Saturday, October 1, 2011

XII.4.ヨウ素剤はなぜ生かされなかったのか

 (1)(NHK「かぶん」ブログ特集・原発事故でヨウソ剤はなぜ生かされなかったのか(田中陽子記者) (2011年10月1日閲覧) 

(以下、文章のみを全文転載します。画像を見るには、上の番組名をクリックしてください。)   (文中の太字、アンダーラインによる強調は原文のものです。投稿者による強調赤字で示しました。) 

(転載はじめ)

東京電力福島第1原発事故への対応で、またひとつ、国の対応の不備が明らかになりました。
「安定ヨウ素剤」は若い世代の放射線による甲状腺の被ばくを防ぐ切り札と言われています。事故に備えて福島県や市町村に備蓄されていましたが、国の指示がなかったためにほとんど投与されていなかったことがわかりました。
科学文化部・田中陽子記者のリポートを掲載します。

福島県いわき市に家族4人で住む山野邉美智子さんです。
今、心配でならないのが、長男、兼介くん(14歳)への被ばくによる影響です。

山野邉さんはいわき市から、甲状腺への被ばくを抑える薬を配られていました。「安定ヨウ素剤」です。

ヨウ素剤の働く仕組みです。
放射性ヨウ素は人体に入ると甲状腺に集まり、量が多いとがんを引き起こすおそれがあります。

同じように甲状腺にあつまるヨウ素剤を、あらかじめ飲んでおけば、放射性ヨウ素が取り込まれにくくなり、被ばくを抑えられるのです。
しかし、兼介君がヨウ素剤を飲むことはありませんでした。いつまでたっても服用の指示がなかったからです。

【山野邉美智子さん】
「市から指示があるまで一切服用しないでくださいと言われてましたし、お兄ちゃんが0.03マイクロシーベルト/時で、ほんとにこれ飲ませることによって0だったら、飲ませてあげたかったですよね」。


住民の被ばく対策の「切り札」として配られるはずだったヨウ素剤。しかし、今回の事故では、被ばくの恐れが高かった、原発から20キロ圏内の住民に対してほとんど活用されませんでした

福島第一原発を抱え、すべての住民が避難した大熊町では、
倉庫には4千人分のヨウ素剤が眠ったままです。
住民に配布する準備をしていましたが、国の指示が一切なかったからだと言います

【福島県大熊町生活環境課 武内佳之係長】
「もう少し国の方でもはっきりと、こういうことが必要なんだよということを言ってもらった方が良かったのかなと。その時に言ってもらえば、うちら対応できたわけなんで」



最も被ばくの危険が高まったのは水素爆発で放射性物質が大量に放出された3月12日から15日。しかしこの間、国はヨウ素剤の服用の指示を出しませんでした。

それはなぜだったのか。取材を進めると、早い時期に、専門家が服用すべきだと国に助言していたことが明らかになりました。

その一人、被ばく医療の専門家、鈴木元さんです。鈴木さんは政府の原子力災害対策本部に助言する役割を担っていました。

鈴木さんは、原発で最初の爆発があった翌日の3月13日、「あるレベル、基準値を越したらヨウ素剤を飲むべきだ」と、政府にヨウ素剤の服用の基準について助言していたといいます

その基準とは体に付着した放射性物質を調べるスクリーニング検査で、一定の数値を超える人がでた場合は、ヨウ素剤の服用を指示すべきだという内容です。
実際、同じ13日に行われた検査で、20キロ圏内の一部の人がこの基準を超えていました。ところが政府が原発から20キロ圏内の住民にヨウ素剤の服用を正式に指示したのは、この助言から3日後の16日でした。

本来、ヨウソ剤は、放射性物質が体内に取り込まれる直前に飲むことで最大の効果を発揮するものですが、この時点で、
すでに放射性物質の放出のピークは過ぎていたのです。

しかも、16日には対象となる原発から20キロ圏内の住民はほとんど避難した後だったため、地元では配布されず、国の指示は空振りに終わりました。

なぜ専門家の助言が放置されたのか。政府の原子力災害対策本部の担当者は、情報伝達が不十分だったことを認めています。 

【原子力安全・保安院原子力防災課 松岡建志課長】。
「自然災害も同時に起きておりましたし、原子力のほかの事象についても次々に連絡しなくてはならない一方で回線はなかなかつながらない、そういった中で連絡をとっていかなくてはならない、そういう状態だったと思います。私どものほうからの連絡が不十分であったとすれば本当にそれは申し訳なく思います」


一方、鈴木さんも助言はしたものの、その後、助言がどのように扱われたのか、実際にヨウ素剤が配布されたかなどを確認することはしませんでした
自分も含めて事故に対する認識が甘く、必要な住民にヨウ素剤を服用させる仕組みが十分ではなかったと考えています。

【原子力安全委員会緊急技術助言組織 鈴木元調査委員】
やっぱり私たち、本当の意味でシビアアクシデントが起きるという風にそんなに切羽詰まっては考えてなかった。私たちが考えてつくってきたシステムというのはやはりどこか抜けがあったということだと思います」

国からの指示がなく、子どもにヨウ素剤を飲ませられなかった山野邉さん。子どもの健康への不安が消えないと言います。

【山野邉美智子さん】

「10年後とか20年後に子どもたちが発症する可能性がまったくないとは言い切ってくれないからそれが怖いですよね。本当に子どもたちのことを考えてくれていたんでしょうかということ以外にないです」

 生かされなかったヨウ素剤。被ばくを抑える手段がありながら、それが生かされなかったという話は作業員の被ばく管理の中でも何度か明らかになりました。こ れまでのところ、福島県の子どもの甲状腺の検査で、健康に影響が出るような被ばくをした人は出ていないということですが、事故発生直後の服用をめぐる混乱 を検証するとともに、緊急時の住民の被ばく対策について、根本から見直すことが求められています。 

(全文転載終わり)  

(2)(ウオール・ストリート・ジャーナル日本版) 配布されなかった安定ヨウ素剤―福島原発事故後の混乱で (2011年 9月 29日  23:49 JST) (2011年10月1日掲載)

(記事全文を転載)(太字は投稿者)

【東京】東京電力福島第1原子力発電所の3月11日の事故による放射線のリスクを最小限に抑えることができた可能性のある錠剤が数千人の地域住民に配布されていなかったことが、政府の関連文書で明らかになった。
今回の開示で、東日本大震災後の混乱した日々に政府が緊急処置を怠ったことがまた裏付けられた格好だ。 

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イメージ
The Yomiuri Shimbun/Associated Press 
三春町の避難所に用意された安定ヨウ素剤(3月20日)

世界中の原発周辺地域の大半と同様に、福島第1原発周辺地域にも十分な安定ヨウ素剤の備えがあった。これは比較的安全な薬剤で、甲状腺癌の予防に効果がある。甲状腺癌は大きな原発事故の場合、最も一般的かつ深刻な影響と考えられている。

政府の防災マニュアルでは、原発の周辺地域はこうした薬剤の服用に関し、政府の指示を待つことが規定されている。原発の安全性に関する国内の一部の専門家らは錠剤の即座の服用を勧めたが、政府は3月11日の事故から5日目まで錠剤の配布、服用を命じなかったことが今回の関係文書で明らかになった

その時までには、10万人近い避難住民の大半はさらに安全な場所に避難しており、福島第1原発からの放射線の放出量も当初のピーク時から減少していた。

放射性ヨウ素が甲状腺に侵入するのを防ぐ安定ヨウ素剤は放射線にさらされる直前、もしくは被曝後2時間以内に服用するのが最も効果的だという。放射線が放出されてから何日も経って服用してもほとんど効果がない。

複数の政府および地方自治体の当局者らと助言者らは、ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、東日本大震災の様々な面の責任を負う異なる政府機関の間でコミュニケーションの行き違いが続いたことを指摘した。

指示の遅延については、事故直後の政府の突然の動向の変化にも言及されている。その時、地方自治体の当局者らは個人が安定ヨウ素剤や汚染除去による安全措置を受けられる放射線の基準を大幅に引き上げた。

福島第1原発から30キロ余りの距離にある川内村の村役場の井出寿一総務課長は、「そんなものを飲まなければいけないなんて、殆んど誰も知らなかった。16日に役場に届いたときには、もうみんな避難した後だった」と語った。


福島原発周辺地域での安定ヨウ素剤の配布状況

井出課長は、川内村の3000人の住民用の安定ヨウ素剤の入った箱はいまだに、住民が後にした村役場にあると話す。

福島原発周辺の町にはこうした薬剤の備えがあり、双葉町と富岡町の2つの町は、政府の指示を待たずに住民にこうした薬剤を配布した。また、福島原発から やや離れたいわき市と三春町も独自の判断で住民に錠剤を配布した。いわき市の住民は政府の指示を待つよう言い渡されたが、三春町の住民は渡された錠剤を服用し、その後、県から回収するよう注意を受けたという。

国内の放射線の専門家らは、福島県の住民のその後のテスト結果で、薬剤なしでも甲状腺の病気を引き起こすほどの著しいリスクにつながるほどの放射線量を被曝した住民はほとんどいないことが示唆されたとしている

しかし、2つの政府系機関――原子力安全委員会と原子力安全・保安院――の当局者らは、特に子供に効果の高いと考えられている薬剤がなぜ地域住民に与えられなかったのか互いに問い正している

原子力安全・保安院の関係者は、同院がこのケースについて調査を行っていることを明らかにした。

国際医療福祉大学クリニック院長で原子力安全委員会の緊急技術助言組織のメンバーである鈴木元氏は、「我々のような専門家にとって、一番防御しなくては いけないのは、小児甲状腺ガンのリスクだということは明らかだった」と述べた。さらに、「肝心な住民は安定ヨウ素剤を当然飲んでいるはずだと思っていた」 と続けた。

鈴木氏は、8月にやっと分かった時には、まさか、という感じだったと話す

原子力安全委員会は最近になってウェブサイトで、3月13日付の手書きのメモを、錠剤の配布と摂取を勧めた証拠として掲載した

一方、原子力安全・保安院はこうしたメモは送られてこなかったと主張している。
 
原子力安全・保安院の松岡建志・原子力防災課長は、この行方が分からなくなったメモについて、同院は引き続き調査していると言及。同課長は、 「ERC(緊急時対応センター)で混乱があり、それが理由で伝わらないことがあったなら、それは申し訳なく思う」とし、「当時は、まずは避難だという考え 方でみんなで動いていた」と述べた。

安定ヨウ素剤の配布の責任者だった福島県の職員らは、当時の菅直人首相率いる政府の災害対策本部からの指示を待ち続けたと語った。
放射線の危険性から地域住民を保護するための措置を政府がいかに怠っていたかの例は他にも表面化している。

地方自治体の関係者らの一部は、放射線量の測定システムのデータが開示されなかったことが、放射線量の高い地域への住民避難などにつながったと非難している。

また、放射線の危険の兆候があったにもかかわらず、当初の避難区域外の住民への政府による避難勧告に数週間かかったことを非難する向きもある。政府はさ らに、牛肉をはじめとする食品が安全だと宣言し、その後、放射性セシウムが基準値を超える牛肉が販売されていたことが判明し、非難を浴びた。

原子力安全委員会は最近、ウェブサイトに、検査で特定水準の被曝が確認される場合には、40歳以下の福島県の住民に安定ヨウ素剤が与えられるべきだと主 張する3月13日付の文書を掲載した。同委員会はこの文書は、事故の最悪の日となったと考えられている同月15日以前の13日午前10時46分に、原子力 安全・保安院に送付されたと主張している。3月15日には原子炉2基の爆発で福島県内の多くの町に放射性プルーム(飛散した微細な放射性物質が大気に乗っ て煙のように流れていく現象)が広がった。

震災後の政府当局者間のやり取りの大半と同様、この文書は東京の災害本部に電子メールではなく、ファクスで送付された。原子力安全委員会の都筑英明・管理環境課長によると、災害本部内の原子力安全委員会の担当者がこのコピーを原子力安全・保安院の担当者に手渡した。都筑課長はインタビューで、「その後ど のような判断で、どのようになったのかは、我々の知るところではない」と語った。

原子力安全・保安院の松岡課長は、同院は同院の職員がこのメモを受け取ったかどうか確認できないとし、これに関して調査が続いていると語った。

原子力安全・保安院は3月16日に福島原発から20キロ以内の町の住民に対し、安定ヨウ素剤の摂取に関する説明を示した。こうした町に避難勧告が出された4日近く後のことだ。

状況に詳しい関係者らは、安定ヨウ素剤の配布基準の突然の変更がこの遅延につながった一因であった可能性があると指摘している。今回の災害前に作成され た公式の防災マニュアルによると、1万3000cpm(cpm=1分当たりの放射線計測回数:カウント・パー・ミニット)の水準が示された場合には、シャ ワーや衣服の着替えなどの除染および安定ヨウ素剤の配布が必要とされていた。

3月14日には福島県はこの基準値を10万cpmに引き上げた。レベルが引き上げられると、1万3000~10万cpmを示した住民には衣服の表面を拭うためにウェットティッシュが配られた。錠剤は与えられなかった。 

3月に1万3000cpm以上を記録した住民は約1000人となり、10万cpmを上回ったのは102人だった

先の原子力安全委員会の緊急技術助言組織のメンバー、鈴木氏は、「スクリーニングレベルを上げたいと言ってきたときに、かなりの汚染のレベルだというこ とをすぐに感じた」と言及。「ロジスティクスが間に合わないほど対象者が沢山いるということを暗に言っていた。水も着替えも、人員も間に合わないという状 況だった」と語った。

長崎大学の教授で事故後、福島県でアドバイザーを務めた松田尚樹氏は、3月14日の地域住民のスクリーニングの日以降に行われた浜通りから帰着したスク リーニング部隊との会議を思い出す。同部隊はサーベイメーターの針が振り切れた、と報告した。松田教授は大学のウェブサイトに掲載したエッセイで、「それ までの1万3000cpmではまったく立ち行かないことを示していた」と記した。「避難所の住民の不安を煽らないために、アラーム音は消すこと、タイベッ クスーツやマスクもなるべく着用しないことなどが申し合わされた」という。

原子力安全委員会はもともとスクリーニング基準の引き上げには慎重だった。同委員会は3月14日、福島県に対し1万3000cpmに据え置くよう助言する声明を発表した。

福島県が新基準を数日間使用した後、原子力安全委員会は3月20日に態度を緩め、同委員会は声明で、10万cpmは、緊急事態の初期における国際原子力機関(IAEA)のスクリーニング基準に照らして容認できるとした

政府による3月16日の安定ヨウ素剤の配布に先立ち、双葉町と富岡町を除く近隣の町々は住民に同錠剤の服用を指示しなかった。その後福島県内で最も汚染がひどいと確認された浪江町もその1つだった

結局、政府による3月16日の指示後、福島県は福島原発から50キロ範囲内に位置する市町村全体の90万人の住民に行きわたる安定ヨウ素剤の錠剤と粉末剤を配布した。その大半は未使用のままだ。 

(2011.3.17 19:13)(2011年10月1日閲覧)

(記事全文を転載)

体内被曝をした場合の健康被害を防ぐ効果がある「安定ヨウ素剤」の備蓄量は福島県で38万人分(17日時点)。屋内退避指示が30キロ圏内で出されている現状では圏内の住民分の安定ヨウ素剤分は確保できている。ただ、今後の放射性物質の拡散次第で屋内退避の指示範囲が拡大、50キロ圏内にまで広がると、80万人分が不足する事態に陥る。

原子力発電所を抱える各自治体は、国の原子力安全委員会が定めた原子力施設の防災対策に基づき、安定ヨウ素剤を備蓄している。

安定ヨウ素剤の服用は40歳未満に効果があり、福島県によると、平時の安定ヨウ素剤の備蓄量は同原発から10キロ圏内の住民らのための7万人分。東日本大震災で同原発に被害が出て以降、急遽、国や隣県の茨城県から18万人分の安定ヨウ素剤の提供を受けた。このほかにいわき市が独自に13万人分を備蓄しており、県内全体で計38万人分を確保した。

福島県内では、東京電力福島第1原発から20キロ圏内で避難指示、20~30キロ圏内にも屋内退避指示が出されている。福島県によると、屋内退避指示圏内の住民と避難所には合わせて約14万1千人の人たちがいる。

県が確保した25万人分のうち、13万人分の安定ヨウ素剤はすでに、屋内退避指示が出されているいわき市など30キロ圏内の11市町村に配布済み。ただ、県では「屋内退避指示の範囲がこれ以上広がった場合、残る12万人分の備蓄では全く足りない」と頭を悩ます。

すでに、同原発から50キロ離れた三春町では「万一の場合に備えて」(町災害対策本部)と、県が備蓄していた安定ヨウ素剤を取り寄せ、住民に配布しているが、50キロ圏内には福島市や郡山市では約150万人が生活する。このため、県は安定ヨウ素剤が50キロ圏内の住民らに必要になった場合にも備え、国に不足が想定される80万人分の追加供給を求めている。

経済産業省原子力安全・保安院によると、福島県を除く日本国内の原子力発電所がある12道県が体内被曝による健康被害を防ぐ目的で備蓄している安定ヨウ素剤は70万人分のみ。このため、福島県の要請を受け、広報担当者は「現状では不足が生じているので、国内メーカーに在庫を確認するなど対応を急ぎたい」と話している。

( 全文転載終わり)


(4)(asahi.com)被曝、心配しすぎに注意 不要な検査や服薬で副作用も (20113191245分) (2011年10月1日閲覧)

(記事全文転載)(太字は投稿者)
 福島第一原発の事故の影響で、被曝(ひばく)による健康への影響を心配した人たちが、必要のない検査を求めて専門施設に駆け込んだり、正しい知識のないまま安定ヨウ素剤を服用したりと、混乱が広がっている専門家は「ヨウ素剤は飲み方によって、効果がないばかりか、副作用もあり危険」と冷静な対応を求めている。
 
 「ここで被曝検査してもらえるって、聞いたんですけど?」
 
 18日午後、高度な被曝医療を行う放射線医学総合研究所(千葉市)の裏門。福島県のいわきナンバーの乗用車から、若い女性が降り、警備員に叫んだ。車内 には、家族連れらしき3人が乗り、後部座席には、荷物がぎっしり。その後、車は警備員に案内され、正面玄関に回った。直後にも、いわきナンバーの車が1台 到着し、検査について警備員に尋ねていた。
 
 放医研には被曝量を調べる検査などへの問い合わせが殺到している。19日までに1千件以上の電話があり、6回線がふさがる状態に。関東地方に住む人からの問い合わせもあるという。
 
 放医研は、原則的に一般向けの検査はしておらず、原発近くにいた人で、一度も検査を受けていない人に限って、例外的に検査をしている。
 
 放医研の明石真言・緊急被ばく医療研究センター長は「原発の半径30キロ圏内の住民でも、除染が必要なレベルの放射線が検出されたのは、原発のそばを歩いていた人など、ごく例外的な場合だけ圏外の住民は現状では検査は必要ない」と訴えている。
 
 日本医学放射線学会も18日、現状で健康への影響が心配されるのは、「原発の復旧作業のために尽力している方々だけ」として、冷静な対応を求める声明を出した
 
 また、安定ヨウ素剤の服用を巡っても、混乱が起きている。この薬は、放射線を浴びる約2~3時間前に、決められた量を飲むと、最も効果がある。
 
 しかし、厚生労働省などによると、原発の周辺では、自治体が住民にヨウ素剤を配り、住民が飲んでしまった例が複数あるという。放水作業に従事した警視庁機動隊員の中には、規定量の3倍を飲んだ隊員もいたという。
 
 これに対し、日本核医学会は18日、「今の段階で安定ヨウ素剤による甲状腺保護処置は不要。むしろ危険もあるので避けて」と注意喚起した。規定量以上の ヨウ素剤を飲むと甲状腺の機能が不安定になり、「リバウンドで一定期間後に、放射性ヨウ素の吸収を高めることさえ起こりかねない」という。
 
 厚生労働省も同日、ヨウ素剤は医師らの立ち会いで飲むように、福島県や県内の自治体に注意喚起した。(宮島祐美、大岩ゆり)

(全文転載終わり)

(5)(asahi.com)原発周辺住民は「ヨウ素剤飲むべきだった」 識者が指摘 (2011827218分)(2011年10月1日閲覧)

(記事全文を転載)(太字は投稿者)
 東京電力福島第一原発の事故で周辺住民が飛散した放射性ヨウ素を空中や食品から体内に取り込むことによる甲状腺の被曝(ひばく)は、健康被害を予防する安定ヨウ素剤を飲むべきレベルだった可能性があることが、27日、埼玉県で開かれた放射線事故医療研究会で指摘された
 
 今回、政府は原発周辺住民にヨウ素剤の服用を指示しなかった。しかし研究会では、原子力安全委員会の助言組織メンバー、鈴木元・国際医療福祉大クリニッ ク院長が「当時の周辺住民の外部被曝の検査結果などを振り返ると、安定ヨウ素剤を最低1回は飲むべきだった」と指摘した
 
 3月17、18日に福島県で実施された住民の外部被曝検査の数値から内部被曝による甲状腺への影響を計算すると、少なくとも4割が安定ヨウ素剤を飲む基準を超えていた恐れがあるという。
 
 放射性ヨウ素は甲状腺に集まりやすく、甲状腺被曝では放射性ヨウ素の中では比較的、寿命が長い放射性ヨウ素131(半減期約8日)だけが考慮されていたが、広島大原爆放射線医科学研究所の細井義夫教授は「半減期が2時間と短いヨウ素132も考慮が必要」と指摘。理化学研究所などが3月16日に原発30キ ロ圏外の大気を分析した結果、放射性物質の7割以上が放射性ヨウ素132や、約3日で放射性ヨウ素132に変わる放射性物質だったという。(大岩ゆり)

(全文転載終わり) 

(6)

Q5のQ&Aの全文を以下に転載。太字は投稿者。(2011年10月1日閲覧)

Q5 福島県いわき市の原発周辺では念のため安定ヨウ素剤が配布されたようですが、服用の必要性はありますか?

A:安定ヨウ素剤は甲状腺の被ばくを少なするために用いられますが、かなり高い甲状腺被ばくが見込まれない限り(10 万マイクロシーベルト以上)使用するべきではありません。安定ヨウ素剤には副作用があるため一般家庭には配布されていません。どのようなタイミングで安定ヨウ素剤を使用するかは、予測される線量にもとづいて、専門家が判断することになっています。今回、配られた地域でも指示があるまでは、個人の判断で飲ま ないでください。
 ヨウ素は微量必須元素であり、甲状腺に集まり身体の成長、知能の発達に必要な甲状腺ホルモンの生成に必須です。従って、ヨウ素が欠乏すると甲状腺ホルモンが欠乏状態となります。そのために子供や妊婦には成人よりも必要とされます。そこで、放射性ヨウ素が体内に入る可能性があるときに、予め安定ヨウ素剤を服用して、甲状腺を安定ヨウ素(放射線を出さないヨウ素)で満たしておけば、放射性ヨウ素が体内に入っても吸収されにくくなります。例えば、放射性ヨウ素による甲状腺の被ばく線量が10万マイクロシーベルトと予測される場合、放射性ヨウ素の体内摂取前又は直後に安定ヨウ素剤を服用すると、甲状腺への集積を 90%以上抑制できるので、甲状腺の被ばく線量を10,000マイクロシーベルト(=10ミリシーベルト)以下にすることができます。
 甲状腺の放射線影響としては、甲状腺がんが問題になります。しかし、甲状腺がんの発生確率は被ばく時年齢で異なり、乳幼児の被ばくでは増加しますが、40 歳以上では増加しません。そのため、安定ヨウ素剤の服用対象は原則40歳以下とされています。原子力安全委員会・原子力施設等防災専門部会は平成144 月に「原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について」を発表し、安定ヨウ素剤予防服用に当たっては、服用対象者を40歳未満とし、全ての対象者に対し、放射性ヨウ素による小児甲状腺等価線量の予測線量を10万マイクロシーベルト(=100ミリシーベルト)とするとしています。また、市販のう がい薬や消毒薬にヨウ素が含まれることから、これを飲むとよいという誤った情報が流布しているようですが、決してそのようなことはしないでください。これらの薬剤のヨウ素含有量は少なく、効果を期待できないばかりか、そもそも経口薬ではないため、飲み込むと消化管などに対して毒性を発揮する可能性があります。
(掲載日:平成23315日、平成23319日改訂、平成23322日改訂)

(Q5の全文転載終わり)

(7)森まさこ議員(福島県選出)が、9月28日の参議院予算委員会でヨウ素配布の問題について質問

【動画】班目春樹 枝野 細野豪志 子供を被曝させて半年 平然と国会9/28(2011年10月1日閲覧)


 2:05あたりから、ヨウ素剤の配布のついての質問が始まります。
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2012年4月25日投稿

(河北新報)神話の果てに 東北から問う原子力  
第2部・迷走(3)怠慢/ヨウ素被ばくを看過(2012年04月21日)http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20120421_01.htm (2012年4月25日閲覧)

弘前大グループによるヨウ素131の被ばく調査=2011年4月15日、浪江町津島地区(床次教授提供)
<安心感得られず>
 東京電力福島第1原発事故で福島県浪江町から宮城県に避難する男性(35)は1月、いわき市の病院で家族の体内被ばく量を検査してもらった。幸い長女(6)と次女(3)からは検出されなかったが、安心できない。
 「事故当初のヨウ素被ばく量が含まれていないから」と男性は言う。
 放射性のヨウ素131の寿命は短い。その量は8日で半分、1カ月で14分の1、3カ月過ぎると2435分の1…。時間がたてば測定機の検出能力を下回り、確認できなくなる。
 昨年3月14~15日、男性の一家は原発の北西約30キロの浪江町津島地区に避難。子どもたちは14日に1時間ほど外で遊び、15日は雨にもぬれた。
 浪江町民約8000人が避難した津島地区は線量が高かった。15日夜の文部科学省の測定では毎時270~330マイクロシーベルト。事故前の数千倍だった。
 15日午後、南相馬市に移り、男性と家族が検査を受けると、測定機の針が振り切れた。数値は教えられず、服を洗うよう指示された。
 男性は「子どもたちがどれぐらい放射線を浴びたのか分からない。まめに健康検査を受けるしかない」と途方に暮れる。

<「運搬できない」>
 ヨウ素131はウランの核分裂によってでき、甲状腺に蓄積する。原発事故で環境中に放出された場合、セシウム137(半減期約30年)とともに、最も警戒しなければならない放射性物質だ。
 昨年3月末、国はいわき市と福島県川俣町、飯舘村に住む0~15歳の約1100人を対象に、甲状腺被ばくの簡易調査を実施した。基準を超えるケースはなかったとされたが、実は使用した測定機にヨウ素の量を特定する機能はなかった。
 原子力安全委員会は政府の原子力災害対策本部に、甲状腺モニターを使った追跡調査を提案したが、実行されなかった。「モニターは重く運搬が困難」「本人や家族、地域に不安を与える恐れがある」との理由だった。
 県は昨年10月、ようやく18歳以下の全県民を対象に甲状腺検査を始めた。これまで異常のある人はいなかったという。
 だが、津島地区で避難中に被ばくした人たちの怒りは収まらない。浪江町の紺野則夫健康保険課長は「国や県はわざと検査を遅らせたとしか思えない。子どもたちに、もし(放射線の)被害が出たらと思うと、胸が張り裂けそうになる。許せない」と批判する。
 線量が一気に高まった事故当時、一体どの程度のヨウ素を体内に取り込んだのか。今となってはデータ不足のため、推測するしかない。
 弘前大被ばく医療総合研究所の床次真司教授は昨年4月12~16日、津島地区の住民ら62人を対象にヨウ素による被ばく量を測定した。測定機の重さは2キロにすぎない。

<成人最大87ミリシーベルト>
  体内に残っていたヨウ素131を基に、1カ月前の3月12日の1日で吸い込んだと仮定して試算すると、甲状腺に与えた放射線の影響(等価線量)は成人で最 大87ミリシーベルトにもなった。その数値を1歳児に単純換算すると700ミリシーベルトを超える。もちろん外にいた時間や空中のヨウ素濃度によって、こ の数値は大きく変わる。
 精度を上げるために床次教授はより多くの人を調べようとしたが、調査は5日間だけだった。県からやめるよう求められたという。
 線量がピークだった昨年3月中旬のヨウ素の濃度を知るデータは、ほとんど残っていない。床次教授は「追跡調査を行わなかったり、データを蓄積しなかったりしたことがかえって、住民に不安を抱かせる結果になっている」と指摘する。

(転載終わり)



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