するに当たり,移転先の国からこれらの平和的利用等に関する法的な保証を取り付けるために締結するものです。

近年、原子力発電の拡充及び新規導入を計画する国が増加しており,多くの国が原子力発電の分野で高い技術を有する我が国との間での原子力協定の締結を希望しています。

我が国は,米国,英国,カナダ,豪州,中国,フランス,カザフスタン及び欧州原子力共同体(ユーラトム)との間で原子力協定を締結しています。また,ロシア,ヨルダン,韓国及びベトナムとの間で原子力協定に署名を行っています。

現在,インド,南アフリカ及びトルコとの間で原子力協定の締結交渉中です。

(転載終わり)

(2)国際原子力協力協議会 (2009年6月18日設立)

 経済産業省HP 「国際原子力協力協議会(第1回)-議事要旨」ページ http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004596/index01.html (2011年10月27日閲覧)

経済産業省 「国際原子力協力協議会の設立について」( 平成21年6月18日 )  http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2009/siryo23/siryo2-2.pdf

(3)国際原子力開発株式会社(略称:JINED)                     201010月設立    (英名:International Nuclear Energy Development of Japan Co., Ltd.   http://www.jined.co.jp/  

20101022 「国際原子力開発株式会社」の設立登記のお知らせについて(日本語版)

(4)(Eco Japan)電力9社と機器メーカー3社など、「国際原子力開発」を設立し海外向け包括提案 (2010年10月19日) http://eco.nikkeibp.co.jp/article/news/20101019/105028/(2011年10月26日閲覧)

(全文転載)(太字は投稿者)
東京電力をはじめ電力9社、東芝など原子力発電設備メーカー3社と産業革新機構の計13社は、原子力発電を新たに導入する国を対象に原発プロジェクトに 関して包括的に提案する新会社「国際原子力開発(JINED=ジーネッド)」を10月22日に設立する。まずベトナムで計画中の原発プロジェクトの受注に 向けて活動していく。

設立には、東京、関西、中部、北海道、東北、北陸、中国、四国、九州の電力会社9社東芝、日立製作所、三菱重工業の設備メーカー3社と、官民が出資する投資ファンドの産業革新機構の合計13社が参加する。資本金1億円、資本準備金1億円で、出資比率は東電が20%、関電15%、中電10%、産業革新機 構10%と、残り9社が5%ずつとなる。社長には、東電の武黒一郎フェローが就任する予定。

国際原子力開発は、新規に原発を導入する 国 の要望を受け、電力各社や設備メーカーなどと協議して提案を取りまとめたうえで、それぞれの国に合った原発プ ロジェクトを提示する。参加各社のこれまでの経験を生かしながら発電所の建設や運転保守の技術、人材育成のノウハウなどを包括的に提案し、受注につなげ る。

当面は、経済産業省をはじめとした関係機関とベトナム・ニントゥアン省の原発の建設、人材育成の計画提案を進める。日本政府は、原発導入国を支援すると ともに新規案件を提示し、国際原子力開発を窓口に官民が一体となった受注体制を構築していく。インフラ輸出を成長戦略に掲げる日本政府は、国際原子力開発によって原発関連の競争力を高め、海外展開を促進する。(日経BP環境経営フォーラム

▼関連情報

(転載終わり)

【原発推進派の現状認識】

(1)(日経新聞)原発事故に水を差された「原子力ルネサンス」 日本エネ研の村上氏に聞く
編集委員 滝順一
 (2011/4/27 7:00) http://www.nikkei.com/tech/ecology/article/g=96958A9C93819499E0E7E2E2888DE0E7E2E6E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;p=9694E2E4E2E7E0E2E3E2E3E7E5E7 (2011年10月27日閲覧) 

(全文を転載)(太字は投稿者)

東京電力の福島第1原子力発電所の事故は、日本国内はもとより世界のエネルギー政策や地球温暖化対策に影響を与える。近年高まりを示してきた世界での原発新設ブームは終息するのか。日本エネルギー経済研究所の村上朋子・原子力グループリーダーは「福島の事故で世界各国の原子力政策が百八十度転換することはなさそうだ」と話す

――世界的な「原子力ルネサンス」は、事故で水が差された形です。

「ルネサンスはそもそも世界一様の動きではなかった。各国それぞれであり、原発建設に積極的な国でここへきて方針を転換した国はないもともと脱原発の傾向があった国では改めて脱原発の動きが強まった。事故を契機に政策が百八十度転換した国はない

――ドイツをはじめ、欧州の動きがとりわけ急です。
日本エネルギー経済研究所原子力グループリーダーの村上朋子氏
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日本エネルギー経済研究所原子力グループリーダーの村上朋子氏 

ドイツでは昨年来、やがて止めることになっていた既設原発の運転延長を決めるなど脱原発路線から政策転換の兆しがあった。しかし福島第1の事故で原発に反対する政治勢力が勢いを得て、『脱・脱原発』が頓挫した格好だ。イタリアも原発をやめて久しく、最近になって新設の動きが出てきていたが、これも無期延 期になった。もともと脱原発色の濃い国はもとの路線に戻ったということだ

「欧州は事故に敏感に反応した。欧州共同体(EU)は域内の運転中の原発にストレステスト(安全性確認試験)をする。全電源喪失など福島第 1で起きたような事態を想定して、原発がそれに耐えうるかをシミュレーションする。5月にも各国の原子力規制機関の間で合意し、半年くらいかけて実施する という。それに先立って各電力会社はすでに自主的な安全確認を進めている。ストレステストは合格すれば稼働を続けるということで、原発利用の継続を前提に した措置だ

――中国など新興国の動きは。

新興国への影響は限定的だ中国は原発を積極的に推進する立場には変わりがないと表明しており、建設中や、すでに計画が決定した原発の工事などは遅れもなく進んでいるようだ。ただ設置の可否を審査中だった原発については、審査をいったん止めている。このため2015年以降着工、20年ころ 完成を目指していた原発は予定に遅れが生じるだろう」

インドも事故発生直後に路線を変えないと表明した。技術導入で世界から支援を受ける姿勢も変えないという。アラブ首長国連邦(UAE)や サウジアラビア、ヨルダンなど中東諸国、トルコも方針を変えていない地震国トルコでは対岸のギリシャで反対運動が高まるなど、あつれきは増すかもしれな いが、方針が揺らぐとは思えない

――米国や韓国は。

米国もいわれるほどルネサンスではなかった。30基を超える新設の計画があったが、当の発電事業者の本気度はそれほど高くなかった。米政府は融資保証などで後押ししているが、事業者にとって魅力のあるインセンティブではないようだ。今回の事故の影響がはっきりと表れたのは、サウス・テキ サス・プロジェクト原発計画(テキサス州)で、東芝と組んでいた電力大手のNRGエナジーが撤退を正式に表明した

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韓国は3月下旬に原子力委員会を開き、国内の原発利用の方向に変化はなしと表明した。また輸出についても、狙っていたのが中東やトルコなど新設意欲が強い市場だったこともあって、基本路線に変更はない

――国内ですが、福島第1の1~4号機について東電は廃炉の方針を示しました。5、6号機や福島第2原発の将来をどうみますか。

「福島第1の5、6号機や福島第2の原子炉はほとんど無傷と聞いており、技術的には再稼働できる。しかし政治的・社会的情勢はなかなか難し いと言わざるを得ない。中部電力がかつて浜岡原発1、2号機の廃炉を決断したときは、長期の運転停止の後に最終的に採算がとれないとみて判断した経緯があ る。東京電力がすぐに明確な方向を打ち出すとは思えない」

――直接的に東日本大震災の影響を受けなかった原発はどうでしょうか。例えば、東電の柏崎・刈羽原発は中越沖地震後の修理や安全チェックのため7つ原子炉があるうち、3つが動いていません。夏の電力不足対策として動かしたいという意見もある。

「報道によると、柏崎市長がこの夏に起動させるのは無理だと話している。地元首長の意向は重いだろう」

「国内には現在、定期点検中か、点検が終わって調整運転中の原子炉が7つある。九州電力の玄海2、3号、中国電力の島根1号、関西電力の大飯3号と高浜1号、中部電力の浜岡3号、北海道電力の泊1号だ。これらで発電を開始できるかどうかが大きな課題だ」

「また近々検査入りするとみられる原子炉が、四国電力の伊方3号、関西電力の美浜3号の2つある。これもどうなるか。震災で福島第1、第 2、東北電力の女川など15基が動かなくなっており、さらにこれらの原発が定検後も稼働できないとなると、電力供給の面で深刻な事態になりかねない」

「原子力安全・保安院は3月末に、電源喪失時の対策として電源車の配備などを電力会社に求め、各社は実施を約束した。100%完璧な対策で はないかもしれないが、いますぐにできることとしては技術的には意味がある。津波から施設を守るため堤防を高くするなど中長期的な対策はこれから考え、実 施していかなければいけないが、応急的な手はうったといえる」

――6月にウィーンで開く国際原子力機関(IAEA)の閣僚級会合で原子力安全の国際基準を設ける議論が始まると聞いています。

「安全のガイドラインのようなものをつくる動きになるのではないか。具体的には、原発が全電源喪失や崩壊熱除去機能の喪失に耐え、安全を 確保するにはどうしたらよいのか議論し、世界共通の基準としていくことになろう。世界にとっては、津波が問題なのではない。全電源喪失はテロ攻撃でも起こ りうる。米国は9.11の同時多発テロ以降、重要機器を一度に破壊するようなテロ攻撃に備えて、訓練をし設備面での対応もしてきたと聞いている」

――ひとつの要因で多数の機器が壊れることを「共通要因故障」と呼ぶそうですが、中長期的には原発の安全基準に共通要因故障を考慮しなければならないのでは。

「それは原発の設計段階での対策になる。現在、共通要因故障をまったく考慮に入れていないわけではないが、要因が非常に大きく取り込みが難 しい。例えば、日本の原発は余分な熱を排出する最終的なヒートシンク(熱の捨て場)を海にしており、今回の事故で、津波という共通要因でこのプロセスに問 題が生じた。欧米のように巨大な冷却タワーを設けて河川と大気に熱を捨てることも論理的にはありうる。しかし既設の原発で冷却タワーを建てる余裕があるのか。既設原発の設備配置などを大幅に変えるのは容易ではない」

――事故後の動きで、フランスのアレバなど欧州企業に廃炉や汚染処理の技術があることに気づかされました。

「欧州は汚水処理や除染にノウハウがある会社が多い。60年代に建てた古い炉が廃止措置になっており、その処理にあたった経験がある。日本企業はそれに比べ経験値が低い。アレバやシーメンス、スタズビック(スウェーデン)などにとっては福島事故は大きなビジネスチャンスになるだろう 

<取材を終えて>
村上さんによると、中国やインドなど新興国が原子力依存を強める動きは、福島第1原発の事故があっても大筋で変わらない。日本国内も原発を動かさずに電気を安定して供給することは難しそうだ。むしろ事故を契機に、多数の原発の運転が止まると電力危機を招きかねない。
ただこれは当面のこと。長期的に見れば、日本が原子力への依存を減らしていくことは決してできないことではない。この点は当面の電力不足対策とは別に、国民的な議論が必要だろう。
また、この夏の電力不足を招来しないため、応急的な安全対策で既設原発の運転を続けることは必要だろうが、安全策が本当に機能するのかどうか、検証はきっちりやっておかなければいけない。
(転載終わり)

投稿者注: (財団法人)日本エネルギー経済研究所 http://eneken.ieej.or.jp/

(2)(SankeiBiz)原発商談 「日本外し」加速 韓国、受注奪取へ越に親書 (2/2ページ)(2011.7.27 05:00) http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110727/mca1107270502002-n2.htm (2011年10月27日閲覧)

 (最後の2パラグラフを転載)(太字は投稿者)
トルコなど新興国は、自前のエネルギー源としての原子力への期待が依然高く、「これまで原発の技術開発を主導してきた日本が、今度は原発の安全性 向上に取り組むのは国際的な責務」(経産省資源エネルギー庁幹部)との思いが強い。だが、菅首相の「脱原発」発言が障害になり、経産省と官邸の調整も進ん でいない。
原発メーカーにも懸念が広がっている。日立製作所の川村隆会長は22日に軽井沢で開かれた経団連フォーラムで「震災後も海外か らは『質の高い原発がほしい』といわれている。菅さんが何と言おうと海外展開はやる」と強気の姿勢を強調した。だが、国内の原発関連メーカー首脳は「(菅首相の脱原発発言を)ベトナムやトルコの首相が聞いたらどう思うのか。原発輸出は国際公約なのだから、首相はもう少し考えて発言した方がいい」と憤る

(転載終わり)

(3)2011年9月15日、BSフジ・プライムニュース

IEA(国際エネルギー機関)前事務局長の田中信男氏の発言:「世界は日本の脱原発を望んでいない。世界が日本に期待するのは、福島の教訓を世界に還元して、完全に安全な原発の実現に貢献することだ。」 「世界の国々の中でドイツやスイスのような脱原発は少数派。途上国も含め世界の趨勢は原発推進」。

(4総合資源エネルギー調査会 総合部会 第1回基本問題委員会(2011年10月3日)
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/1th.htm

榊原定征・東レ会長:「最近欧州に行って向こうの経済人と話した。彼らが日本に期待するのは、福島の経験と教訓を生かして、原発の安全性を高める、進化させる、それを世界に示して提案していくことだ」

(5)「市民・科学者国際会議」(2011年10月12日)セバスチャン・プフルークバイル氏講演資料より

「原子力発電所はいかに安全かを、フクシマの原発事故が証明してくれる。」
 2011年9月, ロンドンで開かれた世界原子力協会(World Nuclear Association、略:WNA) の年間総会で。

投稿者註:世界原子力協会(WNA)は、原発のグローバル化を推進する国際業界団体。1975年にロンドンに設立されたウラン研究所(Uranium Institute)を前身とし、2001年に現在の名称に。原発産業に関するニュースを発信するWorld Nuclear News (WNN), 原発産業界のリーダーを養成するWorld Nuclear University、世界の原発産業で働く女性を支援するWomen-in-Nuclear (WiN)、「放射性物質の、安全で、効率がよく、信頼のおける輸送」を専門とするWorld Nuclear Transport Institute (WNTI) などと連携している。

(5)推進派の見方がよく出ている産経新聞の記事

(msn産経ニュース)日本の原発 信頼揺るがず ベトナム、トルコ耐震性評価 (2011.6.16 22:50) http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110616/biz11061622520037-n1.htm (2011年10月27日閲覧)

 (全文転載)(太字は投稿者)

東京電力福島第1原子力発電所の事故後も、耐震性を中心に、日本の原発技術に対する新興国の信頼は揺らいでいない。一部先進国で脱原発の動きが強まるものの、経済成長を支える安定的な電力供給へのニーズを背景に、原発導入を計画する国は拡大し ている政府は、東日本大震災後の国内経済の立て直しにもつながる原発輸出戦略を引き続き推進していく考えだ

「これまで通り連携」

「脱原発に向かっているのは元から原発に懐疑的だった国。多くは日本に期待してくれている」。資源エネルギー庁幹部は、福島第1原発事故後の世界の原発ニーズをこう分析する。

昨年10月に日本と原発建設で合意したベトナムのハイ副首相は5月下旬、東京で海江田万里経済産業相と会談し、「これまで通り日本との連携を進めていく」と表明した。トルコやヨルダンも日本との原発交渉を継続する方針だ。

これらの国が日本に期待するのは、日本の原発がフランス、ロシア、韓国など地震の少ない国の原発に比べ、耐震性などの基準が高いと評価しているからだ。特に、日本と同じ地震国のトルコやヨルダンの信頼は厚い。

増大する需要

新興国には「大量の化石燃料が必要な火力発電だけでは、電力需要に追い付かない」(資源エネルギー庁)事情がある。日本エネルギー経済研究所の村上朋子・ 原子力グループリーダーは「東欧では、エネルギー源のロシア依存から抜け出そうという安全保障上の理由からも、原発志向が強まっている」と話す。

日本の原発関連企業も、動きを再開した。日立製作所は1日、米ゼネラル・エレクトリック(GE)との合弁会社がリトアニアの原発計画に応札したと公表した。この計画には、東芝も米子会社が応札している。

三菱重工も、平成26年度に原子力事業の受注額を6千億円に拡大するという目標を維持し、今後は全体の6割を海外で稼ぐとしている。

国際的な責任

先進国ではドイツ、イタリア、スイスなどで脱原発の動きが進む。ただ、米国、フランスといった原子力大国や、電力不足に悩む中国やインドは原発推進の姿勢を変えていない。「世界的にみれば安全性を確認しながら原発を利用していく国が圧倒的多数」(村上氏)だ。

日本が原発輸出を控えれば、代わりに中国やロシアの原発が増える。経産省には「安全な原発の普及は日本の国際的な責任」との声もある。しかし、事故後に東電が海外事業を縮小するなど、建設から運転・管理までサポートするソフト面での態勢が整わなくなっており、「原発を初めて導入する国のニーズにどう応える か」、新たな課題も浮上している。

(転載終わり)

(6)国際原子力機関(IAEA)などの推進派は、チェルノブイリやフクシマのような壊滅的な事故でさえも、原発の根本的な危険性の証明としてではなく、「より安全な」原発への「教訓」を引き出す「機会」としてとらえている。 

例)IAEAのプロモーション動画:Discover the IAEA [6:05 min] 23 February 2011

(動画のナレーションの日本語訳の一部を引用。強調は投稿者)

IAEAは、核物質と放射性物質の安全性とセキュリティを高めるべく各国を支援しています。1979に米国のスリーマイル島で起きた炉心の一部溶融や1986年のチェルノブイリの惨事のような事故を防ぐために、原子力施設の安全基準を設定します。チェルノブイリ事故は、人間にとっての悲劇であると同時に、原子力産業全体にとって壊滅的な打撃でした。

原子力を止めるかに思われた事故は、逆説的にも、全世界を原子力の安全性の再検討に向かわせました。各国は、原子力の安全性は全世界の関心事であることを理解したのです。原子力発電への公衆の信頼を取り戻すために、国際査察団が原子力発電所を視察して安全性の再点検をし最良の実践についての情報交換をします。」

ナレーションの全文の日本語訳はこちらにあります。
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2011年11月6日投稿

(asahi.com) 国内は脱原発依存、でも輸出は推進 枝野経産相が明言 (2011年11月5日20時28分) http://www.asahi.com/politics/update/1105/TKY201111050392.html?ref=rss (2011年11月6日閲覧)

(記事冒頭を転載)

枝野幸男経済産業相は5日、東日本大震災後に停滞している原発輸出について、相手国から要請があれば輸出するべきだとの考えを明らかにした。都内の早稲 田大学で行った講演で、「わが国がいま持っている技術について海外の評価にこたえるのは、むしろ国際的な責任だ」と語った。

枝野氏は、原子力にはプラス面がある一方でリスクもあると指摘。「リスクをどの程度重視するかは国によって違う。地震や津波がない国もあるが、日本は圧倒的に原子力を使うには適さない」と述べ、国内での原発の新規立地には否定的な考えを示した。

そのうえで、原発依存を減らすことと輸出推進との関係について、枝野氏は「(原発)技術を国内で使わなくなるかもしれないが、(外国が)評価するなら、それにこたえることは矛盾でない」と話した。
→続きは朝日新聞デジタルでご覧いただけます
 (転載終わり)
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2011年11月10日投稿

原発輸出に熱心な産経新聞が「及び腰」の日本を叱咤激励ー

(msn産経ニュース)及び腰」日本を尻目に進む、世界各国の原発政策(2011.11.10 08:13 http://sankei.jp.msn.com/world/news/111110/asi11111008150000-n1.htm (2011年11月10日閲覧)(全文を転載)

 
今年6月にシンガポールを訪れてドイツの脱原発方針を説明したメルケル首相(左)に対し、リー・シェンロン首相は原発研究を続ける考えを示した(ブルームバーグ)
今年6月にシンガポールを訪れてドイツの脱原発方針を説明したメルケル首相(左)に対し、リー・シェンロン首相は原発研究を続ける考えを示した(ブルームバーグ)

「アジアで日本を除いて原発建設をやめた国はない」-。

今月はじめ、シンガポールで開かれた電力に関する円卓会議で、講演したフ ランスの原子力大手、アレバのセレナ・ン東南アジア太平洋地域部長はこう述べ、福島第1原発の事故後も、東南アジアで脱原発を鮮明にした国はひとつもない ことを指摘し、アジア市場への強い関心をにじませた。

日本が足踏みしているのを好機とばかり、フランスやカナダなど欧米諸国だけでなく、韓国や中国が原発輸出に意欲をみせる。さらに、注目されるのがシンガポールの動きだ。

今年6月にハンガリーで開かれたアジア欧州会議(ASEM)外相会合で、シンガポール政府は2012年に原子力の安全基準に関する会議を同国で開くことを提案。同時に欧州企業が専門技術を紹介する場も提供する考えを示した。

◆首相が推進方針

同国はこれまでもバイオメディカルや太陽光発電など先端技術の研究者を招聘(しょうへい)、研究費や施設を提供し、それぞれの分野でのアジアのハブ(中心)となることを目指してきた。今回提案した原子力会合は、原子力分野でも技術を集積していく方針を明確にした。

シンガポールのリー・シェンロン首相は6月に同国を訪れたメルケル独首相に対し、「シンガポールが原発は不要だと思っても近隣諸国は原発を建設する。その影響をわれわれは知る必要がある」と述べ、脱原発を訴えたメルケル氏にあくまで原発研究を続ける考えを示した。

一方の日本。野田佳彦首相は10月末のベトナムのグエン・タン・ズン首相との首脳会談で、ベトナムでの原子力発電所建設に日本が協力していくことを再確認し、合意文書に署名した。

同原発建設は、昨年10月に当時の菅直人首相が、ズン首相との間で合意し、日本が成長戦略として位置づけた官民協力に基づくインフラ輸出の具体的な成果 だった。しかし、3月の福島第1原発事故を受け、菅氏が脱原発を宣言、そのときの共同声明に明記された事業化調査さえも実施が遅れていた。

ベトナム側は福島第1原発の事故後も、「日本との協力により2021年に稼働する計画に変更はない。ただ原発建設にあたっては最新技術を使用する必要があ る。事故の教訓を生かし、大きな津波が来ることを想定し、安全レベルを最も高いレベルにあげたい」(グエン・フー・ビン駐日大使)などとして、導入に強い 意欲を崩していない。原発以外に有望なエネルギー源がない以上、当然の選択だった。

◆支援は後手後手

日本は野田政権の発足を受けて、原発導入支援はこれまで通り進める方針をベトナムなどに伝えた。ただ、問題はベトナムなどでは原発建設だけでなく発電所の運転も当面、日本が行うため、国内の電力会社などから長期にわたって人材を派遣しなければならないことだ。

現状では「反原発の風潮が強いのに加え、事故の際の賠償責任などを日本政府が保証しない限り協力は難しい」(電力OB)ため、各社とも及び腰だ。

ベトナムでの原発稼働は10年後のため、「合意を受けて作業を進めれば十分間に合う」(日本外務省幹部)としているが、日越原子力協定の国会承認のメドさえ立っていない。約束はしたものの、政府が本腰を入れない限り、実現は容易ではない。

シンガポールはすでに太陽光発電など次世代エネルギー研究で地域のハブとなりつつある。それでも「原子力は排除できない選択」(リー首相)として推進する姿勢を明確にしている。また、インドネシアやマレーシアも原発建設に向けた作業を進める。原発政策で「及び腰」の日本は、アジアの現実についていくのが やっとのようだ。(編集委員 宮野弘之)

(転載終わり) 
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2011年11月29日投稿

(毎日新聞)原子力協定:今国会成立へ…4カ国対象、民・自が大筋合意(2011年11月29日) http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111129k0000m010122000c.html  (2011年11月29日閲覧)(全文転載)

 民主、自民両党は28日、政府間で署名を終え国会の承認待ちとなっているロシア、ヨルダン、韓国、ベトナムとの原子力協定を今国会(会期末12月 9日)で成立させる方向で大筋合意した。政府が進める原発の海外輸出に必要な協定だが、東京電力福島第1原発事故後は国会審議が停滞していた。事故はいまだ収束せず、原因究明も途中のため国内には原発輸出に慎重論も根強いが、国際的な信用確保を優先させる判断で両党が折り合った。

 自民党はこれまで4協定の審議に抵抗してきたが、野田佳彦首相が衆院外務委員会の質疑に出席するのを条件に、30日に同委で趣旨説明、12月2日 に質疑・採決を行う日程に大筋で同意した。首相の同委出席は異例だが、民主党側がこれを受け入れたことで、2日中に衆院本会議で採決される見通しとなった。

 終盤国会の展開次第では、野党が多数を占める参院の手続きがこじれて、来年1月召集の通常国会に持ち越す可能性も残る。

 協定はロシア(09年5月署名)を除き、民主党政権になってから政府間で合意した。ヨルダンとの協定は10年9月、韓国とは同年12月、ベトナムとは今年1月にそれぞれ署名。今年1月開会の通常国会に提出したが、継続審議となっていた。【横田愛】

毎日新聞 2011年11月29日 2時33分
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2011年12月3日投稿 

(1)(NHK) 原子力協定締結案 衆院委員会可決(12月2日 14時47分) http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111202/t10014362291000.html (2011年12月3日閲覧)(全文転載)

ヨルダンやベトナムなど4か国に、日本の原子力関連の技術を輸出できるようにする原子力協定締結の承認案は、2日の衆議院外務委員会で採決が行われ、民主党と自民党の賛成多数で可決しました。

原子力協定を巡って、政府は各国で日本の原発の輸出や技術移転に対する期待感が強いことを受けて、 ことし1月までに、ヨルダン、ロシア、ベトナム、韓国の4か国との間で署名を済ませており、速やかに日本の原子力関連の技術や設備を輸出できるよう、今の国会での承認を目指しています。2日の衆議院外務委員会で、この原子力協定締結の承認案の審議が行われ、野田総理大臣は「原発事故を踏まえて、わが国の経 験や教訓、それに知見を、国際社会と共有していくことがわれわれの責務だ。諸外国が日本の協力を希望する場合に、相手国の事情を見極め、平和利用などを確保しながら、安全性の高い技術を提供し、協力することは意義がある」と述べ、承認に理解を求めました。一方で、野田総理大臣は、今後、新たにほかの国と原子力協定を結ぶかどうかについて、「新規の場合は原発事故の検証などを踏まえながら対応していきたい」と述べ、慎重に対応していく考えを示しました。このあと採決が行われ、原子力協定締結の承認案は、民主党と自民党の賛成多数で可決しました。承認案は2日の衆議院本会議に上程されて採決が行われる予定でしたが、自民党が「原発事故を踏まえ、原子力の平和利用に関する党の考えを本会議で表明したい」と主張したため、採決は来週に先送りされました。このため、 来週6日の衆議院本会議で承認案の採決が行われることになり、参議院での審議が順調に進めば、今の国会で承認される見通しです。

(転載終わり)

(2)(読売新聞)原子力協定 原発輸出へ国会の承認を急げ(12月3日付・読売社説) http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20111202-OYT1T01251.htm?from=y10 (2011年12月3日閲覧)(全文転載)

日本とヨルダン、ベトナムとの原子力協定承認案が、衆院外務委員会でそれぞれ可決された。

両国へ原子力発電所を輸出する前提となる協定である。両国は承認手続きを終えている。日本も、今国会中の承認を実現し、早期に発効させる必要がある。

協定は、核物質の平和利用や第三国への移転制限などを明記している。発効すれば、原発輸出のほか、原子力技術の提供、専門家の育成などの協力が可能となる。

協定承認案は、先の通常国会に提出されたが、福島での原発事故後、与野党から慎重論が出たため、継続審議となっていた。

野田首相が、衆院外務委で「日本の高水準の技術がぜひ欲しい、という国がある。そうした国の原発の安全性が高まることに貢献するのは意義がある」として、早期承認を求めたのは妥当である。

ヨルダンの原発は日本・フランス連合とロシアなどが受注を争っている。ヨルダンは日本の技術を評価し、事業者選定に向けて、年内の発効を促しているという。

ベトナムは日本からの原発輸入を決めている。10月に来日したズン首相は「世界で最も安全な原発を建ててほしい」と語った。

中国などの新興国や途上国では事故後も、原発新設の機運は衰えていない。安全性に関する技術やノウハウをそうした国々に提供することは、事故を起こした日本の信頼回復につながろう。

原発を輸出すれば、結果的に、資源が乏しい国々の発展を支えることにもなる。

原発輸出は1基3000億~4000億円規模の巨大ビジネスであり、政府の成長戦略の大きな柱の一つだ。政府は、国際協力銀行の融資など万全の支援策で民間を後押ししなければならない。

さらに、海外から受注すれば、運用や補修への協力を長期間求められる公算が大きい。

日本は、今後も技術水準を高め、専門家を育成することが必要である。原発から完全に撤退する、と各国から誤解されないようにすべきだ。

衆院外務委では、韓国、ロシアとの原子力協定承認案も可決された。韓国は、日本に機材や技術の移転を求めている。

ロシアとの協定は、将来、日露両国によるウラン濃縮事業での連携を可能とする。

協定は、原発輸出の促進だけではなく、国際的な原子力の平和利用にも寄与する。そうした視点も忘れるべきではない。

(2011年12月3日01時24分  読売新聞)
(転載終わり)

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 2011年12月7日投稿、12月11日追記。

12月6日、ヨルダン、ベトナム、ロシア、韓国との原子力協定締結の承認案が、 衆議院本会議で賛成多数で可決され、参議院に送られた。 オリンピックとパラリンピック東京招致に関する決議案、復興庁設置法案と四つの原子力協定承認案の「審議」と採決に要した時間は、わずか16分だった。

衆議院HPから。
第179回国会(臨時会) 
議事日程平成23年12月6日) http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_honkai.htm
 

 議事経過



 国会回次 179
 本会議年月日 平成23年12月6日(火)
 開会時刻 午後 1時 3分
 散会時刻 午後 1時19分

開会午後一時三分
第三十二回オリンピック競技大会及び第十六回パラリンピック競技大
会東京招致に関する決議案(鳩山由紀夫君外十九名提出)
右議案は、委員会の審査を省略して議事日程に追加するに決し、こ
れを議題とし、提出者鳩山由紀夫君の趣旨弁明の後、可決した。
中川文部科学大臣は、右の決議に対して政府の所見を述べた。

日程第一 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とロ
シア連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百
七十七回国会、内閣提出)

日程第二 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府と大
韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七
十七回国会、内閣提出)

日程第三 原子力の開発及び平和的利用における協力のための日本国
政府とベトナム社会主義共和国政府との間の協定の締結について承
認を求めるの件(第百七十七回国会、内閣提出)
 日程第四 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とヨ
ルダン・ハシェミット王国政府との間の協定の締結について承認を
求めるの件(第百七十七回国会、内閣提出、参議院送付)
右四件を一括して議題とし、外務委員長の報告の後、四件とも委員
長報告のとおり承認するに決した。

復興庁設置法案(内閣提出)
右議案は、議事日程に追加するに決し、これを議題とし、東日本大
震災復興特別委員長の報告の後、委員長報告のとおり修正議決した

散会午後一時十九分

(投稿者註:読みやすいように、議案と議案の間にスペースを加えました。)

衆議院TV ビデオライブラリ http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=TD 
 (ページの一部を転載)

このビデオライブラリは、国会審議テレビ中継で収録した音声と映像をそのまま提供しています。
(第174回国会〔2010年1月18日〕以降のものを継続して提供)
案件・発言者情報
開会日 2011年12月6日 (火)
会議名 本会議
収録時間 20分
審議を初めからご覧になるには「 中継中 」をクリックしてください。

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【関連報道】

(1)(NHK)原子力協定締結案 衆院通過12月6日 16時26分) http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111206/t10014443181000.html (2011年12月7日閲覧)(全文転載)

ヨルダンやベトナムなど4か国に、日本の原子力関連の技術や設備を輸出できるようにする原子力協定締結の承認案は、6日の衆議院本会議で採決が行われ、民主党や自民党などの賛成多数で可決され、参議院に送られました。

原子力協定を巡って、政府は、各国で日本の原発の輸出や技術移転に対する期待感が強いことを受け て、ことし1月までに、ヨルダン、ロシア、ベトナム、韓国の4か国との間で署名を済ませており、今の国会での承認を目指しています。この原子力協定締結の承認案は、先週、衆議院外務委員会で可決されたのを受けて、6日、衆議院本会議に上程されて採決が行われ、民主党や自民党、国民新党、たちあがれ日本など の賛成多数で可決され、参議院に送られました。公明党、共産党、社民党、みんなの党は、反対しました。承認案は、このあと参議院の外交防衛委員会で審議入 りし、審議が順調に進めば、今週9日の参議院本会議で、可決・承認される見通しです。一方、承認案の採決で、民主党の京野公子議員が党の方針に従わず反対 したほか、民主党の議員10人余りが本会議場を退席しました。
(転載終わり)

(2)(毎日新聞)原子力協定:衆院を通過、来月発効へ 原発事故後初 (2011年12月6日 22時02分(最終更新 12月7日 0時05分)) http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111207k0000m010047000c.html (2011年12月7日閲覧)(全文転載)

衆院は6日の本会議で、ヨルダン、ロシア、ベトナム、韓国との原子力協定の国会承認案を、民主、自民両党などの賛成多数で可決した。承認案は9日 までに国会承認され、来年1月にも発効する見通しだ。民主党政権が進める原発輸出の前提となる協定で、東京電力福島第1原発事故の発生後、初めての国会承認となる。

 ◇原発輸出、具体化へ

協定は、核物質など原子力関係の資機材や技術を移転する際に、平和利用への限定や国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れ、第三国への移転制限 などを定める。今後、ヨルダン、ベトナムへは原発輸出、ロシアとは日本の使用済み核燃料から回収したウランの再濃縮の委託、韓国へは原発関連資機材の輸出について、具体的な交渉が可能となる。

政府が協定発効を急ぐのは、「脱原発依存」の方針の下、国内での原発の新増設が見込めない中、経済産業省や原子力関連メーカーが海外展開に活路を求めているからだ。

4協定の国会承認にめどがついたことを受け、政府は、既に交渉入りしている▽インド▽トルコ▽南アフリカ▽ブラジル▽アラブ首長国連邦--などとの協定締結を目指す。特にインドとの間では今月末に予定される首脳会談で議題とする方向だ。

原子力協定を巡る今国会での審議で野田佳彦首相は「日本の技術が必要だという国には、個別に事情を判断しながら対応する」と答弁。首相周辺は「(首相は)何でもかんでも、どこへでもというわけではないが、日本の技術は海外できっと役に立つという思いはある」と解説する。

経産省も、協定の承認を受け、原発輸出容認の流れを作りたい考えだ。「原子力の平和的利用だけで高い技術力を持つ日本への需要は高い」(経産幹部)とされ、原発輸出は政府の新成長戦略でも目玉と考えられていたからだ。さらに国内で「脱原発」が進んだとしても、稼働中の原発のメンテナンスや使用済み核燃料の扱いなど、安全面で技術基盤の確保は必須。国内原発の新規建設が極めて厳しい中、海外への輸出が滞ると「中国や韓国など海外に有望な技術者が流 出してしまう」との危惧も強い。

 ◇アクセルへの懸念

だが、日本としてこれからも原発輸出を続けるのか否かについて、現時点で政府全体の方針が定まっているわけではない。原発事故を受け、政府は「電 力の50%超を原発で賄う」とのエネルギー政策の抜本的な見直しに入っているためだ。原子力政策の見直しは、原発輸出の考え方にも関わるが、結論が出るのは来年夏。原発事故の原因究明を担う政府の「事故調査・検証委員会」の結果が出るのも来夏で、それまでは原発輸出にアクセルを踏み込むことは難しい。

国内では、核兵器を保有しながら核拡散防止条約(NPT)に加盟していないインドへの原子力協力に対し、「核軍縮・不拡散の観点から問題」との批判も出ている。【横田愛、野原大輔、竹地広憲】

 ◇民主議員から造反 2人反対、約15人退席

衆院本会議の採決では、公明、共産、社民、みんなの各党が反対したほか、民主党からも京野公子氏(秋田3区)、小林正枝氏(比例東海)が反対し、約15人が退席した。

京野氏は国会内で記者団に「事故収束ができていない中で、日本の議員として賛成しかねる」と説明。原発事故を受け国内で「脱原発依存」にかじを切った民主党政権が、海外には原発を輸出することへの批判が与党内にも根強いことが改めて浮き彫りとなった。【木下訓明】

毎日新聞 2011年12月6日 22時02分(最終更新 12月7日 0時05分)
(転載終わり)

(3) (時事ドットコム)原発の輸出継続明確に=受注競争背景に発効急ぐ-政府 (2011/12/06-22:37) http://www.jiji.com/jc/zc?k=201112/2011120600931&g=pol (2011年12月7日閲覧)

ヨルダン、ロシア、ベトナム、韓国への原発輸出や原発技術供与の前提となる原子力協定の承認案が6日、衆院を通過した。4カ国との協定とも今国会中に承認され、年明け早々にも発効する見通し。菅直人前首相は在任中、東京電力福島第1原発事故を受けて原発輸出見直しを示唆したが、野田政権は協定の早期発効の必要性を説き、輸出を継続する姿勢を明確にした。

「放射能汚染を広める死の商人の片棒を担ぐとしか見えない」。承認案を質疑・採決した2日の衆院外務委員会で、公明党の赤松正雄氏は事故が収束していない段階での承認に強く反対した。6日の衆院本会議の採決では、脱原発を主張する民主党の京野公子氏ら2人が反対したほか、10人以上の同党議員が棄権。事故を起こした当事国が輸出を続けることへの慎重論の根強さを示した。

これに対し、野田佳彦首相は「日本の技術は素晴らしいので生かしたいという国がある」と指摘、原発輸出はその安全性向上にも寄与するとして理解を求めた。玄葉光一郎外相は、4協定とも相手国での承認手続きが済んでいることに触れ、「国家間の信頼関係を損なわないようにすべきだ」と訴えた。

政府が承認を急いだ背景には、民主党政権がもともと原発輸出を成長戦略の柱に据え、各国と激しい受注競争を繰り広げてきた経緯がある。年内に建設業者を選 定するヨルダンでは、日本とフランスの合弁企業がロシア企業などと受注を競う。外務省幹部は「ヨルダン側は安全性では日仏連合に分があるとみている」と述 べ、協定が発効すれば受注に大きく前進すると自信を示す。

ただ、政府は国内の慎重論に配慮して、原発輸出の対象は、協定を締結済みか、締結交渉 を行っている国に限定。新規受注の開拓は、福島原発事故の検証結果を踏まえて対応すると説明している。インドやトルコとは既に締結交渉に入っているため、 「新規輸出」には当たらないとして、合意を急ぐ方針だ。(2011/12/06-22:37)
(転載終わり) (文中のハイパーリンクは原文のもの。)
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2011年12月11日投稿

12月6日に衆議院本会議を通過した、ロシア、韓国、ベトナム、ヨルダンとの原子力協定承認案は、6日と8日に参院外交防衛委員会で討議・承認された後、7日に参議院本会議で賛成多数で可決、承認された。相手国はいずれも承認を終えており、4カ国との原子力協定は来年1月にも発効する見通し。

(1)参議院HP より 外交防衛委員会経過
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/koho/179/keika/ke2700066.htm

(2)参議院HPより 原子力協定承認案 投票結果  (四承認案とも同じ投票結果)

投票総数 224   賛成票 183   反対票 41

ロシア   http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/vote/179/179-1209-v009.htm

韓国   http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/vote/179/179-1209-v010.htm

ベトナム  http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/vote/179/179-1209-v011.htm

ヨルダン  http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/vote/179/179-1209-v012.htm

(2)参議院インターネット審議中継 2011年12月9日 http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

【関連報道など】

(1) (毎日新聞)参院本会議:原子力協定を承認 ベトナムなど4国と (2011年12月9日 12時26分(最終更新 12月9日 13時19分)) http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111209k0000e010152000c.html (2011年12月11日閲覧)(全文転載)

 参院は9日の本会議で、ヨルダン、ロシア、ベトナム、韓国との原子力協定の国会承認案を、民主、自民両党などの賛成多数で可決、承認した。4カ国はいずれも承認を終えており、来年1月にも発効する。東京電力福島第1原発事故の発生後、協定の国会承認は初めて。

 原発輸出の前提になる原子力協定は、核物質などの原子力関係の資材や技術を移転する際、平和利用への限定や国際原子力機関(IAEA)の査察受け 入れ、第三国への移転制限などを定める。ロシア(09年5月署名)を除く3カ国とは民主党政権になって政府間で合意した。協定が発効すれば、各国と具体的 交渉が可能になる。【横田愛】
ここから本文です。現在の位置は
毎日新聞 2011年12月9日 12時26分(最終更新 12月9日 13時19分)
(転載終わり)

(2)(テレビ朝日)「原発輸出」協定で民主党から造反相次ぐ(12/10 00:02) http://news.tv-asahi.co.jp/news/web/html/211209053.html (2011年12月11日閲覧)(全文転載)


日本の原発技術などをヨルダンなど4カ国に輸出するための原子力協定が参議院本会議で可決され、承認されました。しかし、与党・民主党から造反者が続出です。

 採決を棄権した民主党・有田参院議員:「党の判断よりも、歴史に対する責任のほうが大きいですからね」
  今回、承認されたのは、平和利用のために原子力の技術を輸出するためのもので、ヨルダン、ベトナム、韓国、ロシアの4カ国と締結した協定です。9日の参議 院本会議では「原発事故が収束しないなかで賛成できない」として、12人の民主党議員が採決を棄権しました。今月6日の衆議院本会議でも約20人近くが造 反したため、執行部は造反議員に対し、党の役職を辞任するよう求めました。
(転載終わり)

投稿者註:上記「原子力協定承認案 投票結果」のリンクに投票の内訳があります。
 
(3)(毎日新聞) 原発:海外展開に弾み…4カ国と原子力協定、1月にも発効 (2011年12月8日) http://mainichi.jp/select/biz/news/20111209k0000m020058000c.html (2011年12月11日閲覧)
  
日本の国際原発ビジネス
ヨルダンなど4カ国との原子力協定の国会承認案が8日、参院外交防衛委員会で民主、自民などの賛成多数で可決された。9日の参院本会議でも可決、 承認される見通しだ。来年1月にも発効する見通しで、政府が成長戦略に位置づける原発事業の海外展開に弾みがつく。国内の原発メーカーは「輸出に向けて前 向きな一歩」と評価するが、野田政権は国内向けには「脱原発依存」を掲げており、政府がどこまで支援できるかは見通せない。【野原大輔、竹地広憲】

協定を結ぶのはヨルダン、ベトナム、韓国、ロシア。今年1月までに署名していたが、東京電力福島第1原発事故の影響で国会承認が先送りされていた。

原発事故で、原発メーカーの原発事業の見通しは弱含んでいる。東芝は原発事業の売上高を11年3月期の約5800億円から16年3月期には1兆円に伸ばす計画だったが、「達成は数年遅れる」。日立製作所も21年3月期の原発事業の売上高を11年3月期比2倍の3800億円に引き上げる目標を掲げて いたが、6月に200億円下方修正した。

一方で、新興国では原発新増設の動きが急だ。原発の新設を決めたヨルダンでは、三菱重工業がロシア勢やカナダ勢と受注競争を展開。ヨルダン政府は 来年1~3月に優先交渉権を一つに絞るとしており、今回の承認はギリギリのタイミングだ。同社は「今国会での承認を期待していた」と安堵(あんど)の表情 を浮かべる。

日立製作所は7月、リトアニアの原発建設で優先交渉権を獲得。東芝も子会社の米ウェスチングハウスが受注した米国の新型原子炉向けに大型機器を輸出するなど、海外での営業に力を入れる。ベトナムも日本の原発導入を決め、東芝、日立、三菱重工の3社が受注を目指す。

ただ、政府の支援態勢はおぼつかない。政府は国際協力銀行(JBIC)などの融資や保証機能を活用して側面支援する構えだが、新興国との交渉は トップセールスがものをいう。政府が来夏に予定しているエネルギー政策の抜本見直しでは、「脱原発依存」色が濃くなる見通しで、政府内では「首相が先頭に なって売り込むことは難しい」(経済産業省幹部)との見方が強い。
毎日新聞 2011年12月8日 21時10分(最終更新 12月8日 21時41分)
(転載終わり)

(4)(毎日新聞)社説:原子力協定承認 拙速にすぎはしないか(2011年12月10日) http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20111210k0000m070084000c.html(2011年12月11日閲覧) 

政府がヨルダン、ベトナム、ロシア、韓国と結んだ原子力協定が、国会で承認された。これにより、協定は来年1月にも発効し、原発輸出が可能になる。

しかし、東京電力福島第1原発の事故はまだ収束していない。原因の究明、検証もこれからだ。安全確保をめぐる十分な議論がないままでの国会承認は、あまりに拙速だといわざるを得ない。
原子力協定は、原子力関連技術や資材を輸出する際、相手国での軍事転用を防ぐために締結するもので、原発輸出の前提になる。日本は米、仏、中国、欧州原子力共同体など7カ国1機関と締結済みだ。

今回承認を得たヨルダンとベトナムには原発輸出、ロシアにはウラン濃縮の委託、韓国には原子炉部品の輸出を想定している。

国会審議で、野田佳彦首相は「日本の現状や反省も踏まえ、なお協力してほしいというなら、できることをすることは国際的な原子力安全の向上に資する」と説明した。

しかし、「安全の向上」と胸を張る根拠はあるのか。確かに、国内原発産業の技術力は高い。しかし、それだけで原発を稼働し、運営する際の安全が確保できるわけではない。

輸出先で運営を主導すると期待された東電の参画は望めない。また、事故の原因がはっきりしないままでは、安全性を訴えても説得力はあるまい。

一方で首相は、「事故の経験や教訓を国際社会と共有するのはわれわれの責務だ」とも強調した。もっともだが、共有すべきは、事故の徹底的な検証を前提にした事故防止のための知見であるはずだ。

今回の国会審議は、議案の審議入りから承認までわずか10日しかなかった。例えば、ヨルダンは地震多発国であり、原発建設予定地が内陸部にあるため大量の冷却水を確保しにくいとされるが、安全対策の議論は生煮えだった。

政府は、締結相手国での受注競争で日本企業が不利にならないよう、年内承認を急いだとの指摘もある。しかし、採決では与党内からも反対者が出た。「身内」も納得しない審議では、国民や国際社会の理解も得られまい。

政府は現在、インド、南アフリカ、トルコとも原子力協定の締結交渉を進めている。核保有国でありながら核拡散防止条約(NPT)に加盟していないインドとの交渉は、とりわけ慎重であるべきだ。

国内で「脱原発依存」を進める一方で、海外に危険や不安を輸出することがあってはならない。
そのために、政府・国会には事故の検証を踏まえ、安全をめぐる議論を深めるよう改めて求める。
毎日新聞 2011年12月10日 2時30分
 (転載終わり)

(4) 明石昇二郎「原発輸出ーこれだけのリスク」(『世界』2011年1月号) http://www.iwanami.co.jp/sekai/2011/01/pdf/skm1101-2.pdf (2011年12月11日閲覧)

(5)恐山あれこれ日記 師走の「偏見」(2011/12/10)http://indai.blog.ocn.ne.jp/osorezan/2011/12/post_ac73.html (2011年12月11日閲覧)

この種のことは、あまり当ブログに書きたくないのですが、あえてひと言。

福島の原発事故が収束もせず、きちんと原因の検証もされないうちから、原発輸出や再稼動が話題に出ていますが、私はやめた方がよいと思います。

その最大の理由は、原発の安全担保は不可能だと思うからです。

つづきを読む
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2012年1月20日投稿

(1)【動画】(原子力資料情報室)日本の原発輸出問題 ジャーナリスト 鈴木真奈美(2011年12月13日録画) http://www.ustream.tv/recorded/19121178#utm_campaign=t.co&utm_source=19121178&utm_medium=social

(2) (msn産経ニュース)原発輸出巻き返しに懸命 東芝認可「大きな前進」 政府支援に不安
2011.12.23 20:57 (1/2ページ)http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111223/biz11122320580017-n1.htm (2012年1月20日閲覧)(全文転載)
 
国内原発メーカー各社は、東京電力福島第1原発事故で世界的に原発への不安感が高まるなか、輸出の巻き返しに懸命だ。東芝子会社の設計認可に加 え、来年1月には、ベトナム、ヨルダン、韓国、ロシアとの4カ国との間で、輸出の前提となる原子力協定が発効する予定で、追い風も吹く。ただ、エネルギー政策の見直しで「脱原発依存」を色濃くする日本政府の全面バックアップを受けられるかは不透明で、海外勢との激しい受注合戦を勝ち抜くのは簡単ではない。

「建設・運転の一括認可に向け大きな前進となる」

東芝は23日、設計認可を受け、歓迎のコメントを発表した。

東芝は、ウェスチングハウスを中核とする原発事業の売上高を2016年3月期に1兆円に拡大する目標を掲げる。佐々木則夫社長は、原発事故の影響で「達成時期が数年遅れる可能性がある」としながらも、「海外の原発受注は大きく伸ばせるはずだ」と自信をみせる。

三菱重工業も17年3月期に売上高6千億円を目指す目標を維持。日立製作所は21年3月期の目標を200億円引き下げ、3600億円としたが、原発事業強化の方針は揺るがない。

米国では20基以上の新設計画があるが、主戦場となるのは、東南アジアや中東の新興国だ。欧米メーカーに加え、中国、ロシア、韓国も交え、激しくしのぎを削っている。

 (2/2ページ)http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111223/biz11122320580017-n2.htm
原発新設を進めるベトナムとヨルダンとの間では、12月に国会で原子力協定の締結が承認された。協定は核物質や関連機器、関連技術が軍事目的に利用されることを防ぐもので、原発輸出の前提となる。すでに協定を結んでいるライバルとようやく同じ土俵で戦えるようになった。

06年に協定が発効したリトアニアでは、今年7月に日立製作所が1基の優先交渉権を獲得した。ベトナムでは、すでに2基を日本に発注することが内定してお り、東芝、日立、三菱重工の3社が売り込みをかけている。ヨルダンでも、来年の1~3月にも受注企業が選定される見通しで、三菱重工が、ロシア勢などと 争っている。

各社は、「実績を積み上げることで、トルコやインドとの協定交渉につながる」と期待する。

不安材料は、日本 政府の支援態勢だ。原発受注には、政府首脳によるトップセールスが決め手となるケースが多い。日本は原発事故前まで原発輸出を成長戦略の柱の一つに位置づ けていた。だが、脱原発依存に方向転換すれば、輸出推進を堅持しても「国内政策と矛盾し対外的に信頼されない」(業界関係者)と懸念する声は多い。

国内の新設・増設がストップすれば、研究開発が停滞し技術力の維持・向上に支障が出る恐れもある。

東芝は「安全性のさらなる向上に向けて不断の取り組みを行っていく」と表明した。

日本として原発をどう位置づけていくのか。事故の当事国として安全性を高めていく責務を含め、国民的な議論が必要だ。(今井裕治)

(転載終わり)

(3)(msn産経ニュース)新春直球緩球 東芝・佐々木則夫社長「原発輸出ほぼ計画通り」 (2012.1.17 21:11) http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120117/biz12011721110036-n1.htm (2012年1月20日閲覧)(全文転載)

--ヨルダンやベトナムなど4カ国との原子力協定発効が予定される
「原子力協定は原発輸出に向けたステップであり、歓迎だ。国内勢はすでに原発2基をベトナムから受注しているが、福島第1原発の事故を受け、より安全なものを総合的に提供していきたい」

--4カ国以外で期待される国は
「一番は中国だ。中国では2基を受注、米国でも4基を契約している。1基の計画があるフィンランドは価格、条件が折り合うか次第。子会社の米ウェスチングハウスの新型原子炉『AP1000』は、米国での採用に続き、英国、チェコでも有望だ」

--平成28年3月期に原発事業で1兆円の目標を掲げる
「福島第1原発の事故で規制がどう変わるかわからないし、歴史的な円高も響いている。ただ、狙っている市場については、計画に遅れは出ていない」

--半導体NAND型フラッシュメモリーは世界トップを争う勢いだ
「スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末など、急成長市場の顧客向けに需要があるが、23年10~12月期は鈍化しており、今年度の首位は厳しい」

--テレビ事業は国内各社ともに苦戦している
「他社ほどではなかったが、今年度上期は赤字になった。地上デジタル放送への移行後、売れ行きが落ち込み、単価も下落しており、テレビ事業は依然、厳しい状況だ」
(今井裕治)
(転載終わり)

【参考資料】
社団法人 日本原子力産業協会HPより





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