Saturday, January 28, 2012

XII.5. 原子力災害対策本部などが議事録作らずーなぜ今になって報道?

2012年1月22日、 NHKは、政府の原子力災害対策本部(本部長・首相)の議事録などの情報公開請求をしたところ、公文書管理法で義務づけられている議事録を作っていなかったことがわかった、と報道した。それを受け、公文書管理を担当する岡田克也副総理が調査を指示。1月27日、東日本大震災や東電福島第1原発事故への対応に当たった15会議体を調査した結果、原子力災害対策本部など10の会議が議事録を作成していなかったと発表した。

NHKは、情報公開請求をしてはじめて議事録未作成がわかったかのように報道したが、早くからこの問題を追及してきた人たちからは、「何を今さら」という声が上がっている。特に、昨年3月16日から約2ヶ月間連日東電記者会見に出席し、早くから議事録問題を追及していた日隅一雄弁護士は、1月25日、「我々の手に『主権』を取り戻そう!―福島原発事故から考える―」と題したインタビューのなかで、NHKが日隅氏たちが追及していた頃は全く報道せず、今になって初めてわかったかのようにとり上げていることを「欺瞞」と断じ、自らが報道しなかったことが議事録を作らせなかった原因だという自己検証から始めるべきだ、と批判した。

現に、3月30日5月11日に、枝野官房長官(当時)が記者会見で議事録に関して答弁しているし、12月16日には、毎日新聞が詳細な分析記事を載せていた。とすると問題は、記者会見で日隅氏などが議事録問題を追及していたとき、そこにいたはずのNHKの記者は誰ひとり、それが重要な問題だとは考えなかったのだろうか?ということになる。そして、なぜ事故後10ヶ月も経ってから、事の重大性に気づいたのだろうか?

(NHK)政府の原災本部 議事録を作らず(1月22日 17時44分)http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120122/k10015450241000.html  (2012年1月24日閲覧)(全文転載) 

東京電力福島第一原子力発電所の事故を巡って、避難区域や除染の方針など重要な決定を行ってきた政府の「原子力災害対策本部」の議事録が作成されていなかったことが分かりました。専門家は「将来同じ失敗を繰り返さないようにするための財産が失われたと いう意味で、国民的な損失だと思う」と指摘しています。

政府の原子力災害対策本部は、総理大臣を本部長とし、経済産業大臣をはじめ全閣僚をメンバーとする もので、原発事故当日の去年3月11日に設けられ、避難区域や除染の基本方針、農作物の出荷制限など原発事故を巡る重要な決定を行ってきました。NHK で、去年11月、それまでに開かれた21回の会議について「議事録や内容をまとめた資料など」の情報公開請求を行ったところ、公開されたのは、議題を記した1回の会議について1ページの「議事次第」だけで、議論の中身を記した議事録は作成されていなかったことが分かりました。NHKの取材に対し、原子力災 害対策本部の事務局を務めている原子力安全・保安院の担当者は「業務が忙しく議事録を作成できなかった」と説明しています。公文書管理法は、国民への説明 義務を果たすとともに政府の意思決定の過程を検証できるようにするため重要な会議の記録を残すよう定めており、公文書の管理を担当する内閣府は、原子力安 全・保安院の担当者から聞き取りを行うなど経緯を調べています。原発事故への対応を巡っては、東京電力と政府が合同で事故対応を検討した「事故対策統合本 部」でも主要な会議の議事録が作成されていなかったことが分かっており、内閣府は、この経緯についても調べています。

公文書の管理や情報 公開制度に詳しい名古屋大学大学院の春名幹男特任教授は「政府の重要な立場にあった人たちは、記録を残さないと責任を果たしたことにはならない。今回は、 自分たちの失策がそのまま記録されると困るので、あえて記録を残さなかったと思われてもしかたない。将来同じ失敗を繰り返さないようにするための財産が失 われたという意味で、国民的な損失だと思う」と指摘しています。
(転載終わり)  

(時事ドットコム)議事録未作成、10会議=震災対応で調査結果公表-政府
(2012/01/27-12:09)http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2012012700237 (2012年1月28日閲覧)(全文転載)

  政府は27日午前、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故への対応に当たった15会議体を調査した結果、原子力災害対策本部(本部長・首相)など10の 会議が議事録を作成していなかったことを公表した。このうち3会議は、議事概要すら未作成だった。野党は政府対応に批判を強めており、国会論戦の新たな焦点に浮上してきた。
議事録も議事概要も作っていなかったのは、同本部と緊急災害対策本部、被災者生活支援チーム。政府・東電統合対策室や官邸緊急参集チームなどは議事録を未作成だった。

調査結果を受け、公文書管理を担当している岡田克也副総理は同日午前の閣僚懇談会で、2月中をめどに、議事概要を事後的に作成するよう関係閣僚に指示。ま た全ての閣僚に、公文書管理法に基づき文書管理の徹底も求めた。この後、岡田氏は関係者の処分について記者団に「(未作成の経緯などを)議論するので、そ の結果次第だ」と述べた。

岡田氏は同日夕に記者会見し、詳細な状況や今後の対応を説明する。(2012/01/27-12:09)

 【動画】(原子力資料情報室)日隅一雄弁護士、NJP編集長 我々の手に「主権」を取り戻そう!―福島原発事故から考える―
 http://cnic-movie.blogspot.com/2012/01/blog-post_26.html (2012年1月28日閲覧)

1:10:30あたりから (CNICの澤井正子氏の問いに答えて)

日隅氏:今さら問題にすること、あらためてわかったかのように言うのは欺瞞ですよ。われわれは4月段階からずっと言い続けてたんですからね。それを報道しなかったのはNHKなんですから。NHKは、議事録を作らせなかった原因のひとつとして、「我々が充分に報道しなかったことが原因なんだ」と、そこまで言わなきゃいけない。

【議事録についての過去の報道】

(msn産経ニュース)枝野長官会見(2)東電との統合本部「議事録作成していない」(30日午後5時)2011.3.30 21:03 (3/4ページ)から抜粋。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110330/plc11033021070017-n3.htm (2012年1月28日閲覧) 

【議事録公表】

--東電の会長が統合対策本部の会議の議事録を公開をしたいと発言したが、議事録はあるか。あるならば、公開するつもりはあるか

「統合本部は、何というんでしょう。いわゆる会議のように、会議を始めます、終わりますという会議体というよりは、随時、関係者間でさまざまな議論や情報交換を行っている場だ。そのやりとりを、個人的に適宜メモしている方はいるかもしれないが、統合本部として、あるいはそこを管轄する政府として議事録を作成しているものではない。その議論や情報公開の中身については、速やかに記者会見などでご報告して、質問に答えて、東京電力で発表してもらっていると認識している」

(msn産経ニュース)原発事故の議事録ほとんどなし 枝野長官「多分、記憶に基づく証言求められる」(2011.5.11 20:44) http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110511/plc11051120460023-n1.htm (2012年1月28日閲覧)


枝野幸男官房長官は11日午後の記者会見で、東日本大震災発生直後、原子力災害対策本部(本部長・菅直人首相)の会合など、東京電力福島第1原発事故の対応をめぐり開催された会議の議事録がほとんど作成されていないことを明らかにした。

政府は今月中旬にも原発事故調査委員会を発足させるが、枝野氏は議事録がない部分については「多分、記憶に基づく証言などを求められることになる」と述べた。政府内の議論の模様を示す資料がないことで、検証作業に支障を来すのは避けられない。

枝野氏は、事故調査委の発足にあたり「首相だけでなく私も含めた政府関係者や東京電力の事故以前と以後のプロセスを、すべて検証しなければならない」と強調した。

ところが、「原子力災害対策本部などについては一定の議事メモは残っているが、危機管理対応で議事録を取る場がほとんどなかったのが実態だ」と述べた。

また、枝野氏は「制度的な問題を含め、事故を事前に抑止できなかったのかということが一つの大きなポイントだ」と、自民党政権時代の対応も検証の対象になるとの考えを示した。
(転載終わり)

(毎日新聞)大震災と報道:原発対策関連の公文書散逸の恐れ 検証作業の支障に(2011年12月17日)
震災・まちのアーカイブさまのブログから転載させていただきました。


今年3月の福島第1原発事故に伴って政府が設置した「原子力災害対策本部」と「政府・東京電力統合対策室」で、取り扱われる公文書が適切に管理 されていない状態が続いている。公文書管理法(今年4月施行)に基づく「ファイル管理簿」も作成されていないなど、同法の趣旨に反する疑いも指摘されてい る。識者らからは「政府の事故対応の是非を検証するために必要な文書が散逸する恐れがある」と懸念が出ている。【吉永磨美、臺宏士、青島顕】

 「メモだから非公開」
 「政府・東電統合対策室」(対策室)は今年3月、東京・内幸町の東電本店内に設けられた。実質的な事務は経済産業省の原子力安全・保安院が 担っている。細野豪志・原発事故担当相を筆頭に、東電の職員や厚生労働省、文部科学省など関係省庁の連絡担当者が集まり、毎日午後6時から、各省庁による 原発事故の収束作業などに関する「全体会議」が行われている。
 先月7日にあった対策室の合同会見で、園田康博・内閣府政務官は「全体会議の議事録は取っていない」と明言。「(事故対策の)時系列のメモはあるが、内部文書なので公開しない」と続け、記者からあった関係文書の開示要求を突き放した。
 対策室の担当者間で交わされた発言や文書、情報は、政府や東電が事故収束に向けて取った措置が適切かどうかを、のちに検証する重要な手がかり になるのは間違いない。ところが、園田政務官は「各省でとりまとめており、心配ない」とした。「メモ」でも組織的に用いられていれば行政文書に当たり、情 報公開法の開示対象になるが、行政文書に当たるかどうかについても「精査しないとわからない」と即答を避けた。

 官僚の本音は
 一方、対策室と連携し、政府レベルで協議する場が「原子力災害対策本部」(災対本部)だ。首相を本部長に、原発における緊急事態に際して総合 的見地から対処する中枢機能を持つ。原発周辺の避難区域を見直す作業もここでされている。会議は首相官邸で行われる。災対本部も初期の議事録の8回分はな いという。事務局の保安院によると、菅直人前首相による原発に対する放水命令や指示の判断に至る経緯が分かる文書の請求もあったが見つからず、「不存在」 とされたケースもあるという。
 通常の行政機関であれば、公文書は、部局ごとに置かれた文書管理担当者が管理規定に基づき文書内容を把握する仕組みになっている。そのための 「ファイル管理簿」も存在する。ところが、両組織の情報公開請求窓口になっている内閣府の担当者は「対策室も災対本部も、管理簿はない」と取材に対して明 言した。文書管理規則もないという。
 なぜこのような事態になっているのか。
 対策室や災対本部は、内閣府設置法など具体的な設置法に基づく行政機関ではない。また、対策室については、働く保安院などの職員も各省庁に在 籍しながら「連絡係」として勤務しているだけで、正式な辞令が出ているわけではない。当然、文書管理の担当職員はいない。各省庁から来た職員が個別にそれ ぞれの形式で残しているだけだ。
 先月10日にあった民主党内閣部門会議--。経産官僚出身の後藤祐一衆院議員は、秘密保全法制をめぐる議論の中で、同席した官僚出身議員を見 渡しながらこう話した。「情報公開法が施行(01年)になってすごく危なくなった。いざというときには公開請求が来る。請求をはねのけられるように、『こ れは個人のメモ』とメモがやたらと増えた。みなさんご経験があると思う」。情報公開を避けるための、役人時代の手の内を明かしたような発言といえた。 内閣府の園田政務官が3日前の会見で述べた、「メモはあるが、公開はしない」と通じる感覚だった。

 復興対策本部は整備
 内閣府によると、災対本部は原子力災害対策特別措置法を基に設置されているが、「会議体」と呼ばれ一般的な行政機関ではないという位置づけだ。重要な情報や文書があるにもかかわらず、法に基づく文書管理が当初から行われていない。
 ところが、情報公開法に基づく開示請求が対策室や災対本部に相次ぎ、請求窓口の内閣府は、両組織で取り扱う文書についても情報公開法に準じた扱いにしている。
 対策室については、災対本部内の「原子力被災者生活支援チーム」の職員が文書を探す事務を担当。災対本部や実質的な庶務業務を行う保安院にな いかどうかを確認したり、各省庁の職員と連絡を取り合いながら作業を進めている。それらの資料は東電側から提供を受けたものと混在している状態で、「行政 文書」かどうかについて、一つずつ精査しているという。
 災対本部についても同チームの職員が文書管理担当を兼務している。請求ごとに文書作成にかかわった職員を探し出し、一つずつ問い合わせて該当 する文書をかき集めているという。ただ、両組織ともに文書については現段階でも担当者による個別管理で、組織だった管理には至っていない。文書管理規則を定めファイル管理簿を作成する具体的な予定はいまのところないという。
 同じ大震災に関連しては、今年6月に設置された「東日本大震災復興対策本部」がある。復興施策について省庁や被災自治体との調整などを行って いるが、文書管理の規則やファイル管理簿も存在している。発足当初から東日本大震災復興基本法に基づく正式な行政機関と位置づけたからで、担当者は「公文書管理法や情報公開法などに準じて法的に必要なものは整備した」と話した。
(転載終わり)

【関連資料】
 
公文書等の管理に関する法律 [公文書管理法]
(平成二十一年七月一日法律第六十六号

第一章 総則 
(目的)
第一条  この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。
第二章 行政文書の管理
第一節 文書の作成

第四条  行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。
 法令の制定又は改廃及びその経緯
 前号に定めるもののほか、閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯
 複数の行政機関による申合せ又は他の行政機関若しくは地方公共団体に対して示す基準の設定及びその経緯
 個人又は法人の権利義務の得喪及びその経緯
 職員の人事に関する事項

公文書管理法からの抜粋終わり)


公文書管理制度

公文書管理(国立公文書館)
http://www.cao.go.jp/gyouseisasshin/contents/11/public-document-management.html
総務省「公文書管理」のページ  
 
 【関連ブログ】

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