東京電力福島第1原発事故の発生直後、政府や福島県は緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム
(SPEEDI)による拡散予測の情報を提供しなかった。そのため、浪江町民は知らずに放射線量の高いところへと避難し、原発から北西へ約40キロ離れているが風向きのせいで高放射線量になった飯舘村では、その事実を知らされず、4月になるまで全村避難は行われなかった。だが、放射線拡散の実態が明らかになり、SPEEDIの予測がかなり正確だったことがわかるにつれ、これらの人たちがしなくてもいい被曝をさせられたことが明白となり、SPEEDIのデータを出さなかった政府や県に対する批判が高まった。(その一方で、政府は、 米軍にはいち早くデータを提供していた 。)
この問題について、福島県は昨年5月、「SPEEDIのデータは3月13日に経済産業省原子力安全・保安院からファクスで受け取ったのが最初で、メールは同月15日に受信した」
と県議会で答弁していた。直後に政府が「3月12日深夜に県災害対策本部に送信した」と国会で答弁し、今年3月には県のデータ消去が明らかになった。
昨年5月時点で県と国の見解が異なっていたにもかかわらず、県は今年3月まで詳細な調査に着手しなかった。
4月20日に福島県が発表した調査結果 によると、県災害対策本部は昨年3月12日深夜~16日朝、計86通のメールデータを受信した。このうち21通がUSBメモリーや印刷物で保管されたが、残り65通は消去された。 消去の原因について(1)データの取り扱いマニュアルがなかった(2)事故直後で指揮命令系統が混乱した(3)他のメールの受信容量を確保しようとした-ことを挙げている。
東京電力福島第1原発事故の発生直後、国や県が緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム
(SPEEDI)による拡散予測の情報を的確に提供しなかった問題で、誤った判断で避難に混乱を生じさせ多くの町民が被ばくしたとして、浪江町が国と県を刑事告発する方向で検討していることが11日、分かった。馬場有町長は「被ばくによる将来の健康被害の不安を考えれば、今の段階で国と県の責任を明確にす
る必要がある」としている。
町によると、法律の専門家の助言を受け5月以降に結論を出す方針。罪名は「業務上過失致傷など」(町幹部)を検討。馬場町長は「現時点でも国や県は加害者意識が欠落している」と厳しく批判している。
(2012年4月12日 福島民友ニュース)
(転載終わり)
馬場有町長=田辺佑介撮影
東京電力福島第1原発事故で「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI)のデータなどを開示
しなかったため、適切な避難指示を町民に出せず79人の災害関連死を招いたとして、福島県浪江町の馬場有町長が業務上過失致死容疑で国担当者の告発を検討
していることが分かった。
SPEEDIデータを消去した県側も告発対象とすることを含め支援の弁護士らと検討しており、5月中旬までに告発内容を決める方針。馬場町長は「当時の実態や責任の所在を公正な場で明らかにしなければ教訓にならない」と語った。
町役場や町民は事故直後の11年3月12日、原発の北西約30キロの同町津島地区へ、15日にはさらに遠くへ避難。情報過疎のため指示は混乱し、15回近く避難を繰り返した町民もいる。馬場町長は、その負担が関連死の一因だと主張している。
国・県からは▽放射性物質の拡散予測▽地上で実測した放射線量▽事故状況−−の連絡がなく、SPEEDIデータは3月下旬、線量は4月上旬に伝えられた。津島地区が町内でも特に高線量だと初めて分かったという。【泉谷由梨子】
(転載終わり)
(河北新報) SPEEDI 県、データ消去謝罪 伝達・共有態勢に不備 (2012年04月21日)
http://www.kahoku.co.jp/news/2012/04/20120421t61011.htm (2012年4月25日閲覧)(全文転載)(太字強調は投稿者による)
記者会見で謝罪する荒竹部長(中央)ら=20日午後、福島県庁
福島第1原発事故直後に原子力安全技術センターからメール送信された緊急時迅速
放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)のデータを福島県が消去した問題で、県は20日、データの伝達、共有態勢に不備があり、事実経過の確認も怠ったとする調査結果を公表し、謝罪した。関係職員の処分を検討している。
調査結果によると、県災害対策本部は昨年3月12日深夜~16日朝、計86通のメールデータを受信した。このうち21通がUSBメモリーや印刷物で保管されたが、残り65通は消去された。
消去の原因について(1)データの取り扱いマニュアルがなかった(2)事故直後で指揮命令系統が混乱した(3)他のメールの受信容量を確保しようとした-ことを挙げている。
県は昨年5月、「SPEEDIのデータは3月13日に経済産業省原子力安全・保安院からファクスで受け取ったのが最初で、メールは同月15日に受信した」
と県議会で答弁した 。直後に国が「3月12日深夜に県災害対策本部に送信した」と国会で答弁し、ことし3月には県のデータ消去が明らかになった。
昨年5月時点で県と国の見解が異なっていたにもかかわらず、県はことし3月まで詳細な調査に着手しなかった。
荒竹宏之県生活環境部長は記者会見し、「県民の不信と疑念を増幅した」と陳謝。データの消去や非公表が住民避難の遅れにつながったかどうかについては「国会や政府の事故調査委員会の検証結果が出るまで断言できない」と述べた。
(転載終わり)
東京電力福島第一原発からの放射性物質の拡散を予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の試算結果が、地元自治体
に伝わらなかった問題で、福島県は二十日「指揮命令系統が混乱し、組織内で適切な情報共有ができなかった。電子メールの受信容量を確保するためデータを削
除した」との検証結果を明らかにした。県はこの日、事故で全町避難した同県浪江町に謝罪、結果を報告した。
県によると、試算は昨年三月十二日午後十一時五十四分から同十六日午前九時四十五分までにメール八十六通を原子力安全技術センター(東京)から受信。USBメモリーなどで保管していたのは二十一通で、残り六十五通はデータを消去していた。
原因は(1)県災害対策本部でメールの取り扱いが明確に定められていなかった(2)情報共有が徹底されていなかった(3)メールの受信容量を確保するため情報を削除した-としている。
同県二本松市にある浪江町役場の移転先を訪問した荒竹宏之県生活環境部長は「データの管理がずさんで、これまで詳細な調査を怠ったことはおわびを
するほかない」と陳謝。馬場有浪江町長は「われわれの命をどう思っているのか。とんでもない危機管理の欠如だ」と怒りをあらわにした。
SPEEDIをめぐっては、浪江町が「試算結果が伝わらなかったことで無用の被ばくをした」として、国や県に対する告発を検討している。
(転載終わり)
【動画】(NHK)浪江町長 国会事故調で政府を批判 (4月21日 18時42分)http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120421/k10014618501000.html (2012年4月25日閲覧)(全文転載)
原発事故の影響で町全域が避難区域に指定されている福島県浪江町の馬場有町長は、福島県で開かれた国会の原発事故調査委員会に参考人として出席し、原発事故による避難指示について、政府から連絡がなくテレビで知ったとして、政府の対応を批判しました。
国会の原発事故調査委員会は、21日、町の全域が避難区域に指定されている福島県浪江町が役場ごと避難している福島県二本松市で委員会を開きました。
こ
の中で、参考人として出席した浪江町の馬場有町長は「震災翌日の早朝、原発から10キロ圏内に避難指示が出ていることをテレビで知った。私どもには連絡が
何もなく、原発でまさかあのような大きな事故が起きていることは、想像だにしなかった」と述べ、政府の対応を批判しました。
また、馬場町長は「町と東京電力、福島県の3者で協定を結んでいて、何かあったら必ず連絡することになっている。これまでは、工具を落としただけでも連絡が来たのに、肝心なときに一切連絡が無かったのは非常に残念だし、協定違反だ」と述べました。
このほか、馬場町長は、放射性物質の拡散を予測する「SPEEDI」と呼ばれるシステムの予測データが、事故後直ちに公表されず、結果的に多くの町民が放射線量が高い方向に避難したことについて、「公開して連絡してもらえば、別の避難の方法もあった」と述べました。
(転載終わり)
(東京新聞)「東電と福島県 連絡協定違反」 浪江町、国会事故調に (2012年4月22日 朝刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012042202000090.html (2012年4月25日閲覧)(全文転載)
国会の東京電力福島第一原発事故調査委員会(黒川清委員長)は二十一日、福島県二本松市で会合を開き、同市に集団避難している浪江町の馬場有町長らから、事故当初の状況や事故調べの要望について聞き取りした。
馬場町長は昨年三月十一日の事故発生後、翌十二日早朝にテレビで十キロ圏内の屋内退避指示を知るまで、原発の深刻な状況を把握できなかったと説
明。東京電力、県、町の三者が原発のトラブルに備えて通信連絡協定を結んでいたにもかかわらず、東電と県からは一切情報が来なかったことを明らかにした。
その上で「歩いてでも報告に来るべきだ。協定違反だ」と指摘。経緯を徹底調査するよう求めた。
緊急時に放射性物質の拡散を予測するシステムSPEEDI(スピーディ)のデータ公表の遅れも批判。「連絡していただければ、別の避難の方法もあった」と述べ、原因の究明を求めた。
避難している町民約百八十人との意見交換会も開催。被ばくによる健康被害を心配する声や、政府が進める大飯(おおい)原発(福井県おおい町)3、4号機の再稼働について「国民の命をないがしろにしている」と批判する意見が相次いだ。
二十二日は会津若松市で大熊町関係者からの聞き取りや、町民との意見交換会を行う。
(転載終わり)
【一次資料】
(福島県HP)原子力安全対策課 「 福島第一原子力発電所事故発生当初の電子メールによるSPEEDI試算結果の取扱い状況の確認結果について」 のページ http://www.pref.fukushima.jp/nuclear/info/120420.html (2012年4月25日閲覧)
【動画】(国会事故調チャンネル) 国会事故調 第10回委員会 2012/04/21
http://www.ustream.tv/recorded/22003041 (2012年4月25日閲覧)
【関連報道】
(河北新報)神話の果てに 東北から問う原子力
第2部・迷走(2)放置/拡散予測データ、埋没 (2012年04月20日)
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20120420_01.htm (2012年4月25日閲覧)(全文転載)
原子力安全・保安院の依頼で昨年3月16日朝に計算されたSPEEDIの図。放射性ヨウ素が福島第1原発の北西に拡散しているとの予測だった
<活用されて当然>
「予測を参考に、住民避難などの対応が取られているだろう」
昨年3月16日夜の原子力安全委員会(東京)。日本原子力研究開発機構・原子力基礎工学部門(茨城県東海村)の茅野政道部門長は、開発に携わった緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)が作動しているのを確認し、胸をなで下ろした。
SPEEDIを管理する原子力安全技術センター(東京)は昨年3月11日夕、放射性物質の拡散方向などの計算を開始。結果を文部科学省や経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委員会、福島県などに送っていた。住民の避難や被ばく対策に活用されて当然だった。
ところが、政府の事故調査・検証委員会の中間報告によると、翌12日時点で、保安院は「信頼性が低い」と記載した上で計算結果を官邸に送付。官邸職員は参
考情報にすぎないと考え、当時の菅直人首相に伝えなかった。文科省や県からも活用を訴える声は上がらず、データは放置された。
原子炉の状況が把握できない中、センターは放出される放射性物質の量を仮定し、拡散方向を予測した。結果の信頼性は確かに高いとはいえないが、住民が避難する方向を選ぶ上で大切な情報だった。
<収まらない憤り>
第1原発の北西約30キロの福島県飯舘村長泥地区。農業佐藤明康さん(70)方の放射線量は3月下旬、村による測定で、屋内10マイクロシーベルト、屋外15マイクロシーベルトという高い値を示した。
佐藤さんは事故後、しばらく自宅にいて、普段通り農作業をした。15日は雨にもぬれた。いつものように井戸水を飲み、炊事にも使った。原発事故の報道に、村が危ないという情報はなかった。
2号機の原子炉格納容器下にある圧力抑制室が損傷した15日以降、SPEEDIは何度か、放射性物質が北西方向に拡散すると予測した。保安院の依頼による16日朝の計算でも浪江町津島地区や葛尾、飯舘両村で、地表に多くのヨウ素が蓄積しているとの結果が出ていた。
「(原発から)これだけ離れていれば大丈夫だと思ったが、実はとんでもない状況で暮らしていた」と佐藤さん。速やかに情報公開しなかった政府に憤りが収まらない。
「われわれをばかにしている」
<必要情報出さず>
長年、SPEEDIの開発、改良に取り組んできた茅野部門長は「緊急時には、SPEEDIの予測と放射線量の実測値など、さまざまな情報を総合して判断する必要がある」と強調する。
原発周辺でモニタリングに当たった福島県の担当者は「原発の北や北西で線量が上がり始めていることは、12日の段階で確認し、政府の現地対策本部にも逐一報告していた」と証言する。このモニタリング結果も当時、危険な地域の予測に生かされることはなかった。
住民がその時々に必要としていた情報を開示してこなかった国の事故対応。政府の事故調査・検証委員会は中間報告で、その根底にある問題点を指摘している。
「住民の命と尊厳を重視する立場で、データ公表の重要性を考える意識が薄かった」
(転載終わり)
前回に引き続き、福島県庁に災害対策本部を訪ねた取材の結果(2012年1月上旬)を報告する。
取材に応えた担当者は、名刺を交換したうえで、災害対策本部の話として書いてもいいが、個人名は伏せてほしいと私に依頼した。県庁職員の氏名にニュース価値はないので、それに沿う。
質問は主に2点である。
(1)地元で行われていた原子力災害を想定した避難訓練の内容。
(2)原発事故が起きた場合の放射性物質の流れを予測し、住民を避難させるためのシステム「SPEEDI」は生きていたのか。その情報を福島県庁はどう扱ったのか。避難に役立ったのか。
―
つづきを読む 。
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2012年5月16日投稿
(週間金曜日) SPEEDIのデータ削除調査――福島県の説明は支離滅裂 (2012年4月27日号)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120515-00000302-kinyobi-soci (2012年5月16日閲覧)(全文転載)
福島県は四月二〇日、福島第一原発事故直後にSPEEDI(放射性物質の拡散予測システム)のデータを受け取りながら、県民に公開せず、削除していたことについて調査結果を発表した。
県はこれまで、昨年三月一三日以降は原子力安全・保安院から県災害対策本部宛てにファクシミリで、一五日以降は(財)原子力安全技術センターから県災害
対策本部宛てにメールでデータを受信していたと説明。しかし国は一一日二三時四九分から県原子力センターに、一二日二三時五四分から県災害対策本部にデー
タをメールで送信したとし、見解が違っていた。
しかし調査により、県は県災害対策本部で一二日二三時五四分から一六日九時四五分までに八六通をメールで受信し、二一通を除き、六五通は組織で共有せず
に「消失」したと見解を変えた。その原因は「防災対策本部が防護対策の検討に活用するものではないことから、取り扱いについて定められていなかった」から
だと言う。
支離滅裂な理由だが、筆者はこの件を本誌昨年七月二二日号で報じている。当時、県原子力災害対策担当者らは三月一一日深夜から未明にかけてデータをメー
ルで受け取りながら、担当者がメールが大量であることを理由に削除し、責任者が「とても避難の予測には使えない。公表しても誤解を招く」と考えたと述べて
いた。
四月二二日に同県で開催された国会事故調査委員会で、田中耕一委員が「きわどい状況になったときに住民がパニックになるだろうと、上に立つ者が大切な情
報を隠してしまう」エリートパニックについて指摘していた。福島県でもそれが起きていたのではないか。緊急時に誰も適切に判断できなかったためにどのよう
な結果をもたらし、県民が無用な被曝をさせられたのか。教訓として残さなければ、ミスは再び繰り返される。
(まさのあつこ・ジャーナリスト、4月27日号)
(転載終わり)