2012年2月25日、「原子力発電所を問う民衆法廷」の第1回公判が東京で開かれた。 原発災害を2度と起こさせないために、事故の責任を負うべき指導者を道義的に裁くのが目的だ。 福島の被害者である申立人7人が意見陳述し、山崎久隆・「たんぽぽ舎」副代表と高橋哲哉・東大教授の二証人が証言。鵜飼哲・一橋大学教授、田中利幸・広島市立大学教授、前田朗・東京造形大学教授が判事を務めた。東京に引き続き、4月15日には大阪で第2回公判が開かれ、その後各地で公判が開かれる予定だ。
原発民衆法廷検事団は、菅直人・前首相、枝野幸男・前官房長官、海江田万里・前経産相、東京電力株式会社(代表取締役社長 西澤俊夫)、勝俣恒久・東電会長、清水正孝・東電前社長、武藤栄・東電前副社長、班目春樹・原子力安全委員会委員長、寺坂信昭・前原子力安全・保安院院長、近藤駿介・原子力委員会委員長を、公害罪と業務上過失致死傷罪で起訴している。
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日本では、原子力発電所の運転差し止めを求めた裁判で原告側が最終的に勝訴したことは一度もない。
日本の原発訴訟で原告が勝訴した裁判はただ二度しかない。(1)もんじゅ訴訟の差し戻し控訴審で2003年1月27日、名古屋高等裁判所金沢支部が、原子炉設置許可処分に違法な点があるとして、もんじゅの設置許可処分を無効とした判決と、(2)2006年3月24日、北陸電力に対し、地震対策の不備などを理由に、志賀原発2号機の運転停止を命じる判決を下した金沢地裁の一審判決(井戸謙一裁判長)。これらの歴史的判決も、その後の上級審でくつがえされ、どちらも原告側の敗北で終わっている。
つまり、基本的に、日本の裁判所は原発推進に法的お墨付きを与える役割を果たしてきた。そこには、「国策」としての原発を推進する国家と原子力産業の伴走者・代弁者としての姿はあっても、「憲法の番人」あるいは「人権擁護の最後の砦」として人びとの権利を擁護する機関(という建前)としての役割は果たしていない。
裁判所が人びとの訴えを聴き権利を守るという義務を怠ったとき、人びとは時に「民衆法廷」に訴えてきた。
ベトナム戦争中の1967年5月2日-10日、スウェーデンストックホルムで、ベトナムにおける米国の戦争犯罪を裁く「国際戦争犯罪法廷」(「ラッセル法廷」)が開かれた。提唱した哲学者バートランド・ラッセルを名誉裁判長、ジャン・ポール・サルトルを執行裁判長とし、アイザック・ドイッチャー(英)、ウラジミール・デディエ(ユーゴ)、シモーヌ・ド・ボーボワール(仏)、レリオ・バッソ(伊)、デビッド・デリンジャー(米)、森川金寿(弁護士)などが法廷を構成した。
日本でも、2000年、アジア太平洋戦争中のいわゆる「慰安婦」制度の真実と責任を明らかにするための「女性国際戦犯法廷」が開かれた。 http://www1.jca.apc.org/vaww-net-japan/womens_tribunal_2000/objectives.html
この歴史を継承する「原発を問う民衆法廷」は、2月の東京に続き、4月15日には大阪で第2回が開かれる。 第3回は5月20日に郡山で、第4回は6月中旬に福井県で、第5回は7月15日に広島で開かれる予定である。
【原発を問う民衆法廷】
原発を問う民衆法廷 HP http://genpatsu-houtei.blogspot.jp/
*一番目の動画の32分目あたりから、福島からの申立人の意見陳述が始まります。
原発を問う民衆法廷 第2回 大阪法廷 HP http://genpatsu-houtei2.main.jp/
【関連情報】
I.ビデオ・ジャーナリスト 神保哲生氏、「裁判所の責任」を問う。
【録音】神保哲生 「原発事故の裁判所の責任」 2012.01.17
Uploaded by crescent421 on Jan 17, 2012
TBSラジオ・Dig神保哲生さんのコーナー。原発事故における裁判所の責任について。
ビデオニュース・ドットコム「原発事故の裁判所の責任を問う」
→ http://www.videonews.com/on-demand/561570/002244.php
ビデオニュース・ドットコム「原発事故の裁判所の責任を問う」
→ http://www.videonews.com/on-demand/561570/002244.php
【録音】神保哲生 「裁判所の責任を問う」① と②(2011年12月13日放送)
Uploaded by tangesazen99 on Mar 1, 2012
「神保哲生のワールドレポート」2011年12月13日放送 「裁判所の責任を問う」①
Uploaded by tangesazen99 on Mar 1, 2012
「神保哲生のワールドレポート」2011年12月13日放送 「裁判所の責任を問う」②
(ビデオニュース・ドットコム)原発事故の裁判所の責任を問う (2012年01月14日)
ゲスト:井戸謙一氏(弁護士・元裁判官)、海渡雄一氏(弁護士) http://www.videonews.com/on-demand/561570/002244.php
II.伊方原発訴訟
(1)(読売新聞)伊方原発訴訟とは(2000年12月15日) http://plus.yomiuri.co.jp/article/words/%E4%BC%8A%E6%96%B9%E5%8E%9F%E7%99%BA%E8%A8%B4%E8%A8%9F (2012年4月2日閲覧)(全文転載)(文中のハイパーリンクは原文のもの)
伊方原発1号機の原子炉設置許可取り消しを求めて原発周辺住民三十五人が一九七三年八月、提訴。設置許可の際、原子炉等規制法に基づいて行われた国の安全審査が不十分だと訴えた。日本初の原発訴訟で、周辺住民に訴える資格があるとした原告適格や原告地での裁判開催が認められ、以後の原発訴訟のレールを敷いた。
七八年四月、一審敗訴。原告は控訴するとともに、同年六月、2号炉増設許可取り消しを提訴。訴えはほぼ同じだが、原発沖活断層、航空機墜落の危険性の新しい争点が加わった。1号機訴訟は九二年十月、上告審で原告敗訴が確定した。
七八年四月、一審敗訴。原告は控訴するとともに、同年六月、2号炉増設許可取り消しを提訴。訴えはほぼ同じだが、原発沖活断層、航空機墜落の危険性の新しい争点が加わった。1号機訴訟は九二年十月、上告審で原告敗訴が確定した。
2000年12月15日(Fri) 全国 夕刊 03頁(夕スポ) 01段 253文字
(転載終わり)
(2)原子力百科事典ATOMICA 四国電力伊方2号炉訴訟の経緯 (10-05-02-04)
(3)【動画】20111001 伊方原発 問われる“安全神話” http://www.dailymotion.com/video/xletih_20111001
NHK“ドキュメンタリーWAVE“より。
“フ クシマ”によって崩壊することになった原発の安全神話。その神話が形作られていくきっかけとなったのが、四国電力の伊方原子力発電所の安全性を巡って 30年近く争われた裁判である。当時、四国電力で原発設置を担当したある技術者は、裁判後、徐々に社内で蔓延していく「絶対安全」に対して、異論を訴えた が黙殺され続けてきた。裁判資料を読み解くと、地震のリスクなど専門家の調査結果が無視されている部分も多い。第2のフクシマは防ぎたいと、今でも原発の危険性を訴える技術者の思いを軸に、現在でも“安全神話”が続く原子力発電の現場を見つめる。
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【動画】 20120415 第2回 原発を問う民衆法廷 http://www.ustream.tv/recorded/21855304
“フ クシマ”によって崩壊することになった原発の安全神話。その神話が形作られていくきっかけとなったのが、四国電力の伊方原子力発電所の安全性を巡って 30年近く争われた裁判である。当時、四国電力で原発設置を担当したある技術者は、裁判後、徐々に社内で蔓延していく「絶対安全」に対して、異論を訴えた が黙殺され続けてきた。裁判資料を読み解くと、地震のリスクなど専門家の調査結果が無視されている部分も多い。第2のフクシマは防ぎたいと、今でも原発の危険性を訴える技術者の思いを軸に、現在でも“安全神話”が続く原子力発電の現場を見つめる。
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2012年4月18日投稿
4月15日、大阪で第2回の民衆法廷が開かれた。
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