(週間 上杉隆 【第193回】 2011年9月22日)今なお続く大手メディアの“不誠実”な報道に対する不信から一部を抜粋。
http://diamond.jp/articles/-/14114 (2011年9月24日閲覧。太字は投稿者)
(抜粋はじめ)
一見何の変哲もないベタ記事の”不誠実”な点とは
〈韓国、福島を除く被災3県への渡航制限を解除
【ソウル=中川孝之】韓国外交通商省は20日、東日本大震災で、福島、宮城、岩手、茨城の4県に出していた渡航制限について、21日から、福島県を除きすべて解除すると発表した。
同省は、福島を除く3県は、余震が減り福島第一原発事故の影響もほとんどない、と解除理由を説明している〉(2011年9月20日22時32分 読売新聞)
この小さな記事がなぜ不誠実なのか。それは、最初の前提となる情報が欠落しているからだ。
最初の情報というのは、〈日本への渡航制限が行われていた〉というニュースを指す。事故発生当初の3月、韓国政府が東北4県に渡航制限を出していたというニュースを記憶している読者はほとんどいないだろう。それも当然だ。実際、海外政府による日本への渡航制限、渡航禁止、あるいは当初は避難勧告、 避難命令を、曖昧か、あるいはほとんど報じてこなかったからだ。
その結果、原発事故を起こした日本が、海外からどのように見られているかもわからないことになった。だが、情報を売っている新聞記者や放送記者がまさか、知らなかったとは言わせない。
こんなにあった! 海外政府による日本からの退避勧告
【3月23日現在、原発事故への各国政府の対応。
▽米国
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告チャーター機で約100人が台湾へ退避
外交官らの家族約600人に退避許可
軍人の家族2万人の国外退去を支援
▽英国
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告
チャーター機を香港まで運航
▽フランス
出国または東京以南への移動求める
政府機で241人がソウルへ退避
エールフランスに増便を指示
▽イタリア
出国または東京とその以北からの退避勧告
特別航空便の運航を検討
▽スイス
被災地と東京・横浜からの一時退避勧告
チャーター機の運航を検討
▽オーストリア
出国または東京・横浜からの退避勧告
▽スペイン
福島第一原発から120キロ圏外への退避勧告
チャーター機を運航
▽ロシア
輸送機を派遣
▽ベルギー
軍用機を派遣
▽チェコ
軍用機で106人が帰国
▽クロアチア
出国または南部への退避勧告
▽オーストラリア
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告
▽ニュージーランド
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告
▽韓国
福島第一原発から80キロ圏外への退避勧告
▽シンガポール
福島第一原発から100キロ圏外への退避勧告
▽フィンランド
東京とその以北からの退避勧告
▽セルビア
出国を勧告
▽イスラエル
東京周辺から西日本などへの退避勧告
▽ドイツ
出国または東京・横浜からの退避勧告
▽台湾
高齢者、子供、女性に出国検討求める】
諸外国の動きを報じただけで「デマ扱い」
これは、3月の原発事故発生直後、筆者が自らのメルマガで配信した世界各国の避難勧告の様子である。
日付は3月23日現在とあるが、実際は3月15日にはほとんどの国がこうした勧告を出していたのである。
ところが、当時の日本では、世界のこうした動きを報じるだけで「デマ扱い」され、非難の集中砲火を浴びたものだ。その理由はなんといっても、同時期の日本政府の次の発表によるところが大きい。
【▼日本
福島第一原発から20キロ圏外への退避勧告
20~30キロは屋内待避】
そしてまた、記者クラブメディアがこの「安心デマ」「安全デマ」を盛んに報じたものだから、多くの読者や視聴者が真相を知らされないまま、被曝してしまったのである。
筆者が繰り返し言及してきた「犯罪行為」とはこのことだ。
大手メデイアはなぜ報じない? 情報次第で賠償請求に変化も
さらに大きな問題は今なお、こうした事実が公表されず、どのメディアも報じないことにある。
その結果、きょうの読売新聞がこっそり報じたニュースのように、読者にしてみれば「おや、そんなことになっていたのか」という記事が繰り返し載ることになるのである。
(一部抜粋終わり)
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