I. IAEAを中立的機関のように報道する大手/既存メディア
国際連合傘下の自治機関である国際原子力機関(International Atomic Energy Agency; IAEA)は、東電福島第一原発事故直後から、事故の推移を多大の関心を持って注視し、事故についての見解、日本政府の事故対応についての見解を表明していた。
5月24日から6月2日には、18人から成る「福島第一原子力発電所の事故に関するIAEA 国際専門家調査団」が来日し、6月1日に[暫定的要旨」を、6月16日には『IAEA加盟国に対する報告書』をまとめた。
IAEAのこうした動きを日本のメディアは大きく報道してきたが、大手/既存メディアは、「IAEAとはそもそもどういう国際機関なのか」を不問に付して、あたかもIAEAが中立的な機関であるかのような印象を与えている。典型的な例をふたつ挙げると―
(1)(asahi.com) IAEA、原発事故への見解表明へ 専門家派遣など準備 (2011年3月14日20時57分)
http://www.asahi.com/international/update/0314/TKY201103140412.html?ref=reca(2011年9月14日閲覧)(全文を転載)
【ウィーン=玉川透】国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)は14日、福島第一原発の3号機で「水素爆発があり建屋が爆発したが、格納容器に損傷はなかった」との報告を日本政府から受けたと発表した。天野之弥(ゆきや)事務局長は同日午後(日本時間15日未明)、ウィーンで記者会見し、事故に対する IAEAの見解などを示すとみられる。
IAEAは引き続き第一原発の状況を注視し、日本への専門家派遣を含む「技術的支援」の準備を進めている。
IAEAは、2007年の新潟県中越沖地震で被害を受けた柏崎刈羽原発の調査のため、調査団を派遣し調査結果の報告書をまとめた実績がある。
今回も放射線の影響調査や医療支援、所在不明の放射性物質の回収、緊急対応への助言などの分野で派遣を検討しているが、あくまで日本政府の受け入れ決定が前提となる。
一方、日本側は今回の事故を原発事故の国際評価尺度(0~7)で、放射性物質が放出された1979年の米スリーマイル島原発事故の「5」より1段階低い 「4」程度と位置づけている。これに対し、IAEAは「大量の放射性物質の放出が起きているわけではないという意味で、スリーマイル島事故とは違う」(関係筋)と分析。現時点での日本側の評価を「妥当」としている。
(2)(読売新聞)IAEA、福島第一原発事故の調査開始へ (2011年5月24日21時17分) http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110524-OYT1T01077.htm (2011年9月14日閲覧)(全文を転載)
国際原子力機関(IAEA)の調査団は24日、東京電力福島第一原子力発電所事故への関係機関の対応や被害状況を把握する調査を25日から開始することを明らかにした。
政府関係者からの聞き取り、福島第一原発の現地視察などを通じて概要をまとめ、6月20日からウィーンで開かれるIAEA閣僚級会合で報告する。
調査に先立ち、団長を務めるマイク・ウェイトマン英国原子力規制機関長らは24日夕、海江田経済産業相と会談。海江田経産相が「情報はすべて公開するので、調査を有意義なものにしてほしい」と述べると、ウェイトマン氏は「今回の事故の情報収集を行い、原子力の安全性を高めるための教訓を得たい」と 応じた。
(2011年5月24日21時17分 読売新聞)
IAEAは引き続き第一原発の状況を注視し、日本への専門家派遣を含む「技術的支援」の準備を進めている。
IAEAは、2007年の新潟県中越沖地震で被害を受けた柏崎刈羽原発の調査のため、調査団を派遣し調査結果の報告書をまとめた実績がある。
今回も放射線の影響調査や医療支援、所在不明の放射性物質の回収、緊急対応への助言などの分野で派遣を検討しているが、あくまで日本政府の受け入れ決定が前提となる。
一方、日本側は今回の事故を原発事故の国際評価尺度(0~7)で、放射性物質が放出された1979年の米スリーマイル島原発事故の「5」より1段階低い 「4」程度と位置づけている。これに対し、IAEAは「大量の放射性物質の放出が起きているわけではないという意味で、スリーマイル島事故とは違う」(関係筋)と分析。現時点での日本側の評価を「妥当」としている。
(2)(読売新聞)IAEA、福島第一原発事故の調査開始へ (2011年5月24日21時17分) http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110524-OYT1T01077.htm (2011年9月14日閲覧)(全文を転載)
国際原子力機関(IAEA)の調査団は24日、東京電力福島第一原子力発電所事故への関係機関の対応や被害状況を把握する調査を25日から開始することを明らかにした。
政府関係者からの聞き取り、福島第一原発の現地視察などを通じて概要をまとめ、6月20日からウィーンで開かれるIAEA閣僚級会合で報告する。
調査に先立ち、団長を務めるマイク・ウェイトマン英国原子力規制機関長らは24日夕、海江田経済産業相と会談。海江田経産相が「情報はすべて公開するので、調査を有意義なものにしてほしい」と述べると、ウェイトマン氏は「今回の事故の情報収集を行い、原子力の安全性を高めるための教訓を得たい」と 応じた。
(2011年5月24日21時17分 読売新聞)
II. 6月1日の「たね蒔きジャーナル」での、小出裕章・京都大学助教の解説(一部を抜粋)
以下、SleepingCatsさまのブログ:6月1日MBSラジオ小出裕章氏「IAEAという組織、公表されている放射線量データ等について」から転載させていただきました。(太字は投稿者)
MC:まず伺いたいのは、IAEA、国際原子力機関の調査団が来日していますよね。
福島第一原発の調査に当たっていて、どういう報告書を出すかという事の
まずはその案、もとの案が出されたのです。
その内容を見ていて、私、このIAEAとはどういう組織なのか、
是非小出先生に伺いたいと思いました。
といいますのは、こういうくだりがありまして、
日本政府の対応についてなのです。
「原発周辺での住民の避難を含めた日本政府の対応を、良く組織化されている」
というふうに書いているのですね。
「そういうふうに見るんだ、IAEAは」と思いまして、
これはどう読み取ったらよろしいですか。
小出氏:IAEAという組織は、ふたつの役割を持っています。
ひとつは核兵器が、現在の核兵器保有国以外の国に
拡がらないように監視をするという役目です。
MC:これは解ります。
小出氏:もうひとつは、所謂原子力の平和利用と言われているようなものを、
どんどん拡げるという役割。
MC:拡げるという役割ですか。
例えば、原発をどんどん作って行こうという立場の機関なのですか。
小出氏:そうです。
MC:私は、もっと原発をも取り締まる厳しいチェック機関だと思っていたのです。
小出氏:そうではありません。
原子力というのは、ここでも聞いて頂いたように思うけれども、
核というものと基本的には同じものですので、
原子力をやりながら実際には裏で核をやっていた、という事を、
監視するという事はもちろんIAEAの役目ですけれども、
それを監視しながらも、あちこちで原子力をやらせて、
米国ほかの国が金儲けをするという、
それを担保するための組織です。
MC:ある種の、言い訳的な、国際的な気持ちが集まって、
こういう機関に繋がっているのですね。
小出氏:そうですね。
もともと原子力というのは、核と切り離せないものなので、
国際的な政治の中でもなかなかかじ取りが難しかった訳ですけれども、
IAEAという組織もふたつの顔を持ちながら、
上手くバランスが取れないか、と考えながらやって来ている訳です。
[投稿者註:「MC]はメインキャスター:水野晶子氏]
III. IAEAのウェブサイトを見てみると―
(1)IAEAのプロモーション動画:Discover the IAEA [6:05 min] 23 February 2011
国際原子力機関、IAEAは核の査察で知られていますが、それはIAEAの役割のひとつにすぎません。世界中で、IAEAは、がん治療と病気診断のための核技術の技術協力をします。核技術は農作物の収穫量を増やし、害虫を駆除し、世界中の貧困を減らします。
国際原子力機関は1957年にウイーンで設立されました。世界の平和、健康、繁栄のための原子力利用を加速し拡大する使命を帯びています。
原子の平和的利用のうち最もよく知られているのは原子力です。それは、CO2排出量が少なく、かつ安定した電源です。増え続ける人口が毎年電気需要を押し上げています。そして、原子力は世界の電気の約14パーセントを占めています。全世界で、約60の原子炉が建設中です。100を超える原子炉が来たる20年間の各国の開発計画の中に含まれています。
設立以来、IAEAは核物質が軍事目的に転用されないことを確認する任務を負っています。 「国際保障措置」と呼ばれるこの査察制度は核物質を監視するためにつくられました。IAEAの査察官が核関連施設を訪れて核物質の量と使途を確認します。
ツェツェバエにかまれると、動物ではナガナ、人間では睡眠病と呼ばれる病気に罹患します。どちらも死に至ることもあります。5千万人以上の人がこの病気にかかるおそれがあります。IAEAの科学者たちは、1990年代半ばに、ザンジバルでツェツェバエ撲滅に乗り出しました。数千匹のハエを大量飼育し、次に、オスのハエをとり出して、放射性物質からの放射線を短時間輻射して不妊化しました。一定の放射線量でハエの性殖能力を奪うことができるのです。この方法は不妊虫放飼として知られています。
数年にわたって、不妊化されたオスのハエが航空機から野性に落下されメスのハエと交尾しました。しかし、子孫はできませんでした。残ったハエは次第に死に絶えました。
ベトナムの農業試験センターはコメ農家を支援しています。コメの原種が放射線の輻射を受けると種子とイネに変化が生じます。同じ変化は自然でも長い間かかって起きるのですが、放射線が眠っている遺伝子を素早く目覚めさせるのです。数年後には、害虫や病気に強い高収穫量のコメがつくられます。
がんは、発展途上の国々で非常な勢いで増えており、毎分10人ががんで亡くなっています。放射線治療の器械が一台あれば、数千人のがん患者を治療し多くの命を救うことができます。「がん治療アクション・プログラム」を通じて、IAEAは発展途上国ががん対策プログラムを策定するのを支援します。
2005年に、核エネルギーが平和的な目的のみに使われることを確保するための努力に対して、ノーベル平和賞がIAEAのスタッフと事務局長のモハメド・エルバラダイ博士に授与されました。
IAEAは、核物質と放射性物質の安全性とセキュリティを高めるべく各国を支援しています。1979に米国のスリーマイル島で起きた炉心の一部溶融や1986年のチェルノブイリの惨事のような事故を防ぐために、原子力施設の安全基準を設定します。チェルノブイリ事故は、人間にとっての悲劇であると同時に、原子力産業全体にとって壊滅的な打撃でした。
原子力を止めるかに思われた事故は、逆説的にも、全世界を原子力の安全性の再検討に向かわせました。各国は、原子力の安全性は全世界の関心事であることを理解したのです。原子力発電への公衆の信頼を取り戻すために、国際査察団が原子力発電所を視察して安全性の再点検をし最良の実践についての情報交換をします。
原子力発電所のセキュリティはどの程度確保されているのか? 核物質を盗むために発電所に侵入できるか? セキュリティの専門家の国際チームが、いかに核物質を守るかを懸命に考えています。
(2)IAEAはウェブサイトで、自らを「The ”Atoms for Peace" Agency」と、誇らかに謳っている
http://www.iaea.org/About/about-iaea.html
The IAEA is the world's center of cooperation in the nuclear field. It was set up in 1957 as the world's "Atoms for Peace" organization within the United Nations family. The Agency works with its Member States and multiple partners worldwide to promote safe, secure and peaceful nuclear technologies.
IAEAは核の分野で世界が協働する中心になっています。IAEAは1957年に、国連ファミリー内に、世界の「平和のための原子(力)」 組織として設立されました。IAEAは、安全な平和のための核技術をひろめるために、加盟国や世界中のさまざまなパートナーと協力しています。
(3)”Atoms for Peace"とは、アイゼンハワー米国大統領が、冷戦のさなかの1953年に打ち上げた政策である。その枠組みの中での、日本への原子力の導入と日本での原子力産業の展開については、ピーター・カズニック教授の次の論考が参考になる。
(a) ピーター・カズニック 「日本原子力史とアイゼンハワー」
http://www1.odn.ne.jp/hikaku/kaku-info/one/110413.htm
Peter Kuznick, “Japan's nuclear history in perspective: Eisenhower and atoms for war and peace,” Bulletin of the Atomic Scientists (April 13, 2011)
http://www.thebulletin.org/web-edition/features/japans-nuclear-history-perspective-eisenhower-and-atoms-war-and-peace
(b)さらに、日本への原発導入における読売新聞社主・正力松太郎の役割については、
有馬哲夫著『原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史―』(新潮新書 2008年)
(c) ドキュメンタリー『原発導入のシナリオ ~冷戦下の対日原子力戦略~』
(4)IAEAは原発事故による放射線障害・がん死を過小評価する
(a) 今中 哲二(京都大学原子炉実験所助教)「チェルノブイリ原発事故の調査を通じて学んだこと」から抜粋 (pp。85-86)
http://home.hiroshima-u.ac.jp/heiwa/Pub/41/41-imanaka.pdf (2011年9月15日閲覧)
◆ガン死者数の見積もり
IAEA などで構成されるチェルノブイリフォーラムは、チェルノブイリ事故に
よるガン死者数は、約4000 人という報告を発表したが、ガン死者数の見積もり
は評価者によって20倍以上も異なっている。
表4. チェルノブイリ事故によるガン死数の見積もり
評価者 | ガン死数 | 対象集団 | 被曝1シーベルト当り ガン死確率 |
チェルノブイリフォーラム (2005) | 3940 件 | 60万人 | 0.11 |
WHO 報告(2006) | 9000 件 | 被災3 カ国740 万人 | 0.11 |
IARC 論文(2006) | 1万6000 件 | ヨーロッパ全域5.7 億人 | 0.1 |
キエフ会議報告(2006) | 3万~6万件 | 全世界 | 0.05~0.1 |
グリーンピース(2006) | 9万3000 件 | 全世界 | ― |
(b) 動画:必要な情報はすべてベラルーシにある *
* PeacePhilosophy さんから教えていただきました。ありがとうございました。
IV. 参考資料
(1)(仮訳) IAEA調査団 暫定的要旨 2011年6月1日
(2)国際原子力機関(IAEA)調査団報告書(2011年6月16日)の英語版IAEA調査団の報告書と日本語仮訳報告書(仮訳)が原子力安全・保安院サイトのこのページにあります。http://www.nisa.meti.go.jp/oshirase/2011/08/230805-5.html
(3)JNES (独立財団法人)原子力安全基盤機構 サイト
IAEA安全基準邦訳データベース http://www.jnes.go.jp/database/iaea/iaea-ss.html
(4)外務省ウェブサイトの国際原子力機関(IAEA)のページ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/atom/iaea/
(5)国際原子力機関(IAEA)東京地域事務所のページ
http://unic.or.jp/un_agency/iaea/iaea_j.html
(6)IAEA-WHO 協定 (1959 年) ― 英語-日本語対訳テキスト
http://2011shinsai.info/sites/default/files/IAEA-WHO.pdf
(7) IAEAとWHOが、談合して、チェルノブイリ被害を隠ぺいしている根拠【動画】
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65740041.html
[9月18日追加]
まるでこのサイトに反応するかのように(笑)、9月18日、毎日新聞が、NGOによるIAEA批判、IAEAへのWHOの従属的関係、そしてチェルノブイリ事故を経てその従属関係が強化されている事実を報道した。
(毎日新聞)WHO:放射線健康被害の専門部局を廃止(2011年9月18日 2時30分 更新:9月18日 6時10分)
http://mainichi.jp/select/today/news/20110918k0000m030124000c.html?inb=tw (2011年9月18日閲覧)(全文を転載。強調は投稿者)
【ジュネーブ伊藤智永】国連専門機関の世界保健機関(WHO)が、2年前に放射線の健康被害に関する専門部局を廃止し、財政難を理由に今後も復活する予定がないことがわかった。WHOトップのマーガレット・チャン事務局長が5月、WHOによる東京電力福島第1原発事故後の健康被害調査などを求めた、欧州各国の非政府組織(NGO)約40団体の連絡団体「WHOの独立のために」代表らとの面会で認めた。
◇IAEA主導権 原発推進側の兼務に批判
核による健康被害などの調査の主導権は1959年以降、WHOが国際原子力機関(IAEA)と締結した協定でIAEA側に移行されてきており、 NGO側は「IAEAは(福島事故の後)各国に原発の推進と監視の分離を求めながら、自分は両方を兼務しており、矛盾がある」などと批判、現在の国際的な 原子力監視体制の限界を指摘している。
WHOなどによると、廃止されたのは、原発の人体への影響などを担当していた本部の放射線健康局。09年、産業界との癒着が疑われた局長が退任した後、組織自体が解体された。現在は放射線被害に関する専門職員は1人しかおらず、予算削減などから部局復活の予定はないという。
WHOは、原子力の平和利用推進を目的に発足したIAEAと1959年に協定を締結。IAEAの同意なしには原発関連の健康問題について独自に活動することを制約されていった。86年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故直後の88年には、原子力事故の際にはIAEAが対応の先頭に立つことを明記するなどした新たな二つの条約をIAEAと締結。05年にも、化学・放射性物質に汚染された食品の輸出入問題でもIAEA主導が追加されている。
NGO側は、WHOの調査権限が弱いことがチェルノブイリ事故の健康被害が今も全容解明できていない理由だと批判しており、日本での健康被害調査でも、国連機関の積極的な関与は期待できないのが実態だ。
これに対し、WHO広報担当者は、IAEAとの協定について「WHOだけでなく、すべての国連専門機関は核に関する限り同様の関係にある」と事実上の従属関係にあるとの認識を示しつつ、「健康的な環境づくり部門に複数の放射線研究班がある」と強調。「チェルノブイリ事故についても下部機関の国際がん研究機関(IARC、本部・仏リヨン)や六つの地方事務所で研究を続けている」と語り、調査体制は維持しているとした。
WHOはチェルノブイリ事故被害について05年、事故後20年間の調査結果として「死者56人、将来の推定がん死者数約4000人」と発表。これに対し、NGOなどは「実態と比べて少なすぎる」と批判。WHO側もそれは認めながら、今のところ全容解明に向けた再調査の予定はないとしている。これについてNGO側は「原子力利用推進のIAEAに配慮せざるをえないからだ」と指摘している。
<WHOとIAEA> WHOは、国連と連携協定を結んでいる「専門機関」の一つ。IAEAは、国連と連携協定を結ばず、組織上は独立しているが、総会や安全保障理事会に報告を行う「関連機関」。両機関に組織・権限の上下関係はない。
◇WHOとIAEAの取り決め一覧
<1959年協定>
・第1条2項「WHOは、世界中の原子力の平和利用のための研究・発展・利用についてはIAEAが行うことを基本的に認める」
・第7条「IAEAとWHOは、それぞれの活動において無用の重複を避ける」
・第12条1項「両機関はそれぞれ協定の修正を提起できる」
<1986年「原子力事故早期通報・援助2条約」(WHOは88年に批准)>
・原子力事故が起きた時は、IAEAが国際的な対応の先頭に立ち、他の国際機関は、当該政府の要望や受け入れ表明があった時にのみこれを支援する
<2005年「国際保健規則」改定>
・元々は感染症対策を想定した危機管理規則。化学・放射性物質などで汚染された商品の輸出入などの問題にも適用
・第6条「通報があった問題がIAEAに関連する分野だった場合は、直ちにIAEAに報告する」
◇IAEA主導権 原発推進側の兼務に批判
核による健康被害などの調査の主導権は1959年以降、WHOが国際原子力機関(IAEA)と締結した協定でIAEA側に移行されてきており、 NGO側は「IAEAは(福島事故の後)各国に原発の推進と監視の分離を求めながら、自分は両方を兼務しており、矛盾がある」などと批判、現在の国際的な 原子力監視体制の限界を指摘している。
WHOなどによると、廃止されたのは、原発の人体への影響などを担当していた本部の放射線健康局。09年、産業界との癒着が疑われた局長が退任した後、組織自体が解体された。現在は放射線被害に関する専門職員は1人しかおらず、予算削減などから部局復活の予定はないという。
WHOは、原子力の平和利用推進を目的に発足したIAEAと1959年に協定を締結。IAEAの同意なしには原発関連の健康問題について独自に活動することを制約されていった。86年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故直後の88年には、原子力事故の際にはIAEAが対応の先頭に立つことを明記するなどした新たな二つの条約をIAEAと締結。05年にも、化学・放射性物質に汚染された食品の輸出入問題でもIAEA主導が追加されている。
NGO側は、WHOの調査権限が弱いことがチェルノブイリ事故の健康被害が今も全容解明できていない理由だと批判しており、日本での健康被害調査でも、国連機関の積極的な関与は期待できないのが実態だ。
これに対し、WHO広報担当者は、IAEAとの協定について「WHOだけでなく、すべての国連専門機関は核に関する限り同様の関係にある」と事実上の従属関係にあるとの認識を示しつつ、「健康的な環境づくり部門に複数の放射線研究班がある」と強調。「チェルノブイリ事故についても下部機関の国際がん研究機関(IARC、本部・仏リヨン)や六つの地方事務所で研究を続けている」と語り、調査体制は維持しているとした。
WHOはチェルノブイリ事故被害について05年、事故後20年間の調査結果として「死者56人、将来の推定がん死者数約4000人」と発表。これに対し、NGOなどは「実態と比べて少なすぎる」と批判。WHO側もそれは認めながら、今のところ全容解明に向けた再調査の予定はないとしている。これについてNGO側は「原子力利用推進のIAEAに配慮せざるをえないからだ」と指摘している。
<WHOとIAEA> WHOは、国連と連携協定を結んでいる「専門機関」の一つ。IAEAは、国連と連携協定を結ばず、組織上は独立しているが、総会や安全保障理事会に報告を行う「関連機関」。両機関に組織・権限の上下関係はない。
◇WHOとIAEAの取り決め一覧
<1959年協定>
・第1条2項「WHOは、世界中の原子力の平和利用のための研究・発展・利用についてはIAEAが行うことを基本的に認める」
・第7条「IAEAとWHOは、それぞれの活動において無用の重複を避ける」
・第12条1項「両機関はそれぞれ協定の修正を提起できる」
<1986年「原子力事故早期通報・援助2条約」(WHOは88年に批准)>
・原子力事故が起きた時は、IAEAが国際的な対応の先頭に立ち、他の国際機関は、当該政府の要望や受け入れ表明があった時にのみこれを支援する
<2005年「国際保健規則」改定>
・元々は感染症対策を想定した危機管理規則。化学・放射性物質などで汚染された商品の輸出入などの問題にも適用
・第6条「通報があった問題がIAEAに関連する分野だった場合は、直ちにIAEAに報告する」
[記事全文転載おわり]
[参考資料]
(1)原子力事故の早期通報に関する条約(1986年9月26日ウィーンにて採択、1987年10月23日発効)http://www.jaxa.jp/library/space_law/chapter_3/3-2-2-4_j.html |
Convention on Early Notification of a Nuclear Accident http://www.iaea.org/Publications/Documents/Conventions/cenna.html (2011年9月18日閲覧)
(2) 国際保健規則(2005)(仮訳)
(2011年9月18日閲覧)(第六条を転載。太字は投稿者)第六条 通告
1. 各参加国は、附録第二の決定手続に従って、自国領域内で発生した事象を評価しなければならない。各参加国は、公衆の保健上の情報を評価した後二十四時間以内に、決定手続に従い自国領域内で発生した国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態を構成するおそれのあるすべての事象及びそれら事象に対して実施される一切の保健上の措置を、国内IHR連絡窓口を通じて、利用できる最も効率的な伝達手段により、世界保健機関に通告しなければならない。世界保健機関が受けた通告に国際原子力機関(IAEA)の権限事項が含まれる場合には、世界保健機関は直ちにそれを国際原子力機関に通告するものとする。
2. 通告後、参加国は引き続き、可能な限り、通告した事象に関して入手しうる正確且つ十分詳細な公衆の保健上の情報(症例の定義、実験室結果、危険の源泉並びに種類、症例並びに死者の数、疾病の拡大に関する状況、及び採用された保健上の措置を含む)を適宜世界保健機関に伝達するとともに、必要な場合には潜在的な国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態に対応するに際して直面した困難並びに必要な支援を報告しなければならない。
(2011年9月18日閲覧)
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(時事)初の原発建設、今年5カ国=IAEA次長(2012/02/25-08:06) http://www.jiji.com/jc/zc?k=201202/2012022500086 (2012年3月1日閲覧)(全文転載)(太字は投稿者)
2012年3月1日投稿
(時事)初の原発建設、今年5カ国=IAEA次長(2012/02/25-08:06) http://www.jiji.com/jc/zc?k=201202/2012022500086 (2012年3月1日閲覧)(全文転載)(太字は投稿者)
【ニューヨーク時事】国際原子力機関(IAEA)のアニング事務次長は24日、ニューヨーク市内で講演し、ベトナムやトルコなど少なくとも5カ国が今年、初めて原子力発電所の建設に着手する見通しだと明らかにした。来年にはヨルダンとサウジアラビアがこれに続く可能性があるという。AFP通信が報じ た。
同事務次長は、原発の利用を始めようとしている国は「福島で起きたことから教訓を得ようとしている」と指摘。IAEAは施設の安全性や原子炉の建設場所の選定について各国と綿密にやりとりしていると述べた。(2012/02/25-08:06)
(転載終わり)
投稿者注: 時事の上記記事では、「ベトナムやトルコなど少なくとも5カ国」とし、他の3カ国の名前は書いていない。なぜこのような不完全な報道をするのだろうか? 「AFP通信が報じた」とあるから、AFPの元記事にも2カ国名しかなかったのかもしれないが、いやしくも通信社なら、自ら調べて5カ国全部の名前を報道すべきではないだろうか?
現に、その情報は簡単に得られる。Enformableウェブサイトによると、その5カ国とは、ベトナム、トルコ、バングラデシュ、アラブ首長国連邦、べラルースである。
(Enformable)IAEA – Vietnam and 4 other countries to incorporate nuclear energy after Fukushima(February 24, 2012)http://enformable.com/2012/02/iaea-vietnam-and-4-other-countries-to-incorporate-nuclear-energy-after-fukushima/ (2012年3月1日閲覧)(一部抜粋)(太字は投稿者)
‘We expect that this year Vietnam, Bangladesh, United Arab Emirates, Turkey and Belarus will start building their first nuclear power plants,’ Mr Kwaku Aning, deputy director general of the International Atomic Energy Agency (IAEA), told a forum in New York, adding that Jordan and Saudi Arabia could follow in 2013.
(抜粋終わり)
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(時事ドットコム)原発の信頼回復目指す=各国関係者招き年次大会-原子力産業協会(2012/04/18-13:18)http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2012041800329(2012年4月18日閲覧)(全文転載)(太字は投稿者)
(転載終わり)
(日経新聞)原産年次大会が開幕 会長「原発の信頼回復目指す」 (2012/4/18 11:45) (2012年4月18日閲覧)(全文転載)(太字は投稿者)
同事務次長は、原発の利用を始めようとしている国は「福島で起きたことから教訓を得ようとしている」と指摘。IAEAは施設の安全性や原子炉の建設場所の選定について各国と綿密にやりとりしていると述べた。(2012/02/25-08:06)
(転載終わり)
投稿者注: 時事の上記記事では、「ベトナムやトルコなど少なくとも5カ国」とし、他の3カ国の名前は書いていない。なぜこのような不完全な報道をするのだろうか? 「AFP通信が報じた」とあるから、AFPの元記事にも2カ国名しかなかったのかもしれないが、いやしくも通信社なら、自ら調べて5カ国全部の名前を報道すべきではないだろうか?
現に、その情報は簡単に得られる。Enformableウェブサイトによると、その5カ国とは、ベトナム、トルコ、バングラデシュ、アラブ首長国連邦、べラルースである。
(Enformable)IAEA – Vietnam and 4 other countries to incorporate nuclear energy after Fukushima(February 24, 2012)http://enformable.com/2012/02/iaea-vietnam-and-4-other-countries-to-incorporate-nuclear-energy-after-fukushima/ (2012年3月1日閲覧)(一部抜粋)(太字は投稿者)
‘We expect that this year Vietnam, Bangladesh, United Arab Emirates, Turkey and Belarus will start building their first nuclear power plants,’ Mr Kwaku Aning, deputy director general of the International Atomic Energy Agency (IAEA), told a forum in New York, adding that Jordan and Saudi Arabia could follow in 2013.
(抜粋終わり)
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2012年4月18日投稿
(時事ドットコム)原発の信頼回復目指す=各国関係者招き年次大会-原子力産業協会(2012/04/18-13:18)http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2012041800329(2012年4月18日閲覧)(全文転載)(太字は投稿者)
原子力関連企業などで構成する日本原子力産業協会(会長・今井敬新日本製鉄名誉会長)の年次大会が18日、都内で開幕した。東京電力福島第1原発事故で失墜した原発の信頼回復を目指し、世界各国の政府、企業関係者らが参加。細野豪志原発事故担当相は講演で、廃炉や除染に向け「世界の英知の結集」を訴えるとともに、安全性向上への不断の努力を事業者に求めた。
大会ではこのほか、東電の相沢 善吾副社長が事故の経緯や収束に向けた取り組み、安全対策などを説明。国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長もビデオメッセージで、「世界の原子力利用は今後も拡大する。最高水準の安全性確保と国民への情報提供が重要だ」と指摘した。(2012/04/18-13:18)
大会ではこのほか、東電の相沢 善吾副社長が事故の経緯や収束に向けた取り組み、安全対策などを説明。国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長もビデオメッセージで、「世界の原子力利用は今後も拡大する。最高水準の安全性確保と国民への情報提供が重要だ」と指摘した。(2012/04/18-13:18)
(転載終わり)
(日経新聞)原産年次大会が開幕 会長「原発の信頼回復目指す」 (2012/4/18 11:45) (2012年4月18日閲覧)(全文転載)(太字は投稿者)
日本原子力産業協会は18日、世界の原子力産業や政策関係者を招き、第45回原産年次大会を都内で開いた。テーマは「再生への道筋を問う」。東京電力福島第1原子力発電所事故を踏まえた原発の安全性や今後のエネルギー政策について議論する。開催は19日まで。
冒頭の所信表明で今井敬原産協会会長は「事故の教訓を生かした安全性の向上を最優先に、透明性を一層向上させ、失った信頼を回復するのが大前提」としたうえで、「原発は引き続き、一定の役割を担う重要なエネルギー源」と強調した。
原産協会は毎春年次大会を開いているが、昨年は東日本大震災と福島第1原発事故で中止に追い込まれた。
19日は世界原子力発電事業者協会や仏原子力大手アレバ社の代表らによる講演がある。
(転載終わり)
(転載終わり)
【関連リンク】
一般社団法人 日本原子力産業協会(JAIF) HP http://www.jaif.or.jp/
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