Friday, January 27, 2012

III.7. 事故のデータを国内では隠し、先に米国に提供

2012年3月11日投稿

近藤駿介・原子力委員会委員長が昨年3月25日に作成し、政府が今年1月まで開示しなかった「最悪シナリオ」を、米国は即時に入手していたと、3月10日、中国新聞などが報じた。

(中国新聞)米、日本の対処能力疑う 4号機爆発、作業員退避で (2012年3月11日) http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201203100183.html (2012年3月11日閲覧)(全文転載)(太字は投稿者)

 東京電力福島第1原発事故でオバマ米政権が、昨年3月15日に4号機の水素爆発で作業員の大半が退避した時点で、日本の対処能力を疑い、対日支援リスト提示や米軍特殊専門部隊投入など本格支援に踏み切ったことが10日、分かった。

米側が、東京に放射性物質が飛散する最悪事態を独自に予測、日本が3月25日に作成した最悪シナリオを即座に入手していたことも判明した。複数の米政府高官が共同通信に語った。

日本政府は最悪シナリオを国民に知らせず封印し、今年1月まで開示しなかった。同盟関係にあるとはいえ、米側と即刻共有していたことは危機時の情報管理として論議を呼びそうだ。

米高官によると、3月15日朝の水素爆発について米政府の専門家は4号機の使用済み燃料プールが干上がり、水素が大量発生したと推測。米軍無人偵察機が探知した温度上昇がこの見方を強めた。

さらに東電が同日、約650人いた作業員の約9割を退避させたため「いずれ作業を放棄するのではないか」との疑念が米政府内で浮上した。

これを受け、米核研究機関のローレンス・リバモア国立研究所(カリフォルニア州)は燃料プールが全て干上がる「最悪の事態」を検討。放射性物質が首都圏にも拡散する試算が2日程度でまとまり、大統領に報告された。日本側へは示されなかった。事態がチェルノブイリ事故より悪化すると恐れる専門家もい た。

ある米高官は「爆発と退避がワシントンに大きな変化をもたらした。日本の事故対処能力に対する信頼が失われた。事態が制御不能になっていくように見え、東電も現場を放棄しだした。仰天した」と言明した。

米側はその後、注水用の資機材を提供し、特殊専門部隊「CBIRF(シーバーフ)」を日本に派遣同部隊は米本土での核テロ対処などが使命で、二つの部隊の一つを初めて海外展開した

ホワイトハウスでは連日、大統領への特別報告が行われ、国家安全保障会議(NSC)の会合も開催。国務、国防など各省の担当者40人以上が出席することもあり、オバマ政権下では「過去にない規模に膨れ上がった」(同高官)という。
(転載終わり)

【関連資料】 
近藤駿介「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描」(平成23年3月25日) http://www.asahi-net.or.jp/~pn8r-fjsk/saiakusinario.pdf (2012年3月11日閲覧)

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 2012年2月17日投稿

(琉球新報)【社説】線量マップ 命に関わる情報隠しだ(2012年2月13日) http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-187385-storytopic-11.html (2012年2月17日閲覧)(全文転載)

この国の政府はまるで属国のようだと思っていたら、官僚だけでなく民間までが、国民よりも米国に忠誠を誓っているかのようだ。
 東京電力が、福島第1原発敷地内の放射線量マップを、公開の1カ月以上前に米原子力規制委員会に提供していたことが分かった。
 国民に知らせる1カ月前というだけでなく、政府に報告するよりも1日早かった。東京電力は国民よりも、政府よりも米国に顔を向けている。そう批判されても反論できまい。
 原発事故のデータでは、文部科学省の緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の試算データも問題となった。文科省は事故の12日後にようやく一部を公表したが、米軍には3日後に提供していた。
 気象庁も事故直後から国際原子力機関(IAEA)に放射性物質拡散予測データを逐次報告していたが、国民に知らせたのは事故の25日後だった。
 これらの結果、放射線量の高い地域に避難してしまった住民は「無用の被ばく」にさらされた。命に関わる情報隠しだ。しかも誰一人責任を取っていない。そうした体質が政府だけでなく、電力会社にも潜んでいたのだから、国民は何を信じればいいのだろう。
 電力会社は地域独占で、会社がどんな体質であろうと国民は選択できない。だからこそ責任を明確化しないと国民は納得できない。
 事故対応で国民を裏切り続けている東京電力は解体すべきではないか。原子力関連の意思決定に関与した幹部を一掃した上で、電力供給に特化した新会社として一から出直してもらいたい。
 その上で、やはり発送電分離をすべきだ。電力会社が送電網を握っていたら、自社以外の発電会社に不利な条件をいくらでも構築でき、新規参入を阻むことができる。
 国民が電力会社を選択できる仕組みにしない限り、国民より米国を重視する体質を変えることはできないだろう。
 電力会社は安定供給のため、と発送電分離に反対するが、分離がほぼ完全に成し遂げられた欧州で供給不安は起きておらず、説得力を欠く。
 経済産業省の電力システム改革専門委が発足したが、発送電分離を検討する姿勢を示している。脱原発も含め、国民の望みに合致した体質に脱皮させるよう、抜本的な改革を提起してほしい。
(転載終わり)
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例2) 東電、原発線量マップまず米側へ 公表の1カ月以上前 ―2012年2月14日投稿―

(共同通信) 東電、原発線量マップまず米側へ 公表の1カ月以上前 (2012/02/12 02:55) http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012021101001897.html(2012年2月14日閲覧)
 

 東京電力が米原子力規制委員会に提供した福島第1原発のサーベイマップの一つ(NRC公表資料から)


東京電力が昨年4月下旬に発表した福島第1原発敷地内の放射線量マップ(サーベイマップ)は、公開の1カ月以上 前に東電から米原子力規制委員会(NRC)に提供されていたことが11日、分かった。東電によると、サーベイマップは更新して逐次送っていた。経済産業省 原子力安全・保安院には米側への提供の翌日になって報告を開始したという。

第1原発事故では公表の遅れが問題になった文部科学省の緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の試算データや、気象庁の放射性物質拡散予測データが、米側や国際機関には早い段階から提供されていたことが判明している。
(転載終わり)

(msn産経ニュース) 線量マップ、まず米側へ提供 保安院には翌日報告 東電、公表の1カ月以上前 (2012.2.12 02:00) http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120212/dst12021202000000-n1.htm (2012年2月14日閲覧)(全文転載)


東京電力が昨年4月24日に発表した福島第1原発敷地内の放射線量マップ(サーベイマップ)を公開1カ月以上前に米原子力規制委員会(NRC)へ提供していたことが11日分かった。経済産業省原子力安全・保安院には米側への提供翌日から報告を始めたという。

事故では、文部科学省のSPEEDIの試算データや気象庁の放射性物質拡散予測データが、米側や国際機関には早い段階から提供されていたことが判明している。

マップは建屋周辺の日々の線量分布を記載した地図。事故状況の把握や作業計画立案の基礎資料となっている。東電によると昨年3月22日に作成を開始。同 日、NRCが日本に派遣したスタッフから要請を受けて提供した。建屋周辺の数十カ所~150カ所の線量を記入。東電の原子力部門の担当者とNRCスタッフ 間のメールで共有した。
(転載終わり)

ー2012年2月14日の投稿はここまでー

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例1)SPEEDIの放射性物質拡散予測を国民より先に米軍に提供

2012年1月16日、国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)の第2回会合で、委員会は、「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(政府事故調)が発表した「中間報告」(2011年12月26日)について、政府事故調の畑村洋太郎委員長、東京電力の山崎雅男副社長などから聞き取りを行った。

その中で、文部科学省の渡辺格科学技術・学術政策局次長は、福島第一原発から放射性物質がどう拡散するか緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による予測結果を、事故直後の昨年3月14日、外務省を通じて米軍に提供していたことを明らかにした。予測結果が公表されたのは、その9日後の3月23日になってからだった。

これまでも、SPEEDIの予測結果が公表されなかったために、住民の避難が遅れ、放射性物質が拡散する方面に避難した人もおり、無用の被曝を招いたと批判されてきたが、今回の報道で、国民の安全を軽視する政府の事故対応への怒りと不信感を新たにした人も多い。また、3月17日未明、米国は原発から半径80キロ以内にいる米国人に避難勧告を出したが(日本政府の避難指示は半径20キロ以内)、日本政府の提供したSPEEDI情報もその根拠になっていただろうことは想像に難くない。

住民が要らぬ被曝を受けているのを知りつつ自国民からは予測結果を隠蔽し、在日米軍には情報提供。それをもとに米国が半径80キロ以内からの避難勧告を出すのを尻目に、避難区域を拡大しようとしなかった日本政府。それから10ヶ月も経った1月16日の国会事故調委員会で、国民に公表していない情報を米軍にはいち早く提供した事実を、平然と、当たり前のことのように述べる文科省科学技術・学術政策局次長。ここには、自国民の安全を第一に考えない政府・官僚の姿がある。

I. 日本政府が、3月14日にSPEEDIの拡散予測を米軍に提供していた

(1)(東京新聞)拡散予測先に米軍へ 住民公表9日遅れ(2012年1月17日 朝刊)http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012011702000021.html (2012年1月27日閲覧)(全文転載)

文部科学省の渡辺格科学技術・学術政策局次長は十六日、福島第一原発から放射性物質がどう拡散するか緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による試算結果を、事故直後の昨年三月十四日、外務省を通じて米軍に提供していたことを明らかにした。

試算結果が公表されたのは、米軍への提供より九日も遅い三月二十三日のことだった。公表が遅れたため、住民の避難が遅れ、放射性物質が拡散する方面に避難した人もおり、無用の被ばくを招いたと批判されてきた。その一方で、米国側には早い段階で連絡していたことになる。

十六日に開かれた国会の事故調査委員会で、委員からの質問に答える形で、渡辺氏が明らかにした。

渡辺氏は「(事故対応を)米軍に支援してもらうためだった。公表という認識ではなかった。(住民ら国内への公表は)原子力災害対策本部で検討しており遅くなった」と釈明した。
(転載終わり)

(2)(福島原発事故緊急会議情報共同デスク) 国会事故調の傍聴報告(SPEEDI情報は被災者より米軍に)
 (2012年1月27日閲覧)

国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)第2回委員会の傍聴報告
福島原発事故緊急会議 木村雅夫

(概要)

・東京で初めての委員会で、過去の3つの政府と東電と文科省の調査報告(中間)についてヒアリングをした。
・文科省のSPEEDIの結果を、福島の自治体や被災者に知らせるよりもずっと早く3月14日時点に外務省経由で米軍(と米政府)に知らされていたことを 文科省の担当が認めました、官僚は人の命を守らない、日本は相変わらず米国の属国である、ことが明らかになったと思います。(東京新聞1/17朝刊記事参照)
・石橋克彦委員、田中三彦委員、崎山比早子委員がそれぞれの専門の立場で鋭い質問をしましたが、説明者がうまく切り抜けたと思われます。
・政府事故調とこの国会事故調との相違、現在進行している政府の施策に対する対応、今後の方向などが注目されましたが、本会議でも記者会見でも黒川委員長は議論しているといいながら結論をあきらかにしませんでした。

[中略]

(3) 文部科学省「東日本大震災からの復旧・復興に関する取組についての中間的な検証結果のまとめ(第一次報告書)」について

モニタリングとSPEEDIについて質疑応答する中で、渡辺格科学技術・学術政策局次長の回答から次のことが再確認された。

・文科省としては、年間20mSvも、線量3.8μSv/hも基準としていない、どちらの根拠もあいまい。説明の仕方に問題があったことを文科省も認める。

・SPEEDIの予測結果は一般には4月末に公表されたが、3月14日の時点で既に外務省経由で米軍(及び米政府)に伝わっていた。

詳細(会次第、配布資料、議事録)は、国会の次のサイトをご覧ください。
http://www.naiic.jp/about/

→全体を読む

  • 文部科学省の報告は動画2/3の約43分経過後、渡辺次長の発言は約1時間13分過ぎにあります。 
  • 動画3/3は、黒川清志・国会事故調委員長の記者会見です
(4)(中日新聞)【社説】SPEEDI 国民は守られなかった(2012年1月21日) http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2012012102000003.html (2012年1月27日閲覧)(全文転載)

SPEEDIの予測データが国内での公表より九日早く、米国に伝えられていた。原発の寿命を延ばしたり縮めたり。拙速に再稼働を認めたり。国民を守る気概が日本政府には欠けていないか。

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)は、原発などに緊急事態があった時、風向きや地形、放射性物質の発生量などから拡散状況を予測する。

運営は原子力安全技術センター。文部科学省の外郭団体だ。緊急時には経済産業省や原子力安全委員会などへ、速やかに情報が伝わる仕組みである。

被災者の安全を大きく左右するその重要情報が、国民にはすぐ知らされず、問題視されてきた。ところが、米軍にはいち早く提供されていたというから、国民は落胆した。怒った。いったい誰のための政府なのかと。

政府の事故調査・検証委員会の中間報告書によると、経産省原子力安全・保安院は「信頼性が低い」との注釈付きで震災発生翌日にSPEEDIのデータを官邸に上げたという。そのため官邸職員もそれを軽視して、当時の首相に伝えなかった。これが、そもそもの間違いだ。

福島第一原発事故では、放射性物質の放出量が把握できなかったため、本来の能力は発揮できなかったろう。しかし、シミュレーション、かなり正確な想定は可能である。後に公表のデータを見れば、現実に線量が高い地域と重なっているではないか。

福島第一原発に近い福島県浪江町請戸地区の被災者は、すぐに高台へ避難した。しばらくしてから、そこが線量の高い地域であることがわかった。「知っていたら行かなかった」と悔しがる。

必要な情報を速やかに可能な限り収集、分析し、国民の生命財産を守るのが官邸ではないか。

米国・米軍は、判断材料としてのデータを貪欲に集めていたのだろう。当事国の政府が軽視した情報さえも。これは放射能に対する恐れ方の違い、自国民の安全に対する意欲の違いである。

驚くべきことに、福島第一原発のデータを政府の監視システムに送り込む装置の非常用電源が、事故の四カ月前から取り外されたままになっていた。そ のデータはSPEEDIに伝わっていなかった。問題はシステムではなく、それを運用する人にある。あなた方は何を守るべきなのか。あらためて政府に問いか けたい。
(転載終わり)

II. 2011年3月17日未明、米国が自国民へ原発80キロ圏内から避難勧告

(Asahi.com)米駐日大使、自国民へ原発80キロ圏内から避難勧告(2011年3月17日10時53分)http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103170089.html (2012年1月27日閲覧)(全文転載)

【ワ シントン=村山祐介、望月洋嗣】米国のルース駐日大使は17日未明、東日本大震災による東京電力福島第一原発の事故の深刻化に伴い、同原発の半径80キロ 以内にいる米国人に避難するよう勧告した。日本政府が指示している半径20キロ以内からの避難では、米国内の安全指針を満たせないと判断した。

カーニー米大統領報道官はワシントンでの16日の会見で、今回の措置について「日本政府とも協議した。米政府がこうした勧告をすることについて、日本政府ははっきりと認識している」と述べた。米原子力規制委員会(NRC)は「あくまで米国人に対するもの」と強調している。

ルース大使は声明で、(1)同原発の半径80キロ以内からの避難(2)安全に避難できない場合には屋内へ退避――するよう呼びかけた。NRCやエネルギー省など米専門家による検討を踏まえ、米国内で同じような状況になった場合に適用されるNRCの指針に沿った「予防措置」としている。天候や風向き、風速、原子炉の事故であることなどから、半径80キロ以内では放射能汚染の危険性が増すことや、低レベル放射性物質が広範囲に拡散する可能性を考慮したとい う。

日本政府は現在、同原発から半径20キロ以内に避難を、20キロから30キロ以内に屋内退避を指示している。米政府も16日時点では、日本の指示は 「我々の専門家と一致している」(ルース大使)としていた。NRCは同日の声明で、避難範囲を広げたのは、住民に許容される年間被曝(ひばく)線量を10 ミリシーベルトとする計算に基づくとしているが、福島第一原発4号機の燃料プールの冷却水の状態の悪化など新たな状況も加味した判断とみられる。

米国務省のトナー副報道官代行は16日のワシントンでの会見で、「事態が非常に流動的なのは明らか」と指摘し、「現場の米専門家の評価に基づくものだ」と独自判断であることを強調した。被災地の米国人を避難させるための交通手段の手配も検討しているという。

一方、米国防総省のラパン副報道官は16日、救援活動にあたる米海軍などの要員に対し、同原発の半径80キロ以内への立ち入りを禁止したことを明らかに した。また、航空機に搭乗する兵士らには、同原発から約112キロ以内に近づく際に、ヨウ素剤を服用するよう指示した。米軍は同原発の消火作業に直接は関与していない。消防車2台を提供したものの、運用は日本側がすることになるという。米軍は東北沖など日本近海に13隻の艦船を展開し、災害支援活動を続けている。
(転載終わり)



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