Monday, January 30, 2012

XIII.9. 上関周辺の自然を守る活動してきた「長島の自然を守る会」

生物多様性の宝庫である上関周辺の生態系を明らかにし、貴重な自然を上関原発計画の工事による破壊から守るために活動してきた「長島の自然を守る会」(1999年~)が、その活動に対し第11回沼田眞賞を日本自然保護協会から受賞した
その授賞式と記念講演会がインターネット中継され、録画も「原子力資料情報室(CNIC)」の映像アーカイブIWJ中継市民チャンネル 東京Ch3で見ることができる

最初の動画の冒頭30分間は授賞式の模様。30分ごろから、「長島の自然を守る会」代表の高島美登里氏の受賞団体記念講演が始まり、二人の研究者による長島と祝島の自然についての講演へと続きます。どれも、スライドを使ったとてもおもしろい(=興味深い・勉強になる)講演です。

二番目の動画は、この三人の講演者に、上関原発計画反対運動にかかわってきた住民の方々も加えたパネル・ディスカッションです。「長島の自然を守る会」、研究者、地元の住民の間の関係を、それぞれの立場から発言。これも、とてもおもしろい(=興味深い・勉強になる)パネル・ディスカッションでした。

これらの講演とパネル・ディスカッションから、いろいろなことを学び、考えさせられました。ひとつには、もちろん上関周辺の自然について、そして原発はその貴重な生態系を壊してしまうものだ、ということ。ふたつ目は、「長島の自然を守る会」、研究者、住民の間の距離のとり方、お互いとのかかわり方です。お互いに尊敬し信頼し合い、それぞれの立場を尊重し合う、というかかわり方が、単にパネリストの言葉からだけでなく、このパネルでのお互いへの話しかけ方、接し方から、非常によく伝わってきました。それが、この会と原発計画反対運動を長続きさせてきた秘訣(のひとつ)なのだな、と感じました。

また、講演とパネル・ディスカッションのすぐれた内容に加え、気がついたのは、みなさんの語り口です。(政府や東電の記者会見でおなじみの)空疎な決まり文句や、あらかじめプログラムされた文章がつるつると出でくるような話し方ではなく、ひとりひとりが考え考え、ていねいに言葉を選びながら話されるのが印象に残りました。(また、ここで講演された二人の研究者のおだやかな話しぶりとおごらない態度は、アグレッシブで傲岸な態度の人が多い原発推進学者とは対照的だと思いました。。) 東電や政府の記者会見を見ていると必ず腹が立ってイライラし、時には絶望的にすら感じるのとは対照的に、この受賞記念講演会を見終わったとき、おだやかな静かな気持ちになって、絶望の中にも暖かい光がそこに当たっているような感じがしました。

12月に政府が無理やり「収束」宣言をし、国際原発推進勢力の巻き返しが勢いを増すなか、原発をなくす運動は長期戦を強いられるでしょう。3.11前から少数派であっても粘り強く息の長い運動を続けてきた反原発運動のように、これからの反・脱・卒原発運動も、粘り強く息の長い取り組みが必要になるのではないでしょうか。そんな状況にある今、「長島の自然を守る会」の活動とこの記念講演会は、これからの取り組みの糧になるものをたくさん提示してくれていると感じました。

(この記念講演会のおだやかさに影響されて、この投稿も、つい「ですます調」になりました。。)


(CNIC映像アーカイブ) 第11回沼田眞賞 授賞式と記念講演会 講演 長島の自然を守る会 代表 高島美登里
http://cnic-movie.blogspot.com/2012/01/11.html (2012年1月29日閲覧)

『第11回沼田眞賞 授賞式と記念講演会』① 受賞記念講演/記念講演
長さ: 148:17

プログラム 日本自然保護協会HPより転載。
http://www.nacsj.or.jp/katsudo/numatasyo/2011/12/122.html (2012年1月29日閲覧)

●プログラム●
■開会・授与式 13時~

■受賞団体記念講演 13時30分~
「上関原発計画に向き合い、奇跡の海・長島の生物多様性の豊かさを守る」
高島美登里(長島の自然を守る会代表) 【動画では、0:30~1:24過ぎー投稿者】
■記念講演 14時30分~
「長島・祝島の豊かさをひもとく」
①「瀬戸内海の原風景を今に残す長島と祝島」
加藤 真(京都大学教授・日本生態学会自然保護専門委員会) 【動画:1:30頃~1:50】
②「カンムリウミスズメ・海鳥の調査からみえてきたこと(仮題)」
飯田知彦(鳥類・生態系研究者、九州大学農学博士)      【動画:2:00~】 

■パネルディスカション 15時45分~    http://www.ustream.tv/recorded/19926274
「奇跡の海・長島のこれまでと、これから」
話題提供:「祝島の暮らしと原発計画の反対運動」
山戸 孝(びわ農家、祝島市場運営)
上記講演者と長島の自然を守る会、科学者、調査者、住民との連携を軸にパネルディスカション


■閉会 17時
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受賞団体「長島の自然を守る会」からのメッセージ

沼田賞告知ー地図受賞の知らせを受け、長島の自然を守る会のメンバーは小躍りして喜びました。栄誉あるこの賞をいただけるのは、世界中の専門の研究者から"奇跡の海"と絶賛 される上関の自然の素晴らしさが評価されたということだと思っています。また、研究者や地元の方々、日本中の自然を愛する市民・諸団体など会の活動を支え てくださった皆様の支援の賜物です。

1999年に長島の自然を守る会が発足して12年間、生物多様性のホット・スポットである上関周辺の 生態系を明らかにし、貴重な自然を上関原発計画の工事による破壊から守るために活動してきました。残念ながら、陸の準備工事で照葉樹林を伐採されたり、海 の埋め立て着工で少量の土石を投入されるなど、一部とはいえ自然環境の破壊を食い止められませんでした。しかし、福島第一原発事故という痛ましい犠牲の上 で、上関原発計画は一時中止しています。

上関の貴重な自然は未来の子どもたちへの贈り物です。上関原発計画を1日も早く中止させることが 求められています。長島の自然を守る会も自然を活かした町の活性化に寄与します。この賞の名に恥じぬよう、科学的な成果を蓄積すべくなお一層、精進してま いりますので、ご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。

(長島の自然を守る会  代表  高島美登里)

"奇跡の海"上関の自然
自然海岸が75%を占める上関海域には、IUCN絶滅危惧種で国の天然記念物のカンムリウミスズメをはじめ、さまざまな希少な生きものが暮らしている。


沼田賞告知ーカンムリウミスズメ

沼田賞告知ースギモクーナガシマツボ
←カンムリウミスズメの家族群(世界で4例目)。上関海域は、世界で唯一、カンムリウミスズメが一年中生息している場所(写真:飯田知彦)

↓左:日本海特産種で瀬戸内海では希少な海藻のスギモク群落(写真:長島の自然を守る会)。
右:世界で1個体しか確認されていないナガシマツボ(殻径3.2㎜)(写真:日本生態学会上関アフターケア委員会)
















【関連情報】

【関連報道】

(毎日新聞)沼田真賞:「長島の自然を守る会」に 中国電上関原発に反対、生態系保護訴え(2012年1月23日) http://mainichi.jp/select/science/news/20120123ddm016040029000c.html (2012年2月1日閲覧)(全文転載)

日本自然保護協会は自然保護に優れた実績をあげた人や団体に贈る「沼田真賞」に、中国電力上関原発(山口県)建設計画に反対し、瀬戸内に残る貴重な生態系の保護を訴えてきた市民団体「長島の自然を守る会」(高島美登里代表)を選び、22日東京都内で授賞式が行われた。

長島を含む原発予定地周辺の海は、開発が進む瀬戸内海にあって、手つかずの自然が残り、スナメリなど希少な生物が多く生息している。守る会は、 99年に中電が上関原発の環境影響評価(アセスメント)の前段階の準備書を提出したことをきっかけに発足。市民による環境アセスを掲げ、研究者や地元漁師 らと協力して調査を開始。2010年には国の天然記念物カンムリウミスズメが繁殖している可能性が高いことを明らかにした。会員は約170人。

東京電力福島第1原発事故を受け昨年6月、山口県の二井関成知事は、国の新たなエネルギー政策の指針が示されるまで、公有水面埋め立て許可の延長を認めないとの方針を表明した。

高島代表は「受賞は、『奇跡の海』と呼ばれる上関の自然のすばらしさが評価されたということだ。次の世代に引き継ぐために、科学的な調査を続けたい」と喜んでいる。【足立旬子】

毎日新聞 2012年1月23日 東京朝刊

(転載終わり)

(日テレNEWS24)山口・上関原発の建設、事実上不可能に(2011年6月27日)  http://news24.jp/articles/2011/06/27/07185273.html (2012年2月1日閲覧)(全文転載)

山口県の上関原子力発電所の建設に向けた海の埋め立て免許について、二井県知事は27日、来年10月に期限が切れた後の延長は認めない方針を示した。

これは、27日に開かれた県議会の代表質問で、議員の質問に答える形で表明したもの。

二井知事「国の原子力政策や原子力発電の具体的な安全対策が示されていない現時点では、新たな手続きに入ることはできない」

「中国電力」の上関原発計画で、県は08年、建設に向けた敷地造成のため、中国電力に海の埋め立て免許を交付した。この免許は来年10月までに埋め立てを終えなければ失効することになり、県が延長を認めなければ失効後は工事がストップすることになる。
(転載終わり)

(2012年2月1日投稿) 
(東京新聞)反原発 奇跡の海守った/「長島の自然を守る会」に沼田賞/山口・上関で絶滅危憤種など確認
★阿修羅♪ > 原発・フッ素20 >より転載させていただきました。http://www.asyura2.com/12/genpatu20/msg/475.html (2012年2月1日閲覧)

東京新聞 2012.01.24 朝刊 「こちら特報部」

沼田真賞の授賞式で、会のメンバーを紹介する高島代表㊧=22日、東京都江東区で

中国電力の上関原発建設計画に反対する山口県上関町の市民団体「長島の自然を守る会」が、財団法人・日本自然保護協会(東京)が主催する第十一国「沼田真 賞」に選ばれた。ニ十二日の授賞式で同会の高島美登里代表(59)は原発と相いれない“奇跡の海”の保護を訴えた。 (中山洋子)

授賞式は清澄庭園(東京都江東区)で催された。この賞は生態学者で同協会元会長の沼田氏を記念して二〇〇一年に設けられ、毎年、自然保護活動などで実績を挙げた個人や団体に贈られている。

長島の自然を守る会は一九九九年九月、中国電力が原発建設計画で国に提出した「環境影響評価準備書」をずさんと考え、懸念した人たちが結成した。

これまで多くの研究者とともに生態調査を続け、国の天然記念物で絶滅危惧種のカンムリウミスズメをはじめ、希少な貝であるヤシマイシンの近似種やナメクジウオの生息を次々に確認している。

戦後に大規模開発が進んだ瀬戸内海にあっても、上関町周辺の海には、日本の他の地域では絶滅している生物が残っていることが判明。世界の研究者から“奇跡の海”と呼ばれるようになった。

記念講演で高島代表は「中国電力はこうした足元の豊かさを気づかせず、原発がなければダメな過疎の町だと住民たちに思わせ、地域のプライドを崩してきた」と指摘した。

そのうえで「受賞は上関の自然の多様性があらためて評価されたに等しい。原発に反対し、自然を守り続けてきた多くの人々全体に与えられたご褒美だと思う」と喜んだ。

上関原発計画では、〇八年十月に山口県が原発設置のために海の埋め立てを許可。しかし、地元漁師らが予定地に漁船を並べて埋め立てにかかわる作業を阻止してきた。

その後、東京電力福島原発事故が発生。山口県の二井関成知事は昨年六月、今年十月に失効する埋め立て許可の延長を認めない方針を表明している。
(転載終わり)



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