Thursday, February 16, 2012

II.G.6. 2月20日に2度目の東電福島第1原発現地取材-またフリーランスは排除

東京電力 は、2 月9 日、東京電力福島第一原子力発電所の現地取材を2月2 0日に実施することを発表した。 昨年11月12日に続いて2回目。今回はインターネットメディアのIndependent Web Journal とニコニコ動画の参加が許されたが(しかし、代表カメラ1 人のみ)、フリーランス記者や雑誌記者はまたも排除された。

これに対し、「政府・東京電力統合対策室共同記者会見フリーランス連絡会」は、2月13日に細野豪志原発担当相と東電の西澤俊夫社長に対して申し入れを行ったが、連絡会が指定した日時(14日午後6時)までに返答はなかった。

同連絡会は2月16日、記者クラブメディアに対して、福島第1原発現地取材の素材をフリーランスにも提供するよう申し入れを行った。

(1)細野豪志原発担当相と東電の西澤俊夫社長への申し入れ (2012 年2 月13 日) http://www.incidents.jp/_userdata/20120213.pdf (2012年2月16日閲覧)(全文転載)(読みやすさのためにパラグラフの間にスペースを加えました)

(転載はじめ)
細野豪志原発担当相の現地同行取材に関する申し入れ
2 0 1 2 年2 月1 3 日

東京電力株式会社社長殿
原発担当大臣細野豪志殿

政府・東京電力統合対策室共同記者会見フリーランス連絡会
事務取り扱い佐藤裕一寺澤有畠山理仁日隅一雄
回答先0 9 0 - 8 5 0 2 - 8 2 7 7 ( 寺澤)
冠省 東京電力株式会社( 以下、東京電力) は、2 月9 日、東京電力福島
第一原子力発電所( 以下、福一発電所) の現地取材を2 月2 0 日に実施する
旨発表されました。この取材は、細野豪志原発担当大臣の視察に同行する2
回目の現地取材となります。極めて貴重な機会であり、報道に携わる者を通
じて情報を得ている国民も期待を寄せていると思われます。

しかし、発表によると、現地取材が認められているのは、① 新聞社、通信
社( 全国紙、ブロック紙) ② 新聞社( 地元紙) ③ テレビ局( 東京キー局) ④
テレビ局・ラジオ局( 福島地元局) ⑤ 海外メディア⑥ インターネットメディ
アに限定されており、この条件では、福一発電所事故発生後、東京電力記者
会見や政府・東京電力統合対策室共同会見( 以下、共同会見) に出席してき
た者のうち、雑誌記者、フリーランス記者らは参加できません。

前回の現地取材で雑誌記者、フリーランス記者らが参加できなかったこと
を踏まえ、共同会見で政府は、次回はそれらの者にも門戸を開放すると説明
し、東京電力も異議を唱えなかったという事実があります。

そこで、第1 に、雑誌記者、フリーランス記者らについても、静止画と動
- 2 -
画と2 種類の方法による記録が可能にするため、最低でも2 人の参加を認め
るよう求めます。人選については、当連絡会が参加希望者に広く呼びかけ、
公正な方法により行います。

第2 に、現在、インターネットメディアの枠は、代表カメラ1 人のみです
が、編集して報道するためには、カメラとは別に音声を担当する者の参加が
不可欠です。参加が認められたインターネットメディアは動画などのデータ
を自社のみならず、フリーランスなどにも提供する旨明らかにしていますが、
「音声」が欠ければ、せっかくの厚意の意義が小さくなってしまいます。そ
こで、インターネットメディアについても、代表音声1 人の参加を求めます。

第3 に、① ~ ⑤ については、代表スチール、代表カメラ、代表音声の参加
が認められていますが、ここでいう「代表」は、「各カテゴリーの代表」と
いう意味でしょうか。もし、そうだとするならば、報道の役割を誤解してい
るというほかありません。今回の現地取材のような場合に、一部報道機関が
それ以外の報道機関や一般市民よりも優先的に現場を見聞( 取材) すること
が許されるのは、その取材によって得られた情報すべてが市民に伝えられる             ことが前提となっているからです。そうである以上、「代表」とは、「新聞
業界やテレビ業界の代表」「記者クラブの代表」であってはならず、現場へ
のアクセスを希望するあらゆる報道機関・ジャーナリストの「代表」でなけ
ればなりません。よって、① ~ ⑤ の「代表」が記録したすべてのデータにつ             いて、すべての報道機関・ジャーナリストに共有されることを確認してください。

また、細野大臣には、以上のような申し入れが実現するよう、東京電力に
対し、指導をなされるよう要望します。

準備の都合もありますので、申し入れに対する回答は2 月1 4 日1 8 時ま
でにお願いします。
不一

(転載終わり)


(3)記者クラブメディアに対する申し入れ (2012年2月16日)

(寺澤有)フリーランスにも福島第1原発取材の素材を提供するよう申し入れ (2012年 2月16日)   http://www.incidents.jp/news/index.php?option=com_content&view=article&id=417:2012-02-16-05-56-31&catid=1:2010-05-12-10-05-34 (2012年2月16日閲覧)(全文転載)
フリーランスにも福島第1原発取材の素材を提供するよう申し入れ
筆者 - 寺澤有
2012年 2月 16日(木曜日) 15:00 

2月20日に福島第1原子力発電所の現地取材が行われることが決まった。昨年11月12日に続いて2回目。しかし、今回もフリーランスは排除された。

これに関連して、政府と東京電力の共同記者会見に出席していたフリーランスでつくる「フリーランス連絡会」は、2月16日、現地取材に参加する記者クラブメディアに対し、取材で得られた素材をフリーランスにも提供するよう申し入れた。申し入れは新聞社8社、通信社2社、テレビ局6社、福島県政記者 会(記者クラブ)に対し、それぞれファクシミリで文書を送付することで行い、18日18時までに回答するよう求めた。申し入れの全文は下記。

2月20日福島第1原子力発電所現地取材に関する公開申し入れ
2012年2月16日

下記の報道機関のご担当者様
朝日新聞、産経新聞、東京新聞、日本経済新聞、毎日新聞、読売新聞、共同通信、時事通信、福島県政記者会、東奥日報、新潟日報、NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ
 政府・東京電力統合対策室共同記者会見フリーランス連絡会
 事務取り扱い 佐藤裕一 寺澤有(担当、回答先) 畠山理仁 日隅一雄
TEL 090-8502-8277 FAX 042-589-7172

冠省 東京電力株式会社(以下、東電)は上記の報道機関に対し、2月20日に福島第1原子力発電所の現地取材を許可することとしました。しかしながら、政府・東電統合対策室共同記者会見で現地取材を強く求めてきたフリーランスには、取材枠が与えられませんでした。

そこで、政府・東京電力統合対策室共同記者会見フリーランス連絡会は各報道機関に対し、代表スチールや代表カメラ・音声により得られた素材をフリーランス にも提供していただけるよう申し入れます。各報道機関が個々のフリーランスに対応するのはお手間ですから、素材を当連絡会へ提供していただければ、全員で 共有いたします。

今回の現地取材の「『代表』スチール」「『代表』カメラ・音声」というのは、新聞業界、テレビ業界、記者クラブの「代表」ではなく、ジャーナリズムを実践する者全員の「代表」、広くは国民の「代表」と認識しています。

本申し入れは公益性が高いことから公開で行わせていただき、ご対応やご回答も公開させていただくことを申し添えます。ご回答の期限は2月18日18時とさせていただきます。 不一

(転載終わり)
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2012年2月19日投稿

寺澤有氏によると、フリーランス協会からの申し入れに対し、回答期限とした18日18時までに回答したのは、共同通信のみ。

THE INCIDENTS インシデンツ」より転載  http://www.incidents.jp/news/index.php?option=com_content&view=article&id=419:2012-02-18-12-43-58&catid=1:2010-05-12-10-05-34 (2012年2月19日閲覧)(全文転載)

(転載はじめ)

福島第1原発取材は記者クラブメディアに対する利益供与 
 
筆者 - 寺澤有
2012年 2月 18日(土曜日) 21:45




2月20日、福島第1原子力発電所の現地取材が行われるが、政府と東京電力はフリーランスを排除するこ とを決定した。この事態を受けて、政府と東 京電力の共同記者会見に出席していたフリーランスでつくる「フリーランス連絡会」は、2月16日、現地取材に参加する記者クラブメディアに対し、取材で得 られた素材をフリーランスにも提供するよう申し入れた。

申し入れに対する回答期限は18日18時としていたが、これまでに回答したのは共同通信のみ。その回答は下記のとおり。

「東 京電力福島第1原発公開に際しての取材資料の公開についてですが、今回は限られた時間での調整が不可能で、ご期待に添えないとの結論に至りま した。あしからずご了承ください。なお、同原発内の資料入手については、一義的には東京電力側と交渉されるべきものと理解しております」

残りの記者クラブメディア(下記)は回答しなかった。

朝 日新聞、産経新聞、東京新聞、日本経済新聞、毎日新聞、読売新聞、時事通信、東奥日報、新潟日報、NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テ レビ東京、フジテレビ、福島県政記者会(福島民報、福島民友、河北新報、福島テレビ、福島中央テレビ、福島放送、テレビユー福島、ラジオ福島)

記 者クラブメディア各社は現地取材で得られた素材を自社で利用するのみならず、ほかのメディアへ販売し、利益をあげるとみられる。現地取材が政府 と東京電力の記者クラブメディアに対する利益供与となっていることは明らかだ。このような実態を踏まえれば、記者クラブメディアが伝える現地取材のリポー トなど、眉にツバをつけて見る必要がある。

(転載終わり)
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2012年3月3日投稿

 (OurPlanet-TV) 報道陣が福島第一原発取材へ〜フリーは参加できず
投稿者: ourplanet 投稿日時: 土, 02/18/2012 - 11:56     http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1308 (2012年3月3日閲覧)

明日2月20日、福島第一原発の現場が報道陣に公開される。しかし、昨年11月12日に引き続き、基本的にバスに乗ったままの取材となり、記 者らの行動は厳しく制限される。インターネットメディア2社の同行が初めて許された一方で、フリーランスの記者は今回も同行できないこととなった。

福島第一原発構内の取材を行うのは、昨年11月12日以来今回が2度目となる。前回取材が可能だったのは、内閣記者会加盟社、福島県政クラブ、外国人特派 員協会に加盟しているメディアの記者と映像と写真の代表取材のみ。フリーランスやインターネットメディアなどは対象から外された。

(中略)

このため、「フリーランス連絡会」は、2回目以降の現地取材にはフリーランスやインターネットメディアを参加させるよう求めていたが、今回も、フリーラン スは対象外となった。ただ、ニコニコ動画とIWJ(Independent Web Journal)の2社がネットメディアとして初めて取材を許された。上記2社の取材を認めた理由について、東京電力は、去年3月以降、東電の会見を取材 してきた実績があるためとしている。

今回、取材が認められたのは、
(1)全国紙9人(朝日、産経、東京、日経、毎日、読売、共同、時事)
各社1名+代表スチール1名
(2)福島県の地元紙6人(福島民報、福島民友、河北新報)
東京電力の原発立地地域の新聞(東奥日報、新潟日報)の各社1名+代表スチール1名
(3)テレビの在京キー局8人(NHK、日テレ、TBS、フジ、テレビ朝日、テレビ東京)
各社1名+代表カメラ1名+音声1名
(4)福島県政クラブ加盟放送局7人(福島テレビ、福島中央テレビ、福島放送、テレビユー福島、ラジオ福島)
各社1名+代表カメラ+音声1名
(5)外国人特派員協会5人
加盟社代表2社+代表スチール1名+代表カメラ1名+音声1名
(6)インターネットメディア3人(ニコニコ動画、IWJ) 
各社1名+各社カメラ1名
の以上38名。

―記事全文を読む

(日隅一雄/The News)マスメディア研究者・OB・労組の皆さん、「代表取材は、業界代表」というのが回答のように思えますが…  (2012年2月21日)
http://the-news.jp/archives/10243 (2012年3月3日閲覧)

私が執筆した「マスコミはなぜ『マスゴミ』と呼ばれるのか」(現代人文社)は、そのタイトルから予想される内容とは全く異なり、マスコミの偏向ぶりを指摘 するような著作ではなく、日本ではマスメディアの置かれた環境(制度)がいかに表現の自由を制約するものとなっているのか、を説明するものでした。した がって、「マスメディアを擁護しすぎ」、「マスメディアにも問題があるのではないか」という批判をいただくこともあります。私の「法制度に問題がある」と いう確信はまったく変わりませんが、福島第一原発の代表取材の素材を業界内でのみ共有するというスタンスを維持することについては、「できることくらい やったら」という気持ちにならざるを得ない。

―つづきを読む


(Independent Web Journal) 2012/02/20 【特別番組】福島第一原発入構取材レポート (2012年3月3日閲覧)

2012年2月20日(月)、岩上安身とIWJスタッフの技術・動画チーフの古田が福島第一原発へ入構取材を行い、この日は特別番組が組まれた。

インターネットメディアとしては「ニコニコ生放送」とともに、IWJが代表取材。技術面ではカメラ撮影担当としてニコニコ生放送が、音声はIWJが担当し、混成チームを編成。今回の取材の内容は全てノーカットで配信した。

これらは著作権の主張も無いこととし、国民の方々・海外メディア・新聞テレビその他各種メディア等へ全て公開、自由にお使い頂けるようにする。

また今回の特別番組では、<第一部>として東電会見でもおなじみの日隅一雄氏、木野龍逸氏をゲストとしてお招きし、これまでの原発事故報道の流れ、ジャー ナリズムに付随する問題等、様々な点からの解説が行われた。司会進行としては前田真里氏、IWJスタッフの佐々木隼也が担当。

<第二部>としては、現地取材終了後にスタジオに合流した岩上と古田が、現地取材動画の配信を含め、構内の模様、作業員の方々の様子等を詳細に報告した。

<IWJ・中埜>

番組の動画を見る


IWJ特集 「福島第一原発 入構取材」 http://220f1.iwj-beta.com/ (2012年3月3日閲覧)(一部抜粋)

入構取材に合わせ、IWJはいわき市から特別番組を放送した。司会進行は前田真里氏、IWJ・佐々木隼也。

日隅一雄氏、木野龍逸氏をゲストに招いた第1部では、東電会見をはじめとしたこれまでの原発報道の経緯からその問題点まで、原発をめぐるジャーナリズムを多角的に解説。第2部からは取材を終えた岩上と古田が合流、取材映像の配信を交えながら構内の様子をレポートした。

古田は「自分と変わらない年齢の作業員もいたが、彼らに高線量の中で仕事をしているという緊張感が感じられなかった。その状況が普通、日常化してい る様子だった」、岩上は「目に見えない線量より、マスクの息苦しさの方が身に迫る。敷地内を離れれば美しい風景も広がる。住民の皆さんが帰りたいと考える のも無 理はないだろう」などと構内や敷地周辺の印象を語った。リサーチを担当した佐々木は「事前調査で不明だった点、あるいは視覚的に確認したい点、さまざま あったが、今回の映像から確かめられるものがほとんどなかった。非常に制約の多く、東電の情報公開の不十分さを改めて感じた」と振り返った。

―動画を見る。  

(ニコニコニュース)ニコニコ取材班が福島第1原発取材結果を報告 「ぜひノーカット放送を見てほしい」(2012.02.23 15:05) http://news.nicovideo.jp/watch/nw201817 (2012年3月3日閲覧)

東京電力は2012年2月20日、福島第1原発の敷地内の状況を報道陣に公開した。取材受け入れは2011年11月12日以来2回目で、今回初めてイン ターネットメディアの取材が許可され、ニコニコ動画とIWJ(岩上安身代表)が参加した。ニコニコ生放送では取材の模様をノーカットで録画放映し、同夜には、同行した七尾功記者と川合亮輔カメラマンの2人が映像を振り返りながら語る「ニコニコニュース取材班が報告~これが福島第一原発の現状だ!」を放送し た。この中で、七尾記者は「ぜひノーカット放送を見てほしい」と訴えた。

―つづきを読む


(朝日新聞)福島第一原発 変わり果てた姿 現地ルポ(2012年2月21日03時00分) http://digital.asahi.com/articles/TKY201202200694.html (2012年3月3日閲覧)(全文転載) 

写真・図版
20日に公開された福島第一原発の原子炉建屋(左から2、3、4号機)=福島県大熊町、代表撮影
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建屋の壁が吹き飛んだ福島第一原発4号機では、作業する人の姿が見られた。中央の黄色い部分は原子炉格納容器の上部=20日午後、福島県大熊町、代表撮影
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トラックの荷台に載せられた高台注水ポンプ=20日午前、福島県大熊町、代表撮影
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原発敷地内での作業後、放射線の測定を受ける男性=20日午前、福島県大熊町、代表撮影
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福島第一原発取材ルート

 東京電力福島第一原発が、昨年11月に続いて、報道陣に公開された。東日本大震災の津波による炉心溶融事故からまもなく1年。前回に比べると復旧が進んだ感はあるが、事故前の取材を経験した記者には、変わり果てた姿が改めて強く印象に残った。

2003年9月から06年3月まで、福島総局員として事故前の福島第一原発を何度も取材した。緑あふれる整然とした発電所だった。今回、事故後の発電所に初めて入った。ひっくり返った車が穴に落ち、道路が陥没し、崖が崩れて鉄塔がぐにゃりと曲がっていた。

報道陣がまず目にしたのは、事務本館横の駐車場の仮設の高台注水ポンプだ。原子炉を安定して冷やすための命綱。トラックの荷台に3台のポンプが置かれている。ポンプから直径7センチ余りの細い塩化ビニールの配管3本が道路脇に伸び、原子炉へと続く。

予備のポンプや緊急時の消防ポンプ車があるので大地震や津波が来ても、大丈夫だと東電は説明する。だが、配管のつなぎ目から、凍結で繰り返し水が漏れた。現場を見て何とも心もとない印象を受けた。

高台から坂道を下ると1号機の原子炉建屋が見える。春には土手に咲き乱れるツツジの赤が鮮やかだった場所には、津波で流されつぶれた大型タンクが道路脇 に置かれている。放射性物質の飛散防止剤の緑色が毒々しい。損傷が最も激しい3号機のタービン建屋そばの放射線量は毎時1500マイクロシーベルト。今回 取材した場所では最も高かった。3、4号機は屋根の鉄骨がむき出しになっている。大型クレーンによる、がれきの片付け作業が進む。

発電所が見渡せる高台でバスを降りた。事故後の発電所で報道陣が屋外に出たのは今回が初めて。爆発で吹き飛んだ4号機原子炉建屋5階で、複数の作業員が行き来するのが見える。鉄骨を切断する器具の火花がチカチカする。

汚染水処理で出た高レベルの放射性廃棄物の保管施設の建設も進み、多くの作業員や重機が構内を行き来していた。この日作業していたのは約3千人という。

再びバスに乗り込むと、放射能汚染水をためるタンク群が並ぶ一画に向かった。キキョウやヤマユリが自生し、絶滅危惧種のオオタカのほかヤマバト、キジな どがいた森は伐採され、汚染水をためる巨大なタンクの森に変わった。発電所内には1100本、約18万トン分の汚染水がためられるようになっている。溶け た燃料を冷やすことで出る汚染水が日に日に増えている。すでに7割余りが汚染水で埋まり、3月までにさらに4万トン分のタンクを増設する。

報道陣への公開は、経済産業省原子力安全・保安院が事故後初めて保安検査を実施するのに併せて実施された。この日は、保安検査官が汚染水処理施設の運転状況を確認した。

高橋毅発電所長は「2号機の温度計の故障ではご心配をかけたが、原子炉の状態は安定している。作業は廃炉に向けた燃料の取り出しという、新たな段階に入った。初めてのことで様々な課題があるが、みなで一丸となって取り組んでいく」と話した。

原発の敷地内にいたのは約4時間。積算の被曝(ひばく)量は71マイクロシーベルトだった。(坪谷英紀)

(転載終わり)

   

 

 



 


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