Saturday, April 7, 2012

XII.9.環境省が、米エネルギー省主催の環境浄化についての日米ワークショップ(非公開)に参加

環境省のHPに掲載の「環境報道資料」によれば、2012年2月13日~15日、米国ワシントン州ハンフォード元プルトニウム精製施設で非公開で開催された、米国エネルギー省主催の「除染等に関する日米ワークショップ」に出席した。

だが、インターネット検索した限りでは、共同通信やロイターなどの通信社をはじめ、国内の報道機関によるこのワークショップについての報道は見当たらなかった。 なぜだろう? このワークショップについての報道機関の沈黙は、2011年10月16日に福島市で開催されたシンポジウム、「環境の再生に向けた除染に関する国際シンポジウム」(主催:内閣府と環境省)についての報道と好対象をなす。

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ハンフォード元核施設は、第二次大戦中マンハッタン計画のプルトニウム精製施設として建設され、長崎に投下されたプルトニウム爆弾(ニックネーム、Fat Man)を製造した。その後、冷戦中も核兵器用のプルトニウム精製施設として拡張を続け、586平方マイル(1,517平方キロメートル)の広大な敷地に、9基の原子炉と関連施設を持つ複合核施設となった。1944年から1987年までプルトニウムを製造したが、原子炉は順次廃炉にされ、1988年に最後の原子炉が廃炉になった。現在、土壌や地下水の汚染、廃炉になった原子炉の処置、残されたプルトニウムの貯蔵、処理、最終処分などの複合的な環境浄化問題に加え、周辺住民への健康被害など、さまざまな問題を抱えている。ハンフォードは、西半球で最悪の環境汚染地域であり、米国で最も金のかかる環境浄化事業、最大の公共事業とされている。

だが、環境事業はエネルギー省の管轄ではあっても、実際には私企業に委託され、私企業に利潤をもたらす事業として行われている。例えば、2003年のイラク侵攻のあと、6億8千万ドルに上るイラク再建事業を受注したが問題が続出して批判された米国最大の建設・エンジニアリング企業、べクテルも、ハンフォードの受注業者のひとつである。ベクテルは他に、米国、トルコ、英国などで発電所、石油精製所、水道、空港を所有・経営もしている。

そして、米国の地方紙、Tri-City Herald の報道では、先の日米ワークショップには、こうした業者も参加したとされている。

2月のワークショップでは、具体的に誰が出席し、何が話し合われたのだろうか? それは、環境庁の「環境報道資料」ではまったく触れられていない。 なぜ、この秘密主義? また、報道機関は、なぜそれを調べて報道しようとしないのだろうか?

また、Tri-City Herald紙は、2月のワークショップは二度目で、第一回は10月に東京で行われた、としている。だが、環境庁ホームページにもその情報は掲載されていないし、 報道機関による報道も見当たらない。 これはどういうことだろうか? (Tri-City Herald紙が、10月の福島市でのシンポジウムを「日米ワークショップ」の第一回と勘違いした可能性はあるのだろうか。。?)

【「除染等」に関するワークショップという 環境省の表現について】

環境省のHPでは、2月13-15日にハンフォードで行われたワークショップを<除染等>に関する日米ワークショップと表現している。

だが、米エネルギー省のハンフォードHPでも、Tri-City Herald紙の記事でも、使われている英語は「cleanup」である。 これには、現在日本で行われている「除染」(汚染した表土を取り除いたり、水などで汚染物質を流したり、という意味での)よりも、はるかに広い範囲の環境浄化対策が含まれる。「Cleanup」には、土壌の除染だけでなく、地下水の浄化、核廃棄物の貯蔵、処理及び最終処分、貯蔵プールからの損傷した使用済み燃料やごみの取り出し、なども含まれるのである。こうした「cleanup」の全体像を見るとき、日本で今行われているような除染は、そのごく一部にすぎないことがわかる。

それを、いくら「等」という字を加えているとはいえ、「除染」を前面に出すのは、原発事故以後の環境浄化が今行われている「除染」の延長上にあるような印象を作り出し、ひいては、核廃棄物の貯蔵、そこからの放射性物質の漏れ出し(現にハンフォードで起きている)、ひいては最終処分という、もっと困難な浄化問題を見えなくさせることになる。日本政府の除染への力の入れ方と、原発事故「収束」を宣言して「通常営業」を装いたい政府・財界の意向を考えると、「除染さえすれば大丈夫」という印象を国民の中に広めようという意図が、環境省にはあるのかもしれない。

こうした点にかんがみ、この投稿では、「cleanup」を、「(環境)浄化」と訳しています。 現在日本で行われているような「除染」は「decontamination」ではないかと思われます。

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(環境省HP)「報道発表資料」のページから転載 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14859

平成24年2月21日

米国エネルギー省主催除染等に関する日米ワークショップの開催結果について (お知らせ)

環境省は、米国エネルギー省主催により2月13日~15日に米国ワシントン州ハンフォードで開催された、除染等に関する日米ワークショップに出席しました(本ワークショップは非公開で行われました)。

1.背景 ・ 目的

平成23年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原発の事故への対処に役立てるため、米国ワシントン州ハンフォード において、最新の技術を用いた除染や、政策 ・ 計画等関連する事項に関し、経験や知見の共有を進めることを目的に、米国エネルギー省主催の除染等に関す る日米ワークショップが開催されました。

2.ワークショップの概要 ・ 結果

(1)
平成24年2月13日~15日に、米国ワシントン州ハンフォードにおいて、米国エネルギー省主催の除染等に関するワークショップが開催され、日米の政策担当者 ・ 研究者 ・ 専門家等約90名が参加しました。
(2)
参加者は、ハンフォードの核関連施設跡地等においてエネルギー省により実施されている廃棄物処理や地下水浄化等の取組状況につき現場を視察するとともに、同地を含め米国各地で行われている除染等の実施事例や技術につき、米国エネルギー省や環境保護庁 の担当責任者等から詳細な説明がなされました。
(3)
日本側からは、放射性物質汚染対処特措法の制定等の除染の枠組みの整備、除染モデル事業やモニタリング等取組の進捗状況、除去土壌等の処理に関する考え方や除染ロードマップ等今後の進め方に関して紹介を行いました。
(4)
環境省としては、今回のワークショップを通じて得られた米国の取組に係る情報等を、今後我が国が除染等の取組を進めるに際しての参考として活用していきたいと考えています。
連絡先
環境省水・大気環境局
代表    03-3581-3351
直通    03-5521-8289
室長    大村 卓 (内線6582)
室長    関谷 毅史(内線6772)
課長補佐 行木 美弥(内線6188)
係長    黒田 景子(内線6560)
(転載終わり)

(環境省HP)「報道発表資料」のページから転載  http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14809

平成24年2月10日

米国エネルギー省主催除染等に関する日米ワークショップの開催について(お知らせ)

環境省は、米国エネルギー省主催により2月13日~15日に米国ワシントン州ハンフォードで開催される、除染等に関する日米ワークショップに出席します。(本ワークショップは非公開で行われます。)

1.背景・目的

平成23年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原発の事故への対処に役立てるため、今般、米国ワシント ン州ハンフォードにおいて、米国エネルギー省主催の除染等に関する日米ワークショップが開催されることになりました。最新の技術を用いた除染や、政策・計 画等関連する事項に関し、経験や知見の共有を進めることを目的としたものです。

2.ワークショップの概要

(1)日程
平成24年2月13日(月)から15日(水)
(2)場所
米国ワシントン州ハンフォード
(3)主催者
米国エネルギー省
(4)参加者(予定)
米国エネルギー省、米国環境保護庁、日本政府の実務担当者及び専門家
(5)内容
○米国の除染・廃棄物処理に関する知見紹介 ○日米の専門家の意見交換 ○米国の除染等に関するサイト視察
なお、ワークショップは非公開で行いますが、ワークショップ終了後、結果の概要を公表する予定です。
【参考】
米国ワシントン州ハンフォード:マンハッタン計画に基づきプルトニウム精製が行われた場所。現在精製は行われていないが、米国内最大の規模で核廃棄物や汚染土壌等の処理が進められている。
連絡先
環境省水・大気環境局
代表    03-3581-3351
直通     03-5521-8289
室長    大村 卓 (内線6582)
室長    関谷 毅史(内線6772)
課長補佐 行木 美弥(内線6188)
係長    黒田 景子(内線6560)

(転載終わり)

(Tri-City Herald)Japanese delegation in Tri-Cities this week to talk radioactive contamination cleanup 
(Feb. 16, 2012) http://www.tri-cityherald.com/2012/02/16/1828329/japanese-delegation-in-tri-cities.html (2012年4月7日閲覧)(一部を抜粋、翻訳)(太字強調は投稿者)

今週、放射能汚染浄化の専門家との会合のため、日本からの代表団がトライ・シティーズ(投稿者注:Kennewick, Pasco, Richland)を訪れている。

これは、福島原発事故以来、エネルギー省の専門家と日本の専門家の間で情報交換のために行われる二度目のワークショップである。一回目は、10月に東京で開催された

ワークショップでは、米国と日本の研究者を集め、福島での浄化努力の一助とするために浄化の経験や教訓を共有する。米国全土のエネルギー省管轄の核施設からの情報が共有される。

ワークショップには、エネルギー省、各地の国立研究所、環境庁、浄化事業を請け負っている業者(ハンフォードも含む)などが参加する。

議論されるテーマは、土壌と地下水の浄化、放射性廃棄物の貯蔵、処理及び処分、貯蔵プールからの損傷した使用済み燃料やごみの取り出し、原子炉の停止と廃炉、そして日本との公けのコミュニケーション、である。

(抜粋終わり)

【関連報道・書籍】

(中国新聞)21世紀 核時代 負の遺産 ハンフォード核施設 上 (2002年2月24日) http://www.chugoku-np.co.jp/abom/nuclear_age/us/020224.html (2012年4月7日閲覧)

同上 ハンフォード核施設 下 (2002年3月3日) http://www.chugoku-np.co.jp/abom/nuclear_age/us/020303.html (2012年4月7日閲覧)

田城 明著 『現地ルポ 核超大国を歩く』(岩波書店)http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0227320/top.html
 (上記連載の単行本化)

【関連ブログ】

2012/03/25
環境省が2月に米国ハンフォードで非公開の除染ワークショップ。アメリカの除染企業CH2M HILLが、除染利権に参入する可能性が益々高まった。

米社、日本で除染ビジネス CH2Mヒル 日経新聞12710,31面より

【関連情報】

(JAEA福島技術本部HP)「環境の再生に向けた除染に関する国際シンポジウムの開催について 」(平成23年10月16日) http://www.jaea.go.jp/fukushima/decon.html

(河北新報)除染範囲や方法を議論 海外事例も報告 福島でシンポ(2011年10月17日) http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1062/20111017_03.htm (2012年4月7日閲覧)(全文転載)

放射性物質を取り除く除染の海外事例を東京電力福島第1原発事故に遭った福島県で役立てようと、国内外の専門家による国際シンポジウムが16日、福島市で 開かれた。ロシア政府の専門家は、チェルノブイリ原発事故(1986年)から3年にわたって30キロ圏内などを除染し、約70年の生涯で受ける被ばく線量 を10%低減できたことなどを説明した。

シンポジウムは内閣府と環境省の主催。専門家によるパネル討議では、除染すべき範囲の設定について複数の専門家が「市民がリスクを理解することは非常に重要。人体が受ける被ばく量の低減を第一に、経済性も考慮して決めるべきだ」と言及した。

また「除染の方針などの決定について、市民の価値観も反映するべきだ」との意見が相次ぎ、米エネルギー省の研究機関の大西康夫博士は、汚染土壌の仮置き場について「設置場所の選定に際し、地元住民と最初から話し合うことが大事だ」と指摘した。

パネル討議などに先立ち、細野豪志環境相が「福島の再生の鍵を握るのは除染だ。継続的に国際社会からアドバイスをもらえる態勢をつくっていく」とあいさつ。

福島県の佐藤雄平知事は「放射線量を気にして生活するのはつらいことだ。県民は安全基準を希求している」と訴えた。

また国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長が「住民が元通りの生活に戻れるよう、日本政府に対し復旧計画や廃棄物管理計画について助言していく」とのビデオメッセージを寄せた。

(転載おわり)



(SankeiBiz)【放射能漏れ】「生涯被ばく10%低減」 除染シンポで海外事例 (2011.10.16 20:44) http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/111016/cpb1110162044001-n1.htm (2012年4月7日閲覧)(全文転載)


放射性物質を取り除く除染の海外事例を東京電力福島第1原発事故に 遭った福島県で役立てようと、国内外の専門家による国際シンポジウムが16日、福島市で開かれた。ロシア政府の専門家は、チェルノブイリ原発事故 (1986年)から3年にわたって30キロ圏内などを除染し、約70年の生涯で受ける被ばく線量を10%低減できたことなどを説明した。

シンポジウムは内閣府と環境省の主催。専門家によるパネル討議では、除染すべき範囲の設定について複数の専門家が「市民がリスクを理解することは非常に重要。人体が受ける被ばく量の低減を第一に、経済性も考慮して決めるべきだ」と言及した。

また「除染の方針などの決定について、市民の価値観も反映するべきだ」との意見が相次ぎ、米エネルギー省の研究機関の大西康夫博士は、汚染土壌の仮置き場について「設置場所の選定に際し、地元住民と最初から話し合うことが大事だ」と指摘した。

(転載終わり)

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2012年4月13日投稿

米国エネルギー省のプレスリリースによると、2月29日から3月7日にかけて、9名の東電社員が、エネルギー省管轄のサバンナ・リバー国立研究所とサバンナ・リバー核施設(サウスカロライナ州)とパシフィック・ノースウエスト国立研究所(ワシントン州)を訪れ、国立研究所の専門家との意見交換や核施設見学を行った。これは、4月7日に投稿した、米エネルギー省と日本の環境省共催の2度のワークショップを受けて行われたものだという。The TandD.comによると、東電社員の訪問は米国エネルギー省の招待によるという。ということは、東電社員の渡米・米国滞在の費用は米エネルギー省が負担したのだろうか?

エネルギー省のプレスリリースによると、この二つの国立研究所は、米国核施設の廃炉や除染の経験があるので、東電福島第一原発事故以来、米日政府への助言や、事故対策や復旧のための戦略作りの支援をしてきたという。環境省とのワークショップといい、今回の東電社員の訪問といい、東電福島第一原発事故の収束と廃炉、その後の浄化という長期的な視野からすると、重要な動きだ。 また、米国政府のこうした支援は、核産業のグローバルな性格を表していると言えるだろう。

だが、これらの動きを日本の報道機関は、通信社も含め、報道していない。なぜだろう? また、東電もホームページでは報告していないようだ。東電原発事故の収束と後始末が非常に長期にわたることを隠したいのだろうか? 日本政府や東電が米国政府・核産業と緊密に連携し合っていることを知られたくないのだろうか?

(US Department of Energy 米国エネルギー省)TOKYO ELECTRIC POWER COMPANY VISITS DEPARTMENT OF ENERGY LABS AIKEN, SC (March13, 2012) [東電がエネルギー省の研究所を訪問 サウスカロライナ州アイケン発(2012年3月13日)] http://www.scribd.com/doc/86829852/Tokyo-Electric-Power-Company-Visits-Department-of-Energy-Labs (2012年4月13日閲覧)

(Savannah River Site Facebook) Tokyo Electric Power Company Visits Department of Energy Labs  http://www.facebook.com/note.php?note_id=347194655321918   (March 14, 2012) (2012年4月13日閲覧)[上のプレスリリースと同じ内容]

~一部を抄訳~

東電の9人が米国エネルギー省の二つの国立研究所(サバンナ・リバーSRNLとパシフィック・ノースウエストPNNL)とサバンナ・リバー・サイト(SRS)を訪問した。SRSとSRNLが2月29日から3月2日、PNNLが3月5-7日。

この訪問は、先に東京とワシントン州で行われた2度のワークショップを受けて行われたものである。

SRS/SRNLでは、東電とSRSの専門家によるプレゼンテーションのほか、いくつかのSRSプロジェクトとSRNLとサバンナ・リバー・レミディエーション(SRR)の施設を見学した。

東電の代表団は、PNNLとSRNLの専門家と、次の問題について話し合った。放射線検出、放射性核種の運命と移行、汚染水の処理と再利用、使用済み燃料の検査と特性評価、原子炉サイトの安定化と除染、周辺地域の汚染された土壌、生物相、水の特性評価、改善、コントロールの方法など。

PNNLとSRNLの研究者は、東電福島第一の事故以来、米日政府のへの助言をし、事故対策と復旧のための戦略づくりを支援してきた。

(DOE Pulse) Tokyo Electric Power Company visits DOE labs  (April 9, 2012)  http://www.ornl.gov/info/news/pulse/no360/feature.shtml (2012年4月13日閲覧)[内容は上の二つの記事と同じだが、写真付き]

  TTEPCO's visit to SRNL's shielded
cells facility.
 






【関連報道】

(中国新聞)21世紀 核時代 負の遺産 サバンナ・リバー・サイト核施設 (2002年3月31日) http://www.chugoku-np.co.jp/abom/nuclear_age/us/020331.html (2012年4月13日閲覧)
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2012年5月15日投稿

ジョセフ・トレント著、酒井泰幸訳 「法の抜け道を使って日本のプルトニウムを蓄積を助けたアメリカ:NSNS ジョセフ・トレント論説 US Circumvented Laws To Help Japan Accumulate Plutonium」 http://peacephilosophy.blogspot.ca/2012/05/nsns-us-circumvented-laws-to-help-japan.html
(2012年5月15日閲覧)(太字は投稿者)

[酒井泰幸氏による前文: もはや公然の秘密となった日本の核武装計画と表裏一体をなす、アメリカ側の暗黒史が明かされた論説。プルトニウムが世界平和にとって重大な不安定要因であることを熟知していたカーター大統領の手によって、核拡散の歯止めとなる法律が制定されたが、アメリカの増殖炉計画が資金的・技術的に頓挫したとき、これを丸ごと日本に移転して温存を図ろうとしたのは、レーガン政権の核エネルギー特使リチャード・ケネディーとその一派だった。一方の日本は、第二次大戦中の核兵器研究から連綿と続く研究者と、アメリカの核の傘を不安視する佐藤栄作らの政治家によって、核燃料サイクルと宇宙ロケット開発を隠れ蓑に、核兵器技術開発が着々と進められていた。この二つの思惑が絡み合って、危険極まりない核物質の海上輸送が正当化され、日本はプルトニウムの蓄積量を止めどなく増加させてしまった。軍事技術に情報公開の透明性など期待できるはずもなく、数々の事故と隠蔽が繰り返され、その行き着く先に福島原発事故が起きてしまった。]

アメリカ合衆国は意図的に、日本がアメリカの最高機密である核兵器製造施設に立ち入ることを許し、何百億ドル(訳注:数兆円)もの税金を投じたアメリカの研究成果を日本に横流しして、日本が1980年代以降70トンの核兵器級プルトニウムを蓄積することを可能にしたことを、米国の国家安全保障問題専門通信社の国家安全保障通信社(NSNS)の調査が明らかにした。日本で核兵器製造計画に転用される可能性のある機密核物質の管理に関して、これらの動きは繰り返し米国の法律に違反した。CIAの報告書により、日本で1960年代から秘密の核兵器計画があることをアメリカ合衆国は察知していたことが、NSNSの調査で判明した。
 アメリカの機密技術の横流しは、レーガン政権下、百億ドルの原子炉を中国に輸出することを許可した後から始まった。日本は、機密技術が潜在的な核戦争の敵国に売却されようとしているとして抗議した。レーガン政権とジョージ・H・W・ブッシュ(父ブッシュ)政権は、このような譲渡を禁じる法律や条約があるにもかかわらず、機密技術と核物質が日本に移転されるのを黙認した。米国エネルギー省のサバンナ・リバー・サイトとハンフォード核兵器工場群でのプルトニウム分離に関する高度な機密技術は、何百億ドルもの価値を持つ増殖炉の研究成果とともに、核拡散に対する歯止めがほとんど無いまま日本に引き渡された。この移転プロセスの一環として、日本の科学者と技術者たちはハンフォードとサバンナ・リバーの両施設へ立ち入りを許された
 

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